第987回 2009年ツール・ド・フランス(4) 優勝はアルベルト・コンタドール

■期待はずれに終わった昨年の上位者

 史上初めて複数名の日本人選手が参加した今年のツール・ド・フランスであるが、優勝争いはやはり有力選手が中心となった。今回の注目選手は前々回の本連載でスペインのアルベルト・コンタドールと米国のランス・アームストロングの2人を紹介したが、2人とも昨年の大会には出ていない復活組の選手である。
 昨年の大会はスペインのカルロス・サストレが優勝、オーストリアのベルンハルト・コールが2位。ロシアのデニス・メンショフが3位に入っている。昨年の上位3人のうちエントリーしたのはサストレとメンショフの2人であったが、2人ともさえない成績に終わっている。サストレは得意の山岳コースで精彩を欠く。メンショフはジロ・デ・イタリアを制覇し、ツール・ド・フランスとの二冠も期待されたが、序盤から大きく出遅れてしまった。総合成績はサストレが17位、メンショフは51位と期待はずれの成績に終わってしまった。

■モナコを疾走したスプリンター、ファビアン・カンセララ

 昨年の上位者に代わり、今年のツールを牽引したのはスイスのファビアン・カンセララであった。2006年と2007年の世界選手権のタイムトライアル、2008年の北京オリンピックのタイムトライアルで金メダルを獲得したカンセララにとって、モナコを出発する今年のコースが吉と出たようである。モナコでのタイムトライアルで圧倒的なカンセララはこの貯金を生かし、平坦なコースの続くスペインのバルセロナに到着する第6ステージまで首位を守り、マイヨー・ジョーヌを着て南仏を駆け巡った。
 このカンセララの座をまず脅かしたのがアームストロングである。5年ぶりのツール・ド・フランス出場、さらに37歳という高齢であるため、話題にはなっても成績は、と思っていたファンが大多数であった。ところが、序盤戦でアームストロングは大活躍、あわやマイヨー・ジョーヌという活躍でフランスのファンを驚かせる。
 バルセロナからはピレネー山脈にアタックする最初の山岳コースに入るが、ここで総合首位の座を奪ったのがイタリアのリナルド・ノチェンティーニであった。山岳コースを得意とするノチェンティーニはこのピレネー山中で総合首位に立ち、山から下ってフランスを西から東に横断する第14ステージまで首位をキープしたのである。

■アルプスで首位に立ったアルベルト・コンタドール

 ツール・ド・フランスの2つ目の山岳コースがやってきた。第15ステージの行われた7月19日は休息日の前日である。休息日の前日は通常、山岳コースしかもタフなコースが設定されるのが常である。フランスのポンタルリエから国境を越えてスイスのベルビエに向かうアルプスの山岳コースを制したのはコンタドールであった。2年ぶりに出場したコンタドールにとって今大会初のステージ優勝を果たすとともに、総合成績でもノチェンティーニをかわして首位に立ったのである。
 今年のコースはスイスからフランスに戻り、パリを目指すことになるが、コンタドールはここから最後まで総合首位の座を譲らなかった。終盤戦のハイライトは7月23日の第18ステージはアヌシー湖周回であるが、このタイムトライアルを制したのもコンタドールだった。
 そして迎えた7月26日、パリのシャンゼリゼ通りを周回するコースのゴールで栄冠を獲得したのはコンタドール、そして2位はシュレク兄弟の弟のアンディ・シュレク、そして3位には5年ぶり復帰のアームストロングが入った。コンタドールとアームストロングが所属しているカザフスタンのアスタナはチーム総合優勝も果たしている。

■大健闘の日本人コンビは完走

 さて、13年ぶりに出場した日本勢の総合成績であるが、別府史之、新城幸也ともに完走を果たした。これまでにツール・ド・フランスに挑戦した日本人2人(川室競、今中大介)はいずれも序盤にリタイアしている。2人が完走したことは96回目を迎えたツール・ド・フランスの歴史から考えれば小さいことかもしれないが、日本のスポーツの歴史に残る大きな足跡となろう。総合成績は別府は112位、新城幸也は129位であるが、別府は最終日に敢闘賞を獲得し、来年のツール・ド・フランスが待ち遠しいのである。(この項、終わり)

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