第379回 初秋の赤土の死闘(4) フランス、アリカンテで力尽きる

■フランスの先鋒ポール・アンリ・マシュー、デビスカップで初勝利

 クレー王国スペインとアリカンテで対戦するフランス、まず初日のシングルス第1試合に登場したのはポール・アンリ・マシュー、本連載第139回で紹介したとおり、2年前のロシアとの決勝で最終のシングルスに出場して敗れ、世界王者を逃した悔しい思い出を持つ22歳である。昨年はデビスカップには出場しておらず、実にそれ以来のデビスカップ出場となる。ロシア戦ではシングルス2試合に出場して、いずれも敗戦、世界ランキングも77位である。一方のスペインの先鋒は世界ランキング6位のカルロス・モヤである。モヤのデビスカップの通算成績はシングルス24試合に出場して18勝6敗、地元のファンは、ファンはモヤが闘牛士、そしてマシューが牛になると誰しもが思っていたであろう。しかし、何が起こるのかがわからないのがデビスカップである。マシューは第1セットを6-3と先取する。第2セット、第3セットをモヤが連取し、逆転した段階で、闘牛場に集まったスペイン人はマタドールが牛をしとめる瞬間が近づいたと思ったであろう。しかし、マシューがここで盛り返す。第4セットを6-3と取って最終セットにもつれ込み、最終セットをマシューが6-3と連取して4時間29分の熱戦を制したマシューはうれしいデビスカップ初勝利となった。

■ファブリス・サントロ、痛恨の日没中断

 シングルス第2試合には世界ランキング36位のファブリス・サントロがファン・カルロス・フェレーロと対戦する。マシューの勝利によって勢いづいたサントロは第1セット6-3、第2セット6-1と幸先よくスタート。シングルスのブランクを感じさせない展開となった。第3セットはフェレーロが世界ランキング12位の実力を見せつけ6-1と挽回。そして第4セットは互角の戦いで3-3となる。この段階で時計の針は19時30分を過ぎている。ローランギャロスの季節ではまだ日の高い時間帯であるが、秋分を過ぎたこの時期はボールが見えにくくなる。しかも屋外に闘牛場に照明施設はない。主催者は日没のよる試合の中断を宣言するが、フランスにとっては痛恨の中断となった。なぜならば、ダブルスの世界ランキング9位のサントロは土曜日に行われるダブルスの主力選手であり、土曜日にシングルスの残りを戦ってからダブルスに出場することは非常に難しいからである。

■サントロ力尽き、急造ペアは惜敗

 そのような心理的な重圧もあり、土曜日の11時半から始まったシングルスの試合ではサントロは精彩を欠き、第4セットは3ゲームを連続して落とし、2-2の最終セットへ。最終セットも3-6と落としてシングルスは1勝1敗となる。また、サントロは金曜日に負傷していることもあって、ダブルスへの出場は断念してしまう。当初サントロ(ダブルスランキング9位)とミカエル・ロドラ(同12位)と言うダブルスのスペシャリストのペアを予定していたが、サントロに代わってアルノー・クレマン(同50位)を起用する。スペインのペアは18歳のラファエル・ナダルと22歳のトミー・ロベレドは若くダブルスランキングも低かったが、フランスのペアは急造ペア、これが災いしてフランスはフルセットまで持ち込んだものの2-3で落としてしまう。結局はこの土曜日が分岐点となった。

■日曜日のシングルスは元気なく連敗する

 日曜日のシングルス第1試合にはダブルスに出場したナダルがその余勢を勝って出場、アルノーに6-4、6-1、6-2とストレート勝ちして、3勝目をあげて準決勝進出を決定する。最後の試合は3セットマッチとなり、ロブレドがマシューを6-4、6-4と2セット連取し、3日間の戦いはあっけなく終わる。結局フランスは金曜日の第1試合だけ勝利したにとどまり、赤土の闘牛場でマタドールに止めを刺されたのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ