第1315回 輝くシルバーメダルコレクター(1) 決勝でニュージーランドと再戦

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■歴史的なロースコアで勝利したウェールズ戦

 予選プールでは日本、カナダ相手に試合中盤に詰め寄られ、ニュージーランド戦は惨敗、そしてトンガ戦はまさかの敗戦と、過去6回のワールドカップではなかった悪い成績で決勝トーナメントに進出したフランスは、準々決勝でイングランドに快勝、さらに準決勝は、主将が退場し、1人少ないウェールズ相手に防戦一方、ノートライで9-8と勝利し、3回目の決勝進出を遂げた。
 ウェールズ戦の9得点と言うのはフランスのワールドカップの歴史において2番目のロースコアである。今大会のウェールズ戦の9得点での勝利は当然ながら勝利した試合のうちの最少得点である。ロースコアでの試合とはいえ、フランスは勝負に徹し、ウェールズの攻撃をしのいで決勝に進出した。

■大本命、地元ニュージーランドが決勝に

 もう1つの準決勝はニュージーランド-豪州と言う南半球勢の争いとなった。地元ニュージーランドが終始試合を支配し、経験不足の感のある豪州はフルバックのビールを負傷で欠き、チャンスを得点に結びつけることができず、有効な策を打つことができずに6-20と沈黙してしまった。
 3位決定戦はウェールズ-豪州と若いチームの戦いになり、4年後、あるいは8年後の決勝戦のプロローグとなるであろう。

■誰しもが予想しなかったフランスの決勝進出

 地元ニュージーランドの決勝進出は多くの人たちが予想したことであるが、フランスの決勝進出を予想した人は国内のファンであってもそう多くはなかったであろう。本連載でも紹介してきたとおり、昨年以降のフランス代表は成績不振であり、昨年夏はアルゼンチンに大敗、そして今年の6か国対抗ではイタリアに6か国対抗で初めて敗れている。昨年の6か国対抗のイングランド戦以降、強豪チームには一度も勝利しておらず、今回のイングランド戦、ウェールズ戦の連勝は誰もが予想しなかった結果である。

■歴史的大敗から立ち直ったフランス

 フランスがウェールズ戦までに戦ったワールドカップ7大会40試合で一桁の得点に終わったことは2回しかない。最少得点を記録したのは2003年大会の準決勝であり、イングランドに7-24と敗れている。そしてもう1つの一桁得点の試合は1987年の第1回大会の決勝のニュージーランド戦で9-29と20点差で敗れている。
 そしてフランスが20点差以上で敗れたことはこの試合を含めて3試合しかない。2回目の20点差以上の敗戦は前回大会の3位決定戦のアルゼンチン戦の10-34の24点差であり、ワースト記録であるが、3位決定戦であり、メンバーを大幅に落とした試合であることからあまり参考にはならないであろう。そして3度目にして最も記憶に新しいのが今大会の予選プール第3戦、9月24日のオークランドでのニュージーランド戦である。
 今回のファイナリストであるニュージーランドとフランスは同じ予選プールAに所属し、決勝戦が予選プールの再現となった。実は前回大会の決勝の南アフリカとイングランドの顔合わせも同様であり、同じ予選プールBで戦い、予選プールでの対戦は南アフリカが36-0と大勝したが、予選プール2位にとどまったイングランドは準々決勝で予選プールB全試合でボーナスポイントを獲得して全勝した豪州を12-10と破る。さらに準決勝はニュージーランドに勝利して勢いに乗るフランスを残り5分で逆転し、14-9と破ったことは本連載第771回と第772回で紹介した通りである。そしてスタッド・ド・フランスで行われた決勝では6-15と食い下がり、勝利することはできなかったが、予選プールとは全く違う白いジャージーのフィフティーンに世界中のファンは拍手を送った。そして世界のラグビーファンは今回の対戦で、前回の南アフリカとイングランドの対戦を思い出しているのである。
 10月7日までのフランスであれば、ニュージーランドの勝利を確信していただろうが、10月8日と10月15日に流れは変わり、フランスは歴史的大敗から立ち直ったのである。(続く)

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