第1243回 シーズン終盤のフランス・ラグビー (2) 名門対決となる欧州チャレンジカップ決勝

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ハイネケンカップ出場チーム以外が出場する欧州チャレンジカップ

 前回の本連載ではサッカーのチャンピオンズリーグに相当するハイネケンカップ準決勝でトゥールーズとペルピニャンがいずれも敗れたことを紹介したが、欧州サッカーの世界にヨーロッパリーグが存在するように、欧州ラグビー界には欧州チャレンジカップが存在する。これはフランスなど6か国対抗に出場している国からハイネケンカップ出場に準じる成績のチームが参加するほか、ルーマニア、スペインのクラブにも門戸を広げている。
 フランスの1部リーグはTOP 14という名称でそのとおり14チームが所属しているが、このうちハイネケンカップに出場しない7チームが、欧州チャレンジカップに出場する。つまり1部の14チームはすべてサッカーの欧州カップに相当する大会に出場することになる。サッカーの場合は、1部に20チーム所属し、そのうちチャンピオンズリーグに出場できるのは3チーム程度、そしてそれに次ぐヨーロッパリーグにもフランスカップやリーグカップの優勝チームを含めて3チーム程度の出場であり、ラグビーの欧州カップがサッカーのそれに比べてハードルが低いものであることは否めない。

■欧州のクラブラグビーを牽引するフランスとイングランド

 しかしながら、サッカーはリーグ戦、フランスカップ、リーグカップと国内タイトルが3つあるのに対し、ラグビーは国内タイトルはリーグ戦だけであり、第2のタイトルが国外のタイトルとなる。さらに、ハイネケンカップ、欧州チャレンジカップともにフランス勢が上位を占め、そしてフランス代表も北半球の強豪として君臨していることを考えれば、ハードルの低さはフランスのラグビーのレベルの高さが評価されていることを意味しているであろう。
 そして1部リーグでハイネケンカップに出場できないチームすべてが出場するというのはイングランドのプレミアリーグも同様である。そしてフランスとイングランドのクラブがこの欧州チャレンジカップの上位を占めているのである。

■5プール中4プールで首位になったフランス勢

 今季の欧州チャレンジカップは昨年10月に開幕し、5月20日の決勝を目指して熱戦が繰り広げられているが、フランスからは7チーム、イングランドから6チーム、イタリアから4チーム、アイルランド、スペイン、ルーマニアからはそれぞれ1チーム、合計20チームが出場している。4チームずつ5つのプールリーグを行い、1位チームが決勝トーナメントに出場する。
 7チームがフランスから出場したが、5つあるプールのうち、ブリーブ、モンペリエ、スタッド・フランセ、ラ・ロシェルの4チームが1位になった。唯一、フランス勢が首位になることができなかったプール1はイングランドのハーレクインが首位になった。それ以外にハイネケンカップに出場している中から3チームが加わる。ハイネケンカップは6つのプールリーグで争われ、首位は無条件で決勝トーナメント、2位になったチームのうち上位2チームが決勝トーナメントに残ることができる。この2位グループのうち3番手から5番手までが欧州チャレンジカップの決勝トーナメントに転戦する。ハイネケンカップと欧州チャレンジカップの関係はサッカーのチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの関係である。

■準々決勝、準決勝のフランス勢対決を制した名門スタッド・フランセ

 ハイネケンカップから転戦してきたロンドンWASPS(イングランド)、ムンスター(アイルランド)、クレルモンの3チームを加えて決勝トーナメントが行われ、準々決勝ではスタッド・フランセ-モンペリエ、ラ・ロシェル-クレルモンというフランス勢同士の戦いがあり、スタッド・フランセとクレルモンが勝ち抜いた。また、ムンスターを迎えたブリーブは37-42と競り負けて姿を消した。
 準決勝はまたスタッド・フランセ-クレルモンというフランス勢同士がパリのシャルレティ競技場で対戦した。スタッド・フランセが29-25と競り勝ち、5月20日にウェールズのカーディフのミレニアム競技場で行われる決勝に進出した。決勝の相手は1866年創立の名門ハーレクイン、1883年創立のスタッド・フランセとの名門対決はオールドファンならずとも注目の一戦となろう。(続く)

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