第981回 ラグビー、初夏のオセアニア遠征(3) 惜敗するも、デーブ・ギャラハー杯を初獲得

■初対戦時のニュージーランドの主将で、西部戦線で命を落としたデーブ・ギャラハー

 前回の本連載では6月13日に行われたニュージーランドとの第1テストでフランスが勝利したことを紹介した。第2テストは6月20日にはウェリントンで行われたが、第1テストで勝利したこと、弟分のU20代表が昨年に続きU20世界ラグビー選手権でベスト4に残ることができなかったことなどもあり、期待が高まった。
 フランスにとって最初の国際試合の相手はニュージーランドである。ニュージーランドのラグビーがフランスに様々な影響をもたらしてきた。初対戦時のニュージーランドの主将がデーブ・ギャラハーである。ギャラハーはラグビープレーヤーとしても有名であったが、第一次世界大戦の戦火に巻き込まれることになる。義勇兵としてANZAC(豪州・ニュージーランド連合軍)に参加し、欧州の地で連合軍の一員として戦った。そして1917年にパッシェンデールの戦いで命を落としたのである。パッシェンデールは現在のベルギーに存在し、60万人が命を落としたといわれる。この戦いでニュージーランド軍を含む連合軍が血を流して戦わなければ、フランスの被害はさらに大きくなったのである。

■2000年に設けられたデーブ・ギャラハー杯

 そのフランスの恩人であるギャラハーを記念して、2000年にデーブ・ギャラハー杯が設けられた。これはワールドカップ以外でのフランスとニュージーランドの対戦で勝利したチームに与えられるものである。今回の場合は2試合の通算成績でよい成績を残したチームに与えられるが、これまでフランスがこのデーブ・ギャラハー杯を獲得したことは一度もなかったのである。

■雨天の中、常にニュージーランドが先行

 フランスはメンバーを大幅に入れ替えてこの試合に臨む。ダニーデンもウェリントンも次回のワールドカップの開催地であり、フランスとしては多くの選手に経験をつませたいと考えているのである。
 ウェリントンは雨が降りしきり、ウエストパック競技場には3万1000人の観衆が集まったが、空席も目立つ。雨天とあって4分には先制点の欲しいニュージーランドがPGを狙うが、雨と風にさえぎられ失敗する。荒天がハンドリングラグビーを得意とする両チームには不利な条件かと思われたが、試合は好ゲームとなった。ファーストスクラムは実に14分まで待たなくてはならなかった。第1テストではフランスが常に先行する展開となったが、この第2テストでは常にニュージーランドが先手を取る展開となった。まず、第1テストでもトライを決めているマー・ノヌーが25分に先制トライ(ゴール失敗)、そして前半終了間際の40分にステファン・ドナルドがPGを成功させて、8-0というスコアでハーフタイムを迎える。

■セドリック・エイマンのトライ、ディミトリ・ヤシビリのPG

 8点をリードされたフランスであるが、意地を見せたのは左WTBのセドリック・エイマンである。すでに30歳となるベテラン選手だが、華麗なステップを踏んでニュージーランドのディフェンスを置き去りにし、トライをあげる。ウェリントンのファンも驚くような見事なトライであった。そして1週間前に代表にデビューしたばかりのジュリアン・デュプイがゴールを決めて1点差に詰め寄る。
勝利にこだわるニュージーランドは、その後フランスの反則で得たペナルティはPGを狙い、得点を積み上げようとする。56分にはドナルドがタッチライン沿いからの難しいPGを決めて11-7と4点差にし、トライ以外では逆転できない得点差にする。
 後半中盤になり、ニュージーランド、フランスともに選手を入れ替える。フランスはSHのデュプイに代えて、ディミトリ・ヤシビリを投入、SHとして期待できるがプレースキッカーとしても期待できる。デュプイもキッカーであり、決して悪いキッカーではないが、この日はポストとクロスバーに嫌われており、ツキを変えたいところである。ニュージーランドは66分にはドナルドに代わって入ったルーク・マカリスターがPGを決めて、14-7と1トライ1ゴールでは逆転できない点差まで広げる。しかし、フランスはヤシビリの投入が吉と出る。7点差に広げられた後のキックオフでニュージーランドがオフサイドの反則、これをヤシビリが決めて10-14と4点差に迫る。
 結局、試合はこのままで終わり、10-14でフランスは敗れてしまうが、第1テストを5点差で勝利したフランスは2試合通算のスコアでニュージーランドを上回る。この結果、デーブ・ギャラハー杯を獲得したのである。(続く)

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