第2102回 ラグビー、南半球勢と3連戦 (5) アイルランドに初黒星を記録したニュージーランド

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■世界新記録の18連勝、強さを継続するニュージーランド

 サモアに大勝、豪州に惜敗の後をうけて今年のフランスが最後に戦う相手がニュージーランドである。番狂わせの多かった昨年のワールドカップであるが、危なげない戦いで7戦全勝、前回のニュージーランド大会に続いて優勝を果たしている。このニュージーランドの大会後も止まらず、年が明けて北半球の強豪を迎える6月のウインドウマンス、さらには南半球4か国の対抗戦であるラグビーチャンピオンシップでも6戦全勝としてワールドカップ前からの連勝記録を世界タイ記録の17に伸ばした。そして前々回の本連載でも紹介したとおり、ウインドウマンスを前にした10月22日にはホームのオークランドに豪州を迎え、37-10と大勝し、18連勝。これは世界記録である。ニュージーランドは2年前の秋にも17連勝したが、18試合目の相手は豪州であった。2014年8月16日にブレディスローカップの開幕戦として豪州のシドニーでの試合、ニュージーランドは退場者が続出し、豪州をノートライに抑えながら4つのパネルティゴールを奪われ、12-12のドローとなり、記録を更新することはできなかった。その因縁の相手と今度は地元で戦い、世界記録を更新し、11月のウインドウマンスに突入したのである。

■シカゴでのアイルランド戦でまさかの黒星

 ニュージーランドは11月のすべての土曜日にテストマッチを組んだが、第1週の11月5日は米国のシカゴでアイルランドと対戦、第2週の12日にはイタリアと対戦、続く19日にはアイルランドのダブリンでアイルランドと対戦、そして最後は26日にフランスと対戦というスケジュールになっている。
 さて最初のシカゴでの試合で歴史が変わった。米国のラグビーは西海岸中心に発展してきたが、戦略的に東部の大都市で有力国同士のテストマッチを組むようになってきている今年はそれがこのアイルランドとニュージーランドとの対戦であり、シカゴのソルジャーフィールドの6万人を超える大観衆の前で試合が行われた。アイルランドはこれまでニュージーランドと28回対戦し、1分27敗と一度も勝つことができなかったが、この試合では前半に大きくリードし、前半を25-8で折り返す。アイルランドは後半に入って追い上げられたものの終盤にトライで突き放し、40-29というスコアで勝利している。アイルランドとニュージーランドの最初の対戦は今から111年前のことであり、29戦目で歴史を変える勝利がシカゴで生まれた。

■欧州に渡って初戦はイタリアに10トライの大勝

 しかし、欧州に渡ったニュージーランドは再び強いオールブラックスの姿を取り戻した。欧州での第1戦は11月12日のローマのオリンピックスタジアムでのイタリア戦。この試合には8万人を超える観衆が集まり、ニュージーランドラグビーのシンボルであるオールブラックスのブランド価値の高さを示した。今秋初のテストマッチとなるイタリア相手にニュージーランドは10トライを奪う猛攻を見せ、68-10という大差で欧州上陸第1戦を飾った。

■ダブリンでアイルランドをノートライに抑え雪辱

 そして、その翌週はダブリンでアイルランドとの試合である。シカゴでの試合はニュージーランドに負傷者が出たという不運も重なったが、今回はベストメンバーでの戦いとなる。一方のアイルランドはニュージーランドがイタリアに大勝したのと同日に、カナダを迎え、こちらも52-21と大勝して、オールブラックスを迎える。
 ニュージーランドは3分にマラカイ・フェキトアが先制トライを奪い、タッチライン沿いからのゴールをボーデン・バレットが決めて7-0と先行する。アイルランドは10分にペナルティゴールで3点を返すが、ニュージーランドは14分にスクラムを起点にバレットがトライとゴールを決めて14-3とリードを広げる。リードされているアイルランドであるがボール保持率はニュージーランドを上回り攻撃をし続けるが、ニュージーランドの守備に穴をあけることができない。ペナルティゴール2本で追撃するアイルランドに対し、ニュージーランドはフェキトアがこの日2本目のトライを挙げ、バレットのゴールも決まり、21-9とシカゴでの敗戦の雪辱を果たし、フランス入りしたのである。(続く)

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