第1862回 ラグビーの欧州カップ、トゥーロン3連覇(6) 驚異的な強さを見せたトゥーロン

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■先制トライはウェスレイ・フォファナ、マチュー・バスタローが逆転トライ

  2年前にトゥーロンとクレルモンが優勝を争ったのはアイルランドのダブリンのアビバ競技場である。5万人の観衆の前で常に先行していたクレルモンであるが、64分にアーミテージにこの試合初めてのトライを許し、15-14と1点差に迫られ、ジョニー・ウィルキンソンにゴールを決められて15-16と逆転負けを喫した。
 今回の舞台はラグビーの聖地、ロンドンのトゥイッケナム、今秋のワールドカップのメイン会場であり、8万人を収容する大競技場であるが、フランス勢同士の対戦とあって空席も目立つが、それでも5万6000人の観客が集まった。赤いファーストジャージーのトゥーロン、白いセカンドジャージーのクレルモン、クレルモンは2年前もセカンドジャージーの白を着用し、今度こそ優勝したいところである。試合の展開は2年前と同様、ペナルティゴールで両チームが得点を重ね、序盤はクレルモンがリードした。6-3とクレルモンがリードした25分、この試合最初のトライをマークしたのはクレルモンのウェスレイ・フォファナであった。11-3とリードしたクレルモンに対し、トゥーロンはリー・ハーフペニーがペナルティゴールを2本決めて2点差に迫り、そして前半ロスタイムの40分、トゥーロンでは数少ないフランス人選手のマチュー・バスタローがトライを決め、ゴールも成功し、前半はトゥーロンが16-11と5点リードして折り返す。

■ご当地のニック・アベンダノンが試合を決定づけるトライ

 後半に入り、トゥーロンはペナルティゴールを決めて19-11と8点差をつける。しかしクレルモンは62分にイングランド代表のニック・アベンダノンがご当地のファンの前でトライを決め、ゴールも決まって18-19と1点差に迫る。ボール支配率に上回るクレルモンは、敵陣でペナルティゴールのチャンスを得れば逆転可能である。クレルモンのファンは2年前の逆の展開を願った。しかし、この試合最後のトライを決めたのは70分、トゥーロンのドリュー・ミッチェルであった。豪州代表のウイングであるミッチェルは自陣深い位置でセバスチャン・ティルー・ボルドからパスを受け、目の前にいたクレルモンの4人の防御陣のタックルをあっという間にかわし、自陣の22メートルラインから脱出、無人の右サイドを走り、ハーフラインを越えて、ゴールラインに迫り、オーレリアン・ルージェリーをハンドオフで地に這わせ、最後はフルバックのアベンダノンのタックルを振り切り、トライを決める。トゥーロンはクレルモンに24-18と6点差をつけ、3連覇に導くトライとなった。

■欧州カップで驚異的な勝率を誇るトゥーロン

 トゥーロンは24-18というスコアで勝利し、欧州カップ3連覇であり、最多優勝回数を誇るライバルのトゥールーズの持つ4回という最多優勝回数にあと1回と迫った。そしてトゥーロンの欧州カップでの驚異的な勝率には注目しなくてはならない。34戦して28勝、勝率は8割を超える。ここまでの数字を残しているチームは他にはない。

■決勝戦に弱いクレルモン、国内タイトルで雪辱を期す

 一方、敗れたクレルモンは決勝戦でことごとく敗れている。欧州カップではこれで2戦2敗となったわけであるが、フランス国内のタイトルであるフランス選手権では1936年を最初にこれまでに11回決勝に進出しているが、勝ったのはわずかに2010年の1回だけである。またサッカーの欧州リーグに相当するヨーロピアンチャレンジでは3回決勝に進出して2回勝利しているが、国内外の主要タイトルでの決勝戦の戦績は3勝13敗と精彩を欠く結果となっている。
 しかし、この日、クレルモンのジョード広場には5万5000人の市民が集まり、黄色のファーストジャージーを着て応援した。欧州カップでの優勝はならなかったが、国内タイトルは残っている。5月17日の国内リーグでの対戦は決まっているが、6月13日の決勝戦までにまた対戦する可能性はある。シルバーメダルコレクターが国内では5年ぶりにタイトルを奪回するのか、昨年の優勝チームであるトゥーロンが国内外に二冠を飾るのか、最後まで目が離せないシーズンとなった。(この項、終わり)

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