第1688回 準々決勝、2つの逆転劇(3) 格下のドイツの2選手にまさかの2連敗

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■チャンピオンズリーグ準々決勝の間に行われるデビスカップ準々決勝

 パリサンジェルマンは、苦手としていたイングランド勢のチェルシー相手にパルク・デ・プランスで4月2日に3-1と快勝し、4月のパリは一気に春めいてきた。そして第2戦は1週間後の4月8日に行われ、週末をはさむことになる。4月最初の週末にはリーグ戦は第32節が行われ、パリサンジェルマンはスタッド・ド・ランスに3-0と勝利し、勝ち点を79まで伸ばし、着々と首位固めをした。しかし、この週末、フランスのスポーツファンの耳目を集めたのは各地で行われたサッカーの国内リーグではない。4月4日からナンシーで行われたデビスカップ準々決勝である。

■国内上位6人が出場しないドイツチーム

 1月31日から2月2日までの3日間行われた1回戦については本連載第1666回と第1667回で紹介した通り、フランスは豪州に5-0と完勝した。フランスの準々決勝の相手はスペインとドイツの勝者であるたが、ドイツがシード国のスペインを4-1で下して、準々決勝で対戦することとなった。
 かつてはボリス・ベッカー、ミカエル・スティッチなどを擁し、3回の世界チャンピオンに輝いたドイツであるが近年は低迷している。今回もトミー・ハース、フィリップ・コールシュライバーなどランキング上位の選手6人を欠く厳しいメンバーである。今回ナンシーで行われる3日間の試合、ドイツチームのシングルスの2人はトビアス・カムケ、ピーター・ゴヨブジクが主軸となる。カムケは現在世界ランキング96位でドイツ国内では7位、初のデビスカップチーム入りを果たしたゴヨブジクは世界では119位でドイツでは10位である。
 対するフランス、世界ランキング12位のジョー・ウィルフリード・ツォンガと50位のジュリアン・ベヌトーが迎え撃つ。ツォンガはこれまでのデビスカップではシングルスで12勝2敗、ダブルスでは4戦全勝と安定した成績を残している。ベヌトーはデビスカップチームではダブルスに起用されることが多く、豪州戦ではダブルスのメンバーとしてエントリーされていたが、前日にメンバー変更となり出場せず、今回はこれまで1試合しか出場したことがなく、勝利したことのないシングルスでの出場となる。

■シングルス未勝利同士の対戦はトビアス・カムケがストレート勝ち

 ドイツは現在ランキング上位6人が出場しないことから、フランスは優位にこのナンシーでの戦いを進め、チェコと日本で争われる準決勝進出が有力視されていた。しかし、思いもかけぬ展開となった。バスケットの強豪ナンシーのホームスタジアムであるジャン・ベイル体育館、13時30分に始まった第1ラバーはフランスのナンバー2のベヌトーがドイツのナンバーワンのカムケと対戦した。カンケは昨年初めてデビスカップチームに加わり、これまでダブルスに1試合出場しただけで、そのダブルスでは敗れている。すなわち、デビスカップのシングルスでは未勝利同士の選手の対戦となった。
 この試合、第1セットから接戦となり、6-6のままタイブレークとなる。このタイブレークを制したのがドイツのカンケであり、フランスのベヌトーは第1セットを落とす。この勢いに乗ったカムケは第2セット以降は次々とブレークし、第2セットを6-3、第3セットも6-3と連取してベヌトーをストレートで破り、デビスカップのシングルスに初出場で初勝利をあげたのである。

■初のデビスカップチーム入りのピーター・ゴヨブジク、4時間19分の熱戦を制す

 続く第2ラバー、会場は異様な空気が流れたが、百戦錬磨のツォンガが1勝を返してくれると誰しもが思ったであろう。この第2ラバーも第1ラバーの第1セットと同様に接戦となり、ツォンガは5-7と落としてしまう。そして第2セットも接戦でタイブレークを制したツォンガが7-6で取り、ようやくフランスは1セットを取る。しかし第3セットも3-6と簡単に落とし、土俵際に攻め込まれ、第4セットはタイブレークで挽回し、試合はいよいよファイナルセットとなる。タイブレークのないファイナルセットはゴヨブジクが8-6と競り勝ち、初めてのデビスカップで世界のトップ選手を破る大金星となった。試合時間4時間19分という熱戦であった。フランスは初日のシングルスでまさかの2連敗、がけっぷちの週末を迎えるのである。(続く)

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