第2441回 2019年ラグビーワールドカップ展望 (8) フィジーに史上初の黒星

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■かろうじてスタッド・ド・フランスでの最少観客動員を免れる

 ようやくアルゼンチンに勝利し、春から続く連敗を5でストップさせたフランス、今年最後の試合は本拠地のスタッド・ド・フランスに戻り、11月24日にフィジーと対戦する。アルゼンチンに勝利したリールのピエール・モーロワ競技場はこの週は本連載第2425回から第2428回で紹介したデビスカップの決勝戦がこの週には行われている。デビスカップチームに力水をつけた形になった。
 さて、この試合、招待券2万枚を含む4万枚のチケットが前日までに発券されている。関係者はこれまでのフランス代表のスタッド・ド・フランスでの最少観客数を更新するのではないかと関係者は肝を冷やしていた。これまでの最少観客数は2012年11月24日のサモア戦の3万6500人である。同じパシフィック地域の対戦相手とあって心配されたが、前週のアルゼンチン戦の勝利の効果か、4万2000人の観客がスタッド・ド・フランスに集まった。

■これまで9戦全勝のフィジー戦

 世界ランキングではフランスが8位、フィジーは9位と拮抗しているが、これまでにフランスはフィジーと9戦して全勝している。そのうちの4試合はワールドカップでの対戦である。この11月のフィジーの戦いであるが、スコットランドに敗れ、ウルグアイに大勝している。フィジーはほとんどの選手が欧州のクラブに所属しており、この日も先発15人中8人がフランス、5人がイングランド、1人がスコットランドのクラブに所属し、フィジーのクラブの所属選手は1人だけである。

■注目のリザーブ、20歳のプロップのダンバ・バンバ

 フランスのメンバーはFWのフロントローは左からジェファーソン・ポワロ、ギエーム・ギラド、ラバ・スリマニ、ロックはセバスチャン・バーマイナとヨアン・マエストリ、フランカーは左にベンセラス・ローレ、右にアルツール・イトゥリア、ナンバー8にルイ・ピカモール、ハーフ団はスクラムハーフにバティスト・サラン、スタンドオフはカミーユ・ロペス、スリークォーターバックは左からヨアン・ウジェ、ガエル・フィクー、マチュー・バスタロー、テディ・トマ、フルバックはバンジャマン・ファルというメンバーでアルゼンチン戦の勝利で余裕ができたのか、メンバーを多少入れ替えている。
 そして注目すべきは8人のリザーブ選手である。代表出場歴が二桁の選手はおらず、未出場の選手が2人、その中にはプロップのダンバ・バンバがいる。20歳のバンバは少年時代にフランスの年代別のチャンピオンになったことから柔道ファンの多い日本の皆様の中でご存じの方は少なくないであろう。ちょうど柔道のチャンピオンになった直後に、たまたま楕円球と知り合う。そしてその2年後には強豪ブリーブの一員となったのである。プロでのデビュー戦は2017年12月のモンペリエ戦、今年は20歳以下のワールドカップ優勝の原動力となり、プロで初めて試合に出場して1年もたたない185センチ、122キロのプロップは代表に招集されたのである。

■驚異のトライゲッター、フッカーのギエーム・ギラドの2トライも実らず、逆転負け

 試合はフランスが支配したものの、思うようにスコアできなかった。先制点はフィジー、20分にボルドー・ベグレに所属しているセンターのセミ・ラドラドラがフランスの選手のタックルを次々にかわしてポストの下にトライし、7-0とする。フランスも25分にフィジーゴール前で形成したモールを押し込んでギラドがトライ、ゴールも決まって同点に追いつく。しかし、30分にはフィジーの誇るバックスラインの華麗なプレーでトライを奪われる。隅へのトライであったため、5-12となる。フランスが意地を見せたのは前半終了間際であった。相手の反則からペナルティキックを相手ゴール前のタッチに蹴りこむ。このラインアウトからモールを組んで最後はギラドがトライ、この日2本目、そして11月のテストマッチ3試合目にして4本目のトライを決め、フッカーながらトライゲッターとなった。
 しかし、フランスの得点はここまで、後半に入ってから44分にペナルティゴールを決められて逆転、59分、82分にも反則からペナルティゴールを決められて、14-21とフィジーに初黒星となる。52分にはバンバが史上2番目の若さで代表にデビューするが、インパクトのある動きを見せることはできなかったのである。(続く)

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