第979回 ラグビー、初夏のオセアニア遠征(1) 南海のエジンバラでニュージーランドと対戦

■ニュージーランドで2試合、豪州で1試合

 偶数年はワールドカップや欧州選手権の本大会が行われる6月であるが、今年はワールドカップ本大会とあってコンフェデレーションズカップが開催されている。欧州からは昨年の欧州選手権で優勝したスペインが出場しており、フランスでは関心の低いトーナメントとなった。今年の6月のフランスのスポーツファンの耳目を集めたのは、テニスのローランギャロス、そしてF1に加え、ラグビーであった。ちょうど日本ではU20世界ラグビー選手権が開催され、日本の読者の皆様の関心も高かったであろう。この若者の大会で、フランスは前回大会と同じ5位に終わった。フランスのラグビーファンが熱狂したのは6月恒例の南半球遠征である。
 今年の南半球遠征はニュージーランドと2試合、豪州と1試合行う。今春の6か国対抗はアイルランドが5戦全勝でグランドスラムを達成、フランスは、アイルランドとイングランドに敗れ、イングランド、ウェールズとともに3勝2敗であり、得失点差で3位となった。さらに昨年秋に南半球勢をホームで迎え撃った際は苦手のアルゼンチンに勝利、太平洋諸島代表に勝利し、豪州に敗れている。
 U20世界ラグビー選手権でもニュージーランドが2連覇を果たしたように、ラグビーの世界では南半球優位という構図ができあがっている。その強豪チームとアウエーで戦うことは非常にタフなことである。フランスはまず6月13日にダニーデンで第1テスト、そして20日にウェリントンで第2テスト、さらに27日には海を渡りシドニーで豪州とツアー最終戦を戦う。

■スコットランド移民の街、ダニーデン

 ダニーデンはニュージーランド南島にある港町でスコットランド移民の作った都市である。ダニーデンはエジンバラの旧名であり、スコットランド風なのは都市名だけではなく、エジンバラを思わせるビクトリア時代の様式の建物が多数残る美しい街並みを誇る。南半球では有数の美しいクラシックな都市として有名である。オタゴ金鉱が19世紀に見つかったこともあり、町は急速に発展した。フランスのフィフティーンも、初夏の北半球から真冬の南半球にある「南海のエジンバラ」を訪れ、スコットランドを思い出したであろう。

■弟分のU20代表は南アフリカに敗れる

 この第1テストの13日には、現地時間の夜間にニュージーランド戦が行われたが、それに先立って昼間には、大阪の花園ラグビー場で、U20世界選手権でプール首位をかけてフランスは南アフリカと対戦した。
 両国以外にイタリア、フィジーという強豪のそろう死のグループの首位をかけ、ラグビーの聖地・花園で激突したが、フランスは南アフリカ相手に27-43で屈し、5位-8位決定戦に回ることになった。弟分のU20が大阪で敗れたニュースは白いユニフォームの兄貴分のフル代表のフィフティーンにも入っていた。

■圧倒的にニュージーランドがリードする過去の戦績

 フランスとニュージーランドが最後に顔を合わせたのは2007年のワールドカップの準々決勝での対戦である。地元開催のフランスは予選プールの初戦で苦手アルゼンチンに敗れ、準々決勝はフランスを離れ、ウェールズのカーディフで戦うことになった。この試合の模様は本連載の第769回と第770回で紹介しているが、フランスが大逆転劇を演じ、20-18と勝利している。
 しかし、両国の通算の対戦成績は、ニュージーランドが一方的にリードしており、フランスの11勝1分34敗、カーディフでの対戦の前はニュージーランドが7連勝している。さらに、ニュージーランド国内でのフランスとニュージーランドの対戦は、これまで21試合戦い、フランスはわずか3勝、ニュージーランドが18勝と、圧倒的にニュージーランドが優位に立っている。前回、フランスがニュージーランドに遠征した2007年6月も、フランスは11-42、10-61と連続して大敗を喫している。
 それでも、これは北半球のチームとしては誇るべき成績であり、フランス以外の北半球のチームのうち、ニュージーランドでオールブラックスに勝利したことがあるのはイングランド(12戦して2勝)とブリティッシュライオンズ(38戦して6勝)だけである。フランスは、この北半球の香り漂う街で北半球勢の意地を見せたいところである。(続く)

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