第2560回 米国から5トライを奪い勝利(1) 反省材料の多いアルゼンチン戦

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、このたびの台風15号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■反則数でアルゼンチンの3倍を記録したフランス

 ワールドカップの初戦でアルゼンチンに2点差で勝利したフランス、戦前の予想はフランス不利であったから、この勝ち点4は貴重である。しかしながら試合内容、采配に関しては不満の残るものである。
 まず、なんといっても反則の多さである。反則数はアルゼンチンの5に対してフランスはその3倍の15である。アルゼンチンがペナルティゴールを狙ったのが5回で3回成功にとどまったこともあり、フランスが得点で上回った。さらにフランスはラインアウト、スクラムというセットピースでの成功率でアルゼンチンを大きく下回り、反則も目立ち、その結果として後半はアルゼンチンにボール支配率、陣地で圧倒された。

■終了3分前のペナルティゴールのキッカーの選択

 そして、試合終了の3分前にはゴールポストから30メートル付近でアルゼンチンが反則する。2点リードであり、これを5点差に広げればアルゼンチンはトライをあげないと引き分け以上の成績が残せなくなる。残り時間を考えればフランスは確実にペナルティゴールを決めて5点差としたい。この日それまで4本のキックをすべて成功させていたロマン・エンタマックに託したが、失敗してしまう。結果的にはその後にアルゼンチンがハーフウエーライン付近からペナルティゴールを狙って失敗し、フランスが逃げ切ったが、このエンタマックのペナルティゴール失敗はもしアルゼンチンに逆転されていれば後世まで語り継がれる悔恨となった。実はこの時点でフィールド上にはカミーユ・ロペス、マキシム・マシュノーという代表チームでキッカーを務めてきた選手が2人フィールド上にいた。特にマシュノーは11年前に学生選抜として日本遠征をしており、日本を熟知しているという理由で選出されており、マシュノーをキッカーに任命しなかった選択ミスは否定できない。

■試合終盤のピンチを救った交代出場のベテラン選手たち

 これらの多くのミスを救ったのが、オフロードパスの多用とタックルの精度である。タックルを受けながらもリスクを恐れずパスで連続攻撃、そしてアルゼンチンに試合を支配されながら約9割の成功率のタックルを継続したことがアルゼンチンに大量得点を許さなかった。さらに試合終盤に加わった経験値の豊富なベテラン選手の存在も忘れてはならない。ナンバーエイトとして出場早々ボールを持って突進したルイ・ピカモール、最後のラックでボールを奪って試合終了に持ち込んだのもマシュノーであった。前半に積極的なランを見せたウイングのダミアン・プノーに代わって入ったのはスタンドオフのロペスを入れ、エンタマックをセンターにスライドさせる布陣を取った。ウイングでベンチ入りしていたアリベルティ・ラカではなく、158得点とチームで最多得点を記録しているロペスを送り込んだことが功を奏した。ロペスはファーストプレーでDGを決める。これらのベテラン勢の活躍が守勢一方の後半をしのぐ力となったのである。

■九州で米国、トンガと中3日で連戦

 東京でのアルゼンチン戦を終え、フランスはここで長いインターバルを迎え、10月2日に福岡で米国、6日に熊本でトンガと九州に移動して対戦する。4日間で2試合というタイトなスケジュールであるが、前後のアルゼンチン(9月21日、東京)、イングランド(10月12日、横浜)と比べれば力の落ちる相手である。アルゼンチン戦の収穫と反省を受けてこの2試合にどう臨むのかは首脳陣の腕の見せ所である。31人のメンバーの中にはこの連戦に向けて選出された選手もいる。すなわち、アルゼンチン戦とイングランド戦に主力がエネルギーを集中できるような選手起用をジャック・ブルネル監督は構想し、メンバーを選んだ。しかし、勝利はしたものの、課題を露呈したアルゼンチン戦からどのようにチームを修正していくかということも考えなくてはならないのである。(続く)

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