第2201回 2024年夏季オリンピックの開催地(2) 2024年開催を待つパリ

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■1924年大会時も2大会が同時に決定

 7月11日にスイスのローザンヌで開催された国際オリンピック委員会(IOC)の臨時総会で2024年と2028年の夏季オリンピック・パラリンピックは現在2024年の開催に立候補しているパリと米国のロサンジェルスで開催することを決定した。
 オリンピックの肥大化と開催都市や開催国の財政に大きな負担を与えることから、立候補していた都市が続々と立候補から辞退する中でパリとロサンジェルスが2大会を開催する異例の決定となったが、2大会の開催地が同時に決まったのはこれが最初ではない。実はパリが前回オリンピックを開催した1924年大会と次の1928年大会も同時に決定している。1921年に1924年大会をパリで開催することと、1928年大会をオランダのアムステルダムで開催することを決定している。この時は1924年大会の開催地決定の投票において1位がパリ、2位がアムステルダムとなったことを受け、ピエール・クーベルタン会長が1928年のアムステルダム開催を決定している。なお、この時の投票で3位となったのがロサンジェルスであり、ロサンジェルスは1932年大会を開催している。
 最終的に2024年と2028年のどちらの大会をどちらの都市で開催するかは、両都市の交渉の末、最終的には9月にペルーのリマで開催される総会で承認されるわけであるが、近年オリンピック招致に失敗を続けてきたパリの招致メンバーは安堵感が漂う。

■充実したパリ並びに近郊のスポーツ設備

 パリの強みはこれまで多くのスポーツイベントを開催してきた実績と世界一の観光都市としての魅力である。1998年のサッカーワールドカップ時に建築されたスタッド・ド・フランスがメイン会場となる。スタッド・ド・フランスは2007年にはラグビーワールドカップのメイン会場にもなっており、世界で初めて世界三大スポーツイベント(オリンピック、サッカーワールドカップ、ラグビーワールドカップ)のメイン会場となる。
 このサンドニでは開閉会式と陸上競技が行われるが、ここを中心に競技場、スタジアムが展開される。パリ並びにその近郊にはスポーツ施設が整っており、それらをフル回転させる。1924年オリンピックのメイン会場であり、現在はラグビーのラシンパリが使用しているコロンブのイブ・デュ・マノワール競技場は改装してホッケー場となる。また全仏オープンの舞台であるローラン・ギャロスはテニス以外にボクシングも開催する。7人制ラグビーはラグビーのスタッド・フランセの本拠地のジャン・ブーアン競技場を使用する。バスケットボールはピエール・クーベルタン体育館で行われる。ベルシーにあるアコーホテルアリーナでは柔道、レスリングの舞台となる。広域開催となるサッカーはパリのパルク・デ・プランス以外にボルドー、リヨンなど9会場を使用する。

■国際展示場・観光地でオリンピックが開催

 また、観光都市であるパリは国際展示場を多数有しているコンベンション都市でもある。ルブルジェの国際展示場ではバレーボールが行われ、ポルト・ド・ベルサイユの国際展示場ではハンドボールと卓球が開催される。通常はコンサートなどに使用されるアリーナのゼニットでは重量挙げが行われる。
 さらにパリの誇る観光地もオリンピックの舞台となる。シャン・ド・マルスでビーチバレー、シャンゼリゼ通りでは自転車のロード競技、グランパレではテコンドーとフェンシングが行われる。エッフェル塔近くのセーヌ川では水泳のオープンウォーター、トライアスロンが行われる。パリから離れるが、ベルサイユ宮殿では馬術や近代十種が繰り広げられる。

■サンドニの再開発に合わせた選手村の建設

 そして新設の設備はサンドニを中心に建設される。水泳に関してはサンドニにオリンピックプールを建設する予定である。そして重要なのは選手村である。1998年のスタッド・ド・フランスで地域の活性化がなされたサンドニであるが、それをさらに推進するため、選手村の建設がサンドニ地域の再開発に合わせて行われる。このサンドニ地域の再開発には日程が決まっており、そのためにもパリは2024年大会の開催を熱望しているのである。(この項、終わり)

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