第1132回 不振に終わった南半球遠征(4) 南米の地で12年ぶりに勝利

■サッカーよりもラグビーの方が多い南米遠征

 南半球遠征で南アフリカからアルゼンチンに渡ったフランス代表、7年ぶりの南米での試合となる。実はサッカーのフランス代表が南米を最後に訪問したのは本連載の第1回から第4回にかけて紹介した2001年9月のチリ遠征が最後のことである。そしてその前の南米遠征は1978年のワールドカップ・アルゼンチン大会までさかのぼらなくてはならない。こう考えてみると欧州と南米の二極構造と言われているサッカーよりも南米にインターナショナルボード加盟国のないラグビーの方が南米を訪問する機会が多いというのも不思議な気がする。

■アルゼンチンAと対戦

 6月19日19時半にラプラタのラプラタラグビークラブで行われたフランス代表とアルゼンチンAの試合、正式なテストマッチではなく、主審も地元のアルゼンチン人である。この試合のキックオフはフランス時間で20日の0時30分、つまり同時間帯にサッカーのワールドカップの試合は行われていない。また両国ともサッカーの代表チームはこの日あるいはその前後には試合がなく、ちょうどファンはラグビーの試合に注目することができる環境であった。そのようなこともあり、会場には4,000人のファンが集まった。フランスは14人の代表経験者、一方のアルゼンチンA は7人の代表経験者で実質的にはブエノスアイレス選抜となった。

■バックスリー快走、5トライをあげる快勝

 勝敗よりも、内容が問われる試合であったが、フランスは悪いグラウンドコンディションの中で回答を出した。この日はスタンドSOは南アフリカ戦でいいところがなかったフランソワ・トラン・デュックに代わりダビッド・スクレラを起用する。南アフリカ戦ではプレースキッカーはSHのモルガン・パラが務めていたが、この日はスクレラが務め、6分には先制のPGを決める。この日のフランスの先発メンバーにプレースキッカーとしてワールドクラスの選手にはSHのドミトリ・ヤシビリもおり、多士済々である。人材が豊富であるという点ではフランスのサッカーとラグビーの共通点であろう。
 そして南アフリカ戦でもトライをあげた右WTBのマルク・アンドルー17分にはこの試合で初めてのトライを決め、ゴールは失敗したが、8-0と差をつける。21分には左WTBのジュリアン・マルジューがきれいに抜け出しでWTBらしいトライを決める。そして31分には手堅くPGで得点を重ね、35分にはFBのジェローム・ポリカルがトライを決め、スクレラのゴールも決まり、25-0と大差をつける。前半終了間際にアルゼンチンAにトライを許し、ゴールも決められるが、フランスのバックスリー(両WTBとFB)はそれぞれ1トライずつ決めて25-7というスコアでハーフタイムを迎える。
 後半に入ってもまた先に得点をあげたのはフランスであった。前半にもトライをあげているマルジューがこの日2本目のトライ、さらに79分には左フランカーのグレゴリー・ランボレイがこの日バックスリー以外で唯一のトライを決め、スクレラがこの日5本目のキック成功、37-7とこの日最多となる30点差をつける。アルゼンチンAもロスタイムにトライを決めてゴールを成功させ、最終スコアはフランスが37-14と勝利する。

■収穫はこの日2トライの左WTBジュリアン・マルジュー

 もちろんこの試合は1週間後に行われるテストマッチの前哨戦であり、フランスにとっては結果より内容が重要であるが、この日の収穫は2本トライを決めたマルジューであろう。2008年の6か国対抗で代表にデビューしたクレルモン所属の選手であるが、WTBは南アフリカ戦でも先発したバンサン・クレルクとオーレリアン・ルジェリが左右に控えている中で、出場を重ね、15キャップである。所属チームのクレルモンで今季はフランスチャンピオンになっており、期待される選手である。
 他方、残念なニュースはフランカーのバンチェスラス・ローレがこの試合はいい動きをしながら、後半に負傷し、退場してしまい、26日のテストマッチの出場が不可能となったことである。
 そして、南米の地で12年ぶりの勝利をあげたフランスはテストマッチに挑むのである。(続く)

このページのTOPへ