第2568回 準々決勝でウェールズと対戦(2) 劣勢のフランスが勝利した因縁の2試合

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、このたびの台風15号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■プールCを首位通過したウェールズ

 準々決勝の相手のウェールズは、グループD首位のウェールズである。今年の6か国対抗で全勝優勝し、8月にはニュージーランドをかわして世界ランキング1位になったこともある。今大会はティア1のチームの中では最後に姿を現し、ジョージアに43-14と勝利し、フィジーに30-21と逆転勝ちした豪州と対戦する。首位突破がかかるとみられたこの試合、ウェールズは開始1分も経たないうちにダン・ビガーのドロップゴールで先制し、29-25と振り切って勝利した。第3戦はフィジーに29-17、最終戦はウルグアイに35-13と連勝してグループ首位の座を保った。

■前半早い時間帯に得点を重ねる先行逃げ切り型のウェールズ

 スコアだけ見ると得点に比べて失点が多いように見えるが、特徴としては前半、特に前半の前半で試合を決めてしまい、その後はペースダウンしつつも勝利するというパターンである。ウェールズは総得点136、総失点69、得失点差+67、豪州は総得点136、総失点68、得失点差+68であり、隠れた死のプールと言われたプールDにおいて豪州もスコアの上では似ている。しかし、試合展開は大きく異なり、豪州はフィジー戦ではリードされて折り返し、ジョージア戦も前半20分過ぎまで得点をあげることができなかった。そして4点差という僅差に終わった直接対決も開始1分のドロップゴールに始まり、前半にラッシュをかけ、前半のスコアは23-8と15点差であった。予選プールのティア1同士の対戦でハーフタイムの時点での15点差はアイルランド-スコットランド、南アフリカ-イタリアの16点差に次ぐ数字であるが、残り2試合はいずれも大差の試合となっており、ウェールズの戦術が理解できる。

■ウェールズにとって痛恨の敗戦となった2011年大会準決勝

 ところが、全勝優勝した今年の6か国対抗では大きく違った。ハーフタイムの時点でリードしていたのは5試合中3試合しかなかった。特に初戦のフランス戦は0-16で前半を折り返し、そこから大逆転で24-19と勝利し、グランドスラムへと突進したのである。
 フランスとウェールズの対戦というと読者の皆様は本連載第第1314回で紹介した2011年大会の準決勝を思い出されるであろう。この試合は両チームのワールドカップにおけるこれまでで唯一の対戦である。ウェールズが一方的に攻め続けるが、1トライにとどまり、キックが入らない。守勢一方のフランスは3ペナルティゴールを決めて9-8と逃げ切っている。

■20分間のロスタイムでフランスが勝利した2年前の6か国対抗

 その後は6か国対抗で対戦しているが、フランスは1勝7敗と大きく負け越している。その1勝は2017年のスタッド・ド・フランスでの試合、その年の6か国対抗の最終戦で、フランスは勝利すれば、今回のワールドカップの組み合わせで第2シードに入ることができるという重要な意味のある戦いであった。ウェールズリードのまま、時計は80分を越え、ラストプレーとなる。ここからフランスは攻め続ける。フランスのプロップの選手が負傷し、すでに交代退場した選手がグラウンドに戻る。スクラムのスペシャリストと言われる選手がグラウンドに戻り、スクラムで優位に立ったフランスはウェールズのペナルティを誘い続ける。80分を越えてから実に20分間フランスの攻撃が続き、最後にトライをあげて逆転勝利、交代を認めた医師がフランス人であったことから疑惑のゲームとなった。
 このようにフランスの直近の2勝はいずれも劣勢ながらスコアだけが上回っているが、2011年の勝利はフランスのワールドカップ準優勝、2017年はワールドカップの第2シード獲得と、フランスは大きな成果を獲得した。一方、8年前を振り返ってみれば、フランスのフォワードは主将のティエリー・デュソトワール以外の7人が30代とベテランぞろい、一方のウェールズは若手中心で、フランスの老獪さに決勝進出を阻まれた。ウェールズは4年後、8年後の優勝候補と言われたが、機が熟す前に代表を去った選手が多く、2015年大会はベスト8どまりである。しかしファンは8年前、2年前の悔しさを忘れていないのである。(続く)

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