第377回 初秋の赤土の死闘(2) トゥールーズの借りをスイスで返す

■トゥールーズのハードコートはロジェー・フェデラーの独壇場

 2003年のデビスカップで3年連続の決勝進出と王座奪回を目指すフランスは準々決勝でスイスと対戦する。フランスのホームゲームとなったが、フランスはトゥールーズの室内を開催地として選択する。トゥールーズは赤いレンガの建物で町が形成され、別名「赤色の町」と言われている。室内での戦いでフランスが用意したのは赤土のクレーコートではなくハードコート。本連載の読者の皆様はよくご存知のことであろうが、フランスは室内でも赤土を搬入したクレーコートを準備してアドバンテージを得ようとしていた。しかしながらこのトゥールーズでは通常のハードコートでスイスを迎えることになった。2001年にスイスに勝っていることから油断していたわけではないだろう。結局サーフェースの選択を誤ったフランスはスイスの若手の成長に苦汁を飲まされることになったのである。
 フランスを撃破したのは、1981年生まれで21歳のロジェー・フェデラー、シングルス2試合、ダブルス1試合と可能な限りの全試合に出場した。金曜日のシングルス第2試合ではニコラ・エスクーデを6-4、7-5、6-2、とストレートで下す。土曜日のダブルスではマルク・ロセと組み、ファブリス・サントロとエスクーデのフランスペアを3-1と下し、王手をかける。日曜日のシングルスの第1試合ではサントロを6-1、6-0、6-2とストレートで撃破、1人で3勝をあげる活躍でフランスの行く手を阻んだのである。

■復讐に燃えるフランス、準備よくクロアチアを下す

 3年連続の決勝進出を逃したフランスにとって2004年は復讐のシーズンとなった。1回戦のクロアチア戦はフランスのホームゲーム。鉄の町メッスの体育館にフランスは手堅く赤土を敷き詰める。そしてボールも全仏で使用しているものを指定する。このような万端の準備でフランスは4-1とクロアチアを下し、準々決勝に進出する。準々決勝の相手は前年に引き続き、スイスとなったのである。

■1勝1敗で迎えたダブルスで勝利、フェデラー神話を崩す

 ローザンヌ近郊のプリリーで行われるこの試合はもちろんハードコート、そしてエースにフェデラーが控える。金曜日の第1試合でフェデラーはエスクーデに6-2、6-4、6-4とストレートで勝利、貫禄の違いを見せつける。フェデラーの出場するシングルス2試合は敗戦を覚悟しなくてはならないが、エスクーデは2年連続のストレート負けである。第2試合に起用されたアルノー・クレマンはお返しとばかりにイボ・ホイベルガーを6-3、6-3、6-2のストレートで下し、初日は1勝1敗のタイスコア。2日目のダブルスにもフェデラーはイブ・アレグロと組んで登場する。ダブルスで勝ちたいフランスはエスクーデとダブルスのスペシャリストのミカエル・ロドラのペアで必勝を期す。フランスのペアは第1セットこそタイブレークの末に落としたが、第2セットから3セット連取。フェデラー神話を崩したのである。

■最終試合でエスクーデがストレート勝ち、スイスに勝利

 最終日はまずフェデラーとクレマンが対戦。金曜日にはいずれもストレート勝ちをしている両エースの戦いとなったが、フェデラーはこの日も実力の違いを見せつけ、クレマンを6-2、7-5、6-4と一蹴する。2勝2敗で最後のシングルスを迎えた。フランスは予定通りエスクーデを起用するが、スイスはミッシェル・クラトフビルを起用する。これまでのデビスカップでは3勝8敗と不振であるが、前年の1回戦のオランダ戦で2勝2敗で迎えた最終戦で逆転勝ちしたというここ一番の強さを評価されての起用であろう。しかし、この試合ではエスクーデが意地を見せた。エスクーデはタイブレークにもつれこんだ第1セットを7-6と先取すると、第2セットも6-4と連取。そして第3セットも6-6となったタイブレークを制して、結果的にはストレート勝ち。アウエーでの苦手なサーフェースの対戦でフランスはスイスに対して前年の悔しさを晴らし、準決勝に進出したのである。(続く)

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