第1131回 不振に終わった南半球遠征(3) 苦手アルゼンチンの敵地に乗り込む

■大西洋を渡り、アルゼンチンへ

 サッカーのワールドカップ開幕とほぼ同時期に始まったラグビーのフランス代表の南半球遠征、初戦となる南アフリカ戦は前回の本連載で紹介したとおり、17-42という大差で敗れ、フランスの南アフリカでの試合としては最悪の結果になってしまった。この敗戦のショックも消えないうちに、フランスのフィフティーンは大西洋を9時間半のフライトで横断し、アルゼンチンに渡った。アルゼンチンでは2試合、19日の夜にブエノスアイレスでアルゼンチンA(ブエノスアイレス選抜)と対戦し、26日の午後にアルゼンチン代表とテストマッチを行う。

■今世紀になってアルゼンチンを苦手とするフランス

 さて、フランスはアルゼンチンを大の苦手としていることは本連載で何度も紹介している。2007年の地元開催のワールドカップでは開幕戦で敗れ、さらに3位決定戦でも敗れている。ラグビーのワールドカップで同一のチームに2回負けたのはこの時のフランスだけであり、しかもそれが地元開催のワールドカップであった。このワールドカップでフランスは準々決勝でニュージーランドに勝利するという偉業を成し遂げたが、3位決定戦での負けですっかり恥をさらした格好になった。
 これまでのフランスとアルゼンチンの対戦成績はフランスが31勝1分10敗と大きく勝ち越しているが、今世紀に入ってからは負けがこみ、フランスは2勝6敗と圧倒されている。このところフランスは秋にワールドカップまたはテストマッチでアルゼンチンと対戦することが多く、過去5試合はすべてフランス国内で行われている。フランスがアルゼンチンを訪問するのは2003年6月以来7年ぶりのことである。7年前のアルゼンチン遠征では連敗し、さらにその前年も同時期にアルゼンチンを訪問しフランスが敗れている。

■1999年ワールドカップの得点王、ゴンサロ・ケサダを招聘

 フランスがアルゼンチンで勝利したのは1998年6月、ちょうどフランスでサッカーのワールドカップを開催している時に連勝したのが最後のことであり、今回のフランスは12年ぶりのアウエーでの勝利を目指す。フランスは2年前からあるコーチを招聘する。それがアルゼンチン代表のスタンドオフとして活躍したゴンサロ・ケサダである。前年にはフランスにホームで連敗し、秋には日本に遠征して敗れるというアルゼンチンは翌年に行われたワールドカップでの下馬評は高くなかったが、ケサダの大活躍でベスト8に進出する。ケサダはこの大会で102点をあげて得点王に輝いている。ケサダはこの大会まではアルゼンチンのクラブに所属していたが、この年から引退の直前までフランスのクラブに移籍し、ナルボンヌ、ベジエ、スタッド・フランセ、トゥーロンに所属し、フランスチャンピオンに3たび輝いており、フランスのラグビーをよく知っている。
 ケサダはフランス代表のキックのコートとして迎えられたが、もちろんフランスが苦手意識を持っているアルゼンチン対策ということも考慮されているであろう。

■サッカーのワールドカップの成績が対照的な両国

 フランスがブエノスアイレスに移動し、アルゼンチンで第1戦を行ったのは現地時間で19時半、5時間の時差のあるフランスでは日付が変わり20日のことである。本連載第1124回で紹介したとおり、19日の朝のレキップ紙にニコラ・アネルカのメキシコ戦のハーフタイムでのレイモン・ドメネク監督に対する暴言が大きく報じられ、フランスはこの日を境に大きく揺れ動くことになった。
 一方のアルゼンチンであるが、この国も世界ランキングだけを考えればサッカーよりもラグビーが上位であるがディエゴ・マラドーナ監督の率いるチームに注目が集まる。南米予選を苦しんで突破したが、本大会では好調であり、ナイジェリアに1-0、韓国に4-1と連勝しており、1分1敗でいまだ無得点というフランスとは対照的である。 マラドーナ率いるサッカーの代表チームの快進撃の陰で、フランスのフィフティーンは試合に臨むのである。(続く)

このページのTOPへ