第1436回 ロンドンオリンピックでのフランスの活躍(1) 男子ハンドボール、北京に続き連覇達成

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■開催都市決定の最終投票で敗れたパリ

 7月27日に開幕し、8月12日に幕を閉じたロンドンオリンピック。開催が決まったのは今から7年前の2005年7月。ロンドン、パリ、マドリッド、ニューヨーク、モスクワの5都市が立候補した。いずれも世界的な大都市であり、ニューヨーク、マドリッド以外はオリンピック開催経験のある都市ばかりである。米国では何回もオリンピックが開催され、スペインでも1992年にバルセロナオリンピックが開催されており、成熟都市同士での争いとなった。過半数を獲得する候補都市がなく、投票は4回行われ、最終投票に残ったのはロンドンとパリ、いずれが勝利しても3回目のオリンピック開催となる。最終的にはロンドン54票、パリ50票という僅差でロンドンが3度目のオリンピック開催を勝ち取った。ちょうど開催都市を決定するころ、ロンドンではテロ事件が起こり、オリンピック期間中のテロが懸念されたが、テロもなく、スポーツの祭典は成功裏に終了した。

■冬の時代から飛躍したフランス選手団

 近代オリンピックの創始者であるピエール・クーベルタン伯爵を生んだフランスであるが、1960年代はオリンピックでは振るわず、1960年のローマオリンピックでは金メダルゼロ、1964年東京オリンピックでも金メダル獲得数は1にとどまっている。リヨンがフランスの都市として戦後初めて開催に立候補した1968年のメキシコオリンピックでは金メダル7個を獲得しているが、1960年代から1970年代にかけてフランスのスポーツはサッカーのワールドカップ、欧州選手権での成績を見てもわかる通り、冬の時代であった。
 しかし、1966年の青年・スポーツ省の設置、1975年のスポーツ基本法の制定により、国を挙げての強化策は徐々に実を結び、1980年代のオリンピックでは一桁の後半、1996年以降は北京オリンピックを除くと二けたの金メダルを獲得するようになった。
 今回のフランス選手団が獲得した金メダルは11個、国別では米国(46個)、中国(38個)、英国(29個)、ロシア(24個)、韓国(13個)に次ぎ、ドイツと並ぶ。銀メダル、銅メダルの差でランキングとしてはドイツに6位を譲り、7位であるが、前回の北京大会の金メダル7個(ランキング10位)を上回り、前々回のアテネオリンピックの11個と並んだ。
 今回の11個の金メダルも数字的に近年のレベルと変わらないが、今回の特徴は団体球技での活躍である。第1433回の本連載で団体球技におけるフランスチームの活躍を紹介してきたが、出場した5競技でいずれも素晴らしい成績を残している。

■年初の欧州選手権でまさかの敗退を喫した男子ハンドボール

 まず、金メダルを獲得したのは男子ハンドボールである。北京オリンピックの優勝チームであるフランスのハンドボールについては本連載でもしばしば紹介してきた。北京オリンピック以降の成績を振り返ると、2009年の世界選手権で優勝、2010年の欧州選手権でも優勝、さらに2011年の世界選手権でも優勝しており、オリンピック、世界選手権、欧州選手権という三大大会で4連覇を成し遂げた。そしてオリンピックイヤーとなった今年1月中旬からセルビアで欧州選手権が行われた。この模様については本連載第1347回から第1349回で紹介したが、フランスはまさかの第2ラウンド敗退となった。
 これは男子ハンドボールにおいて有力国同士の力が拮抗していることを意味しており、フランスと他国との差は紙一重であることを示している。

■接戦で競り勝ち、見事に金メダルを獲得

 このように他国との差が少なく、他国からのマークも厳しい中で、フランスはグループリーグではアイスランドに敗れ、グループAを2位で通過。決勝トーナメントでは準々決勝でスペインに23-22、準決勝でグループBを首位通過したクロアチアを25-22と下し、決勝に進出する。決勝の相手はグループリーグでも対戦したスウェーデン。グループリーグでは終盤追い上げられ、33-32と1点差でフランスが勝利したが、決勝も接戦となる。結局フランスがミカエル・ギグーの活躍で22-21と勝利し、オリンピック連覇を果たす。決勝トーナメントは最も差が開いた試合でも3点差と、僅差の試合が続き、フランスと他国との差が極めて少ない中での連覇には拍手を送りたい。(続く)

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