第1259回 フランス代表の東欧3連戦(4) ウクライナ戦のメンバーから外れたサミール・ナスリ

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■強行日程で強化に努めるフランス代表

 昨年9月にスタッド・ド・フランスで敗れたベラルーシに対し、ミンスクでの試合も同じような試合展開で、引き分けに終わってしまったフランス、首位をキープしたものの、東欧での残り2試合で調子を取り戻し、シーズンオフを迎えたいところである。
 6月3日にベラルーシと対戦したフランスは、6日にウクライナ、9日にポーランドと対戦する。ウクライナ、ポーランドは来年の欧州選手権開催国であり、そのスカウティングという点でも重要な試合である。7日間に3試合という強行日程は、ワールドカップや欧州選手権の終盤戦を除けば極めて珍しいことであろう。それだけにこのワンチャンスを有意義に使いたい首脳陣の意図が伝わってくる。

■ウクライナのEU入りに影響を与えるポーランドとの共同開催

 ウクライナと言えばチェルノブイリ原子力発電所があり、日本でも一躍有名になった。現在でも立ち入り禁止区域がウクライナだけではなくベラルーシにも広がっている。しかし、国内にエネルギー資源のないウクライナは、今でも原子力発電所を多く抱え、旧ソ連時代は同じ国であったロシアとエネルギー問題で対立してきた。2004年にはオレンジ革命がおこり、年末には親欧米派のビクトール・ユシチェンコ大統領が生まれる。このオレンジ革命の布石となったのはベルリンの壁以降の東欧の自由化に端を発するが、直接的には同年5月にポーランドなどがEU(欧州連合)に加盟し、ウクライナは直接EU諸国と国境を接することになったのである。来年の欧州選手権はウクライナとポーランドでの共同開催であるが、欧州的にはEU域内と域外の国が共同開催するということになった。
 2002年ワールドカップの韓国と日本の共同開催が両国間の関係を変えたように、ポーランドとウクライナによる欧州選手権の共同開催がウクライナのEU入りの時期を早め、まさに「大西洋からウラルまで」という欧州統合の理念の実現に貢献するかもしれない。

■メンバーを大幅に変えたフランス代表

 ウクライナ戦のフランスのメンバーはGKにスティーブ・マンダンダ、DFは右からアントニー・レベイエール、ユネス・カブール、ママドゥ・サコ、パトリス・エブラ、守備的MFは1人でヤン・エムビラ、攻撃的な位置にヨアン・カバイエとブレーズ・マツイディ、FWは右にロイック・レミー、左にジェレミー・メネス、中央はケビン・ガメイロと言う布陣である。3日前のベラルーシ戦に続いて先発するのは代表での先発2試合目のサコだけであるが、比較的経験の少ないメンバーがそろった。

■スランプに陥ったサミール・ナスリ

 そしてこの試合は親善試合と言うことで23人がベンチ入りしたが、フィールドプレーヤーとしてバカリ・サーニャ、サミール・ナスリの2人がメンバーから外れた。2人とも奇しくもアーセナル(イングランド)の所属であるが、負傷を抱えていることに加え、ナスリは深刻なスランプに陥っている。ナスリは2007年に19歳の若さで代表入り、代表入りして早くも2月後には2008年欧州選手権予選のグルジア戦では初ゴールをあげている。この時の欧州選手権予選でフランスはウクライナと同じグループに入ったが、ナスリはホームもアウエーも2試合とも出場している。今回の東欧遠征のメンバーのうち、当時のウクライナ戦に2試合とも出場したのはナスリ以外にはリベリーとアビダルだけである。そしてスイスとオーストリアで行われた欧州選手権はメンバーに選ばれ、ルーマニア戦とイタリア戦に出場している。2010年ワールドカップは、レイモン・ドメネク監督から評価されず、予選の段階からほとんど起用されず、予選出場はわずか2試合、そして本大会のメンバーから外れた。
 しかし、ローラン・ブラン監督になってからはほとんどの試合に出場、本年3月のルクセンブルク戦では史上最年少のフランス代表の主将となった。しかし、シュートをいくら放ってもゴールネットを揺らすことがなく、2007年11月のモロッコ戦を最後に得点がなく、深刻な得点力不足に悩み、今回のメンバー落ちとなったのである。(続く)

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