第218回 100周年を迎えたツール・ド・フランス(1) 100周年を記念したコース設定

■夏の風物詩、ツール・ド・フランス

 フランスの夏の風物詩といえばツール・ド・フランスである。7月にフランス全土で繰り広げられるこの自転車レースは世界最高峰の自転車レースであるが、単なるスポーツイベントという枠にとどまらない。3週間にわたる熱い戦いであるが、ツールを中心にフランス人の1年が回っていると言っても過言ではない。前回の本連載で日本をサッカーが文化として根付いている国と表したが、フランスにおいてサッカーをしのぐスポーツとして自転車が存在することからフランスではサッカーが文化として根付かないのであろう。フランスではツール・ド・フランスのシーズンオフにサッカーが行われているのである。
 今年はこのツール・ド・フランスが記念すべき100周年を迎えることから、国民の関心も並々ならぬものがあり、革命200周年を迎えた1989年以来の盛り上がりのある7月になっている。
 ツール・ド・フランスの興味は23日間で3360キロを走破する大会期間だけではない。毎年変更されるコースレイアウトからフランス人にとってツール・ド・フランスは始まる。毎年、コースレイアウトの発表の直前には様々な憶測が流れるが、コースレイアウトが発表されるとコースになった町は大騒ぎとなり、祝賀ムード一色になる。そしてパリジャンはバカンス先でツール・ド・フランスを見るために早速バカンスの日程と旅行先を決め、ツール・ド・フランスが通過する日のホテルを予約する。

■パリからスタートする100周年のコース

 途中2度の世界大戦で、10回開催されなかったことがあり、100周年の今年が90回目となるが、今年のコースは100年前のコースに近いコースが設定された。今年の特徴はスタートもゴールもパリであり、全コースがフランス国内を通ることである。7月5日のプロローグはパリのエッフェル塔の下からのスタートとなる。その後、ベルギー国境に向けて北東に進路をとり、7月7日にはスダンに到着、ここから南下し、シャル
ルビル・メジエ、トロワというサッカーファンの皆さんならよくご存知の町を通り、F1のマニクールのあるヌベール、そしてフランスリーグ2連覇を果たしたリヨンに到着するのは7月11日である。ここまでは平坦なコースであるが、ここからが最初の難関、アルプスの山岳ステージとなる。7月12日から14日までの3日間、アルプスの山岳コースで過酷な戦いが続く。特に7月13日の第8ステージでは今回のツールを通じて最も高地となる海抜2645メートルのガリビエ峠を通過する。アルプスの山岳ステージを乗り切り、7月15日にサッカーの都マルセイユに到着、パリを出発してようやく11日目に地中海を望む選手にようやくここで最初の休息日が与えられる。

■酷暑の山岳コース、ピレネーの戦い

 7月16日の休息日は実は移動日である。マルセイユからナルボンヌに移動し、2度目の山岳ステージとなり、7月19日にトゥールーズを出発すると3日間のピレネーでの戦いが始まる。ピレネーの戦いは高度こそアルプスには及ばないが、酷暑との戦いであり、選手の消耗度も大きい。2度目の休息日まで5日間しかないが、それはこのピレネーでの山岳ステージの過酷さを物語っているに過ぎない。

■大西洋岸を北上し、ゴールは恒例のシャンゼリゼ通りの周回コース

 7月22日の休息日の後は平坦なコースを大西洋に沿って北上する。バスケットで有名なポー、かつて村田亙が所属したバイヨンヌ、今秋のラグビーのワールドカップでフランスと対戦する日本がかつてテストマッチを行ったダックス、本連載で何度も紹介しているボルドー、ナントを経由し、パリジャンがバカンスに出かけて観光客しかいないパリにもどってくるのは7月27日のことである。
 ゴールとなるグランフィナーレは例年通りシャンゼリゼ通りの周回コースである。今年の出場選手は22チーム、198選手であるが、そのうち何人がこの過酷なコース設定を乗り越え、シャンゼリゼのゴールに飛び込むことができるのであろうか。100周年を迎えた記念すべきツール・ド・フランスに出場する選手の健闘を期待したい。(続く)

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