第378回 初秋の赤土の死闘(3) アリカンテの闘牛場で復帰したファブリス・サントロ

■国別ランキング1位のフランスと3位のスペイン

 世界ランキング1位のロジェー・フェデラーを擁すスイスを下し、準決勝に進出したフランス・デビスカップチーム。準決勝の対戦相手は隣国スペインとなった。これまでの本連載ではデビスカップにおけるフランスの好成績を紹介してきたが、改めてそれを紹介しよう。過去10年間でフランスは優勝2回、準優勝2回を含み、6回準々決勝以上に進出している。過去4年間の成績を反映した国別ランキングではもちろん1位である。一方のスペインもそれに負けてはいない。昨年は準優勝、2000年には優勝を果たしている。過去10年間の準々決勝進出回数はフランスと同じ6回、国別ランキングは3位である。

■クレー王国スペイン、闘牛場に赤土を持ち込む

 そしてスペインの特徴はその強さだけではない。フランス勢同様クレーコートを得意としており、近年のローランギャロスはスペイン勢の独壇場となっている感がある。今回のデビスカップチームの主力である世界ランキング6位のカルロス・モヤは1998年大会の優勝者である。これまでのツアー17勝のうち14勝がクレーコートと言うクレーコートの申し子である。そしてナンバー2のファン・カルロス・フェレーロは世界ランキング12位であり、昨年のローランギャロスの覇者、昨年まで4年連続ローランギャロスで準決勝以上に進出している。そして今まで11勝しているうち8勝がクレーコートという戦績を残している。このようなクレーコートの申し子2人を擁するスペインはフランスと同タイプであり、まさにダービーマッチである。
 準決勝の舞台はスペインのアリカンテ、バレンシア地方の都市であり、闘牛が有名である。スペインはアリカンテの闘牛場に赤土を運び込み、臨時のテニスコートを建設し、世界ランキング1位のフランスを迎え撃つ赤土の戦いとなったのである。フランスがニームの古代劇場に臨時コートを建設した際も話題になったが、今回も世界のスポーツファンを驚かせた。いかにデビスカップがステータスの高いスポーツイベントであるかを象徴しているであろう。

■ニームの古代劇場でデビューしたファブリス・サントロ

 テニスコートの設営同様に、ファンを驚かせたのはフランスの選手の起用であった。フランスは31歳のベテラン、ファブリス・サントロを今年初めてチームに加える。サントロがデビスカップのチームにデビューしたのは1991年の準々決勝、ニームの古代劇場での豪州戦である。タヒチ出身で当時まだ18歳のサントロは初日のシングルス第2試合でリチャード・フロンバーグに0-3のストレート負けし、2勝2敗で迎えた最終戦に登場、ワリー・マシュールを3-1と破って、準決勝進出、ユーゴスラビアとの準決勝ではシングルス2試合に出場していずれも勝利を収めている。デビューしていきなり大活躍したサントロであったが、米国との決勝はベテランのアンリ・ルコントの起用により出場機会に恵まれず、ベンチでルコントと現在のデビスカップチームの監督をつとめているギー・フォルジェの活躍に声援を送った。その後はデビスカップチームからは縁遠くなり、1997年に6年ぶりにチームに復帰した。

■アリカンテの闘牛場でのドラマを期待

 近年のデビスカップチームではシングルスではなく、ダブルスを中心に活動し、しかも大一番のダブルスに起用されてきた。2001年は豪州との決勝のダブルスに出場して勝利、見事勝利の栄冠をプレーヤーとして獲得した。2002年のロシアとの決勝でもニコラ・エスクーデとペアを組み、エフゲニー・カフェルニコフとマラット・サフィンのロシアペアを下している。昨年は1回戦のルーマニア戦のダブルスで勝利をあげたもののシングルスで1敗、準々決勝のスイス戦では得意のダブルスでもスイスペアに敗退、最終日のシングルス第1試合ではスイスのエース、フェデラーにストレート負けし、チームの敗退がその瞬間に決まった。このようにサントロは近年のシングルスでは振るわない。しかし、13年前のニームの古代劇場でのドラマの再現をアリカンテの闘牛場でも期待され、サントロはメンバーに入ったのである。(続く)

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