第2928回 12年ぶりにオールブラックスを破る(7) ニュージーランド相手の史上最多得点差で勝利

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■残り20分で2点差に追い上げられたフランス

 前半はニュージーランドをノートライに押さえ、24-6とリードして後半を迎えたフランスであるが、後半に入ってニュージーランドの猛追撃を受ける。後半の20分間が経過するまでにニュージーランドは3トライ(2ゴール)をあげ、わずかペナルティゴール1本のフランスに25-27と2点差に迫る。
 フランスが逆転を喫したのは本連載の読者の皆様であれば、昨年のオータムネーションズカップの決勝のイングランド戦、さらには一昨年の6か国対抗の開幕戦のウェールズ戦が記憶に新しいであろう。ウェールズ戦は前半を16-0とリードしながら、最終的には19-24と逆転されている。この試合も後半は完全にニュージーランドのリズムであり、ニュージーランドの得点力を考えれば、大量失点の危険性も十分に想定された。

■試合の流れを決定づけたロマン・エンタマックのロングゲイン

 しかし、2点差に追い上げられてからの10分間のフランスの集中力は見事であった。2点差になった時点でフランスは4人の選手を交代させていた。フロントローの3人を入れ替え、ジャン・バティスト・グロ、ガエタン・バルロ、ダンバ・バンバとなり、ロックもポール・ウィレムスがロマン・タオフィフェヌアに交代し、消耗度の高いポジションにフレッシュな選手を入れている。全体的に運動量が落ちるところで勝敗を決するのはフレッシュな力か、目の覚めるような個人技である。
 2点差になった直後にフランスはナンバーエイトをグレゴリー・アルドリットから新人のチボー・フラマンに代える。そしてそこでロマン・エンタマックがビッグプレーを見せる。フランスはオールブラックスに攻め込まれ、逆転のトライを奪われるのではないかという窮地に陥った。しかし、フランスはここで奪ったボールをエンタマックが自陣ゴールラインからボールを持って次々とニュージーランドの選手を抜き去り、ビッグゲインし、ニュージーランドのゴール前まで迫る。最後はボキが数的優位になったがトライはならなかった。しかし、フランスの攻撃を止めるためにニュージーランドのアーディー・サベアがロックの中で反則を犯す。フランスはペナルティを得て、メリバン・ジャミネが確実に決めて、30-25と5点差とする。点差を広げたのはわずか3点であり、トライとゴールで逆転される点差に過ぎないが、このエンタマックのプレーはフランスの士気を高め、ニュージーランドの意気を消沈させるに十分であった。エンタマックは5点差に広げた直後に万雷の拍手とともにベンチに下がり、マチュー・ジャリベールがスタンドオフに入る。

■試合を決定づけたダミアン・プノーのトライ

 エンタマックはピッチから去ったが、エンタマックの与えた衝撃は残っていた。68分、ダンティがタックルを受けてボールを失い、ニュージーランドはバックスが広く展開して逆転を狙う。そこでダミアン・プノーがパスをインターセプト、そのまま25メートル走り、フランスにとって後半初めてのトライをあげる。ジャミネがゴールを決めて、フランスは37-25と12点差をつけて終盤を迎える。勢いに乗ったフランスは相手ボールのスクラムでボールを奪うなど、オールブラックスを圧倒する。
 終了間際にはペナルティをジャミネが決めて、最終スコアは40-25となり、フランスは12年ぶりにオールブラックスに勝利した。

■歴史的な勝利で秋のテストマッチを全勝で締めくくったフランス

 フランスにとって、15点差での勝利は史上最多得点差での勝利となる。また、フランス国内での勝利は2000年のマルセイユでの勝利以来、さらにパリならびにその近郊での勝利は1973年以来、48年ぶりという歴史的な勝利となった。
 一方、オールブラックスにとっては衝撃的な敗戦となった。今回の欧州遠征ではフランス相手だけではなくアイルランドにも敗れている。オールブラックスが欧州遠征で2配したのは1930年代以来のことである。
 秋のテストマッチでフランスは3勝した。他の主要国を見るとイングランドとアイルランドも3戦全勝であるが、南半球勢は振るわず、ニュージーランドが3勝2敗、南アフリカが2勝1敗、豪州は日本に勝利しただけで、欧州勢に3連敗となった。
 2年後の自国開催のラグビーワールドカップが楽しみである。(この項、終わり)

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