第536回 ラグビー・フランス代表100周年(2) 油断大敵、スコットランドに敗れる

■初戦の相手は近年強豪国に勝てないスコットランド

 秋の国内ツアーを見事に4連勝で飾り、100周年を迎えたラグビーのフランス代表。6か国対抗の初戦は2月5日のエジンバラでのスコットランド戦である。古豪スコットランドも2003年のワールドカップ以降は振るわない。日本のファンの皆様はタウンズビルでの日本との激闘が印象に深いであろうが、この大会でも結局グループリーグではフランスに敗れて2位、決勝トーナメントでも豪州に敗れ、ベスト8どまりである。実は2003年の6か国対抗でウェールズに勝利して以来、旧インターナショナルボード加盟国(イングランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、豪州、ニュージーランド、南アフリカ)に対して22連敗という成績なのである。したがって6か国対抗でもこの2年間は新規加盟チームのイタリアに2回勝利しただけであり、フランスにとってはくみしやすい相手であると目されていた。
 ファンも楽観視しているとともに、ちょうど同じ日にチューリッヒではハンドボールの欧州選手権の決勝が行われ、フランスがスペインと対戦する。また国内ではサッカーのフランスリーグの天王山とも言うべきリヨン-ボルドー戦が行われた。フランスのスポーツファンはハンドボールチームの応援に熱中、フランスはスペインを31-23と破り見事に優勝を果たす。リヨンとボルドーの試合は両雄が譲らず、スコアレスドローとなる。

■最多主将記録となるファビアン・プルー

 フランスの主将は左ロックのファビアン・プルー、この試合が代表103キャップ、そして主将を務めるのが35試合目となる。これは最多主将記録となり、日本との最初のテストマッチの主将を務めたジャン・ピエール・リーブ、名BKとして活躍したフィリップ・サンタンドレの34試合がこれまでの記録であった。またフランスは両CTBにルドビック・バルボン、フローリアン・フリッツというほとんど代表経験のない選手を起用する。またフランカーにはレミー・アルタン、フッカーにはディミトリ・サルゼウスキーというスタッド・フランセの人気選手を起用する。
 地元ファンも勝ち目がないと思ったのであろう、6万7000人収容のスコットランドのラグビーの聖地は5万人しか観衆が集まらず、6か国対抗の試合としては異例の空席が目立つ。
 主審は南アフリカのジョナサン・カプラン氏、本連載の読者の皆様ならばよくご存知の2004年11月20日のマルセイユでのフランス-アルゼンチン戦の主審である。本連載第399回でも紹介したとおり、フランスは14-24とまさかの敗戦を喫してしまう。

■スコットランド先制、リードを広げる

 それから14か月、マレーフィールドでも歴史は繰り返す。圧倒的不利を予想されたスコットランドは11分に5メートルスクラムから先制トライ、ゴールも決まって7-0とリードする。21分にはスコットランドは40メートルのペナルティゴールを決め、観衆を歓喜させる。さらに31分にもペナルティゴールで3点追加、13-0とまさかの展開となる。フランスは前半終了間際の40分にゴール正面15メートルの地点で敵オフサイドからペナルティキックを得る。SHのジャン・バプティスト・エリサルドが慎重に決め、3点返し、10点差で後半を迎えた。

■終盤の追い上げも届かず、7年ぶりのスコットランド戦黒星

 しかし後半も先手を取ったのはスコットランドであった。46分に左WTBのシン・ラモントがこの日2本目のトライ、ゴールも決まり20-3とリードを広げる。フランスはここから反撃に転じる。50分にナンバー8のジュリアン・ボネールがようやくチーム初のトライ(ゴールは失敗)をあげる。60分にはペナルティゴールを決め、20-11と追い上げる。そして77分にトライをサルゼウスキーがコーナー近くにあげるが、エリサルドのゴールは失敗する。
 結局フランスは16-20と思わぬ相手に敗れ、開幕戦を落としてしまった。スコットランド戦の敗北は1999年4月10日以来、実に7年ぶりのことである。主将のプルーは記念すべき試合がまさかの黒星となってしまった。油断大敵という言葉はこういう時のためにあるのであろう。(続く)

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