第2468回 若いメンバーでアイルランドに大敗(2) 自陣に釘づけにされたフランス

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■相性の悪いアイルランドに対する楽観論

 久しぶりに快勝したスコットランド戦と同じ先発メンバー(正確には左右のロックを入れ替え)でフランスはアイルランドに臨む。アイルランドに対し、フランスはこのところ非常に相性が悪い。1984年から1999年まで1引き分けをはさみ16連勝という時期もあり、21世紀に入っても2000年代はフランスが圧倒していた。しかし、2011年のワールドカップ以降は逆にアイルランドがフランスに対して相性がよく、2012年、2013年の6か国対抗で引き分けてからは、2015年ワールドカップを含み、5勝1敗という成績を残している。ただし、今年の6か国対抗でのパフォーマンスを考えれば、フランスが勝利するのではないか、という楽観的な空気が漂った。

■固定しなかったハーフ団に光明

 フランスのファンが楽観的になった理由は若いハーフ団の存在である。近年のフランスはハーフ団は豊富な人材を誇るものの、なかなか固定しないことが課題であった。アイルランド戦を例にとると、過去7回の対戦において、アイルランドはすべてコナー・マレーとジョナサン・セクストンが組んで先発しているが、対するフランスは毎回違うメンバーがハーフ団を組んでいる。モルガン・パラ-フランソワ・トラン・デュックから始まり、パラ-フレデリック・ミシャラク、マキシム・マシュノー-レミ・タレス、ロニー・ココット-カミーユ・ロペス、セバスチャン・ティル・ボルド-ミシャラク、セバスチャン・ベジー-ジュール・プリソン、昨年はバティスト・サラン-ロペスである。年齢的にも若い選手がいるが定着しなかった。
 今年もフランスは新メンバーとなる22歳のアントワン・デュポンと19歳のロマン・エンタマックである。初めてこの2人がフランス代表で組んだのは、第2節のイングランド戦の終盤のことであった。8-44という大敗であったが、この2人が入ってからはフランスは試合を立て直し、希望を感じさせた。そして2人が先発として初めてコンビを組んだスコットランド戦はすでに紹介したとおりである。

■まったく攻撃できなかった前半

 そのような期待はあったものの、結果は14-26というスコアでの敗戦となる。スコアそのものを見れば、ウェールズ戦の大逆転負け、イングランド戦での大差での敗戦に比べれば悲観すべきものではないと思われる方も少なくないが、内容的にはこれらの試合以下のものであり、試合後には厳しい意見が飛び交った。
 試合はフランスのキックオフで始まったが、ボールを獲得したアイルランドはモールで前進を続ける。3分にはアイルランドはモールサイドを突いてフッカーで主将のロニー・ベストが右隅にトライ、難しい角度からセクストンがゴールを決めて7点を先行する。16分にもアイルランドがゴールラインを越えてボールを持ち込んだが、ビデオ判定の結果、ノートライとなり、フランスは救われる。しかし、その後もフランスは自陣ゴール前に釘づけにされる。フランスは反則をしてアイルランドの攻撃を止めるしかない。30分に差し掛かるころ、フランスはペナルティゴールのチャンスを何回も与えられるが、トライを狙い続ける。逆転優勝に向けてトライを重ねてボーナスポイントがほしいのである。30分にはついにセクストンが抜け出してトライをあげ、自らゴールも決めて14-0、さらに37分にはジャック・コナンのトライで19-0と差を広げハーフタイムを迎える。
 前半のスタッツであるが、フランスのボール支配率は23パーセント、そしてフランス陣内で試合が行われた時間はなんと89パーセント、フランスの22メートルライン内での試合時間は4分37秒、逆にアイルランドのそれはわずか2秒であった。さらにアイルランドの選手のうち3人は1回もタックルせずに済んだのである。

■ボーナスポイントを獲得してスローダウンしたアイルランドから終盤に2トライ

 これだけの一方的な展開は後半も続いた。56分には前半は1回もタックルをしなかったアイルランドのセンターのキース・アールズが、アイルランド代表史上歴代2位となる30トライ目をあげる。そして4トライを奪ったアイルランドはボーナスポイントも獲得し、ウェールズとの最終戦での逆転優勝の資格を得る。
 フランスは試合終盤にモティベーションを失ったアイルランドから2トライをあげて、14-26というスコアにはなったが、厳しい結果となったのである。(この項、終わり)

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