第3022回 ラロッシェル、欧州チャンピオンに(1) 初タイトルを目指すラロッシェル

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ロシアのウクライナ侵攻によってスタッド・ド・フランスで行われたチャンピオンズリーグ決勝

 ロシアのウクライナ侵攻により、サッカーの世界でも様々な影響が出た。その中で今季のチャンピオンズリーグの決勝の開催地がロシアのサンクトペテルブルクからスタッド・ド・フランスに変更となった。5月28日に行われた試合ではスペインのレアル・マドリッドがイングランドのリバプールを下し、14回目の優勝を飾った。スタッド・ド・フランスで決勝が行われるのはこれが3回目であるが、2000年はレアル・マドリッド、2006年はバルセロナ、そして今年はレアル・マドリッドといずれもスペイン勢が優勝している。

■同日にマルセイユで行われたラグビーの欧州チャンピオンズカップ決勝

 フランスのファンにとってはスタッド・ド・フランスでチャンピオンズリーグの決勝は思わぬプレゼントとなったが、この日にはフランス国内で欧州ナンバーワンを決める決勝戦があった。それがラグビーの欧州チャンピオンズカップである。この決勝がマルセイユのベロドローム競技場で行われた。サッカーのチャンピオンズリーグ同様、決勝は大規模なスタジアムで行われるが、フランスでの決勝戦はボルドー(レスキュール)、パリ(パルク・デ・プランス)、サンドニ(スタッド・ド・フランス)、リヨン(グルーパマ)で行われたことがあり、サッカーの都、マルセイユはフランス国内5番目の開催地となった。

■フランス勢が残してきた数々の栄光

 ラグビーのチャンピオンズカップはサッカーのチャンピオンズリーグとは異なり、1995-96シーズンが第1回という若い大会である。そして第1回大会でトゥールーズが優勝したのを皮切りに過去26回のうち、フランス勢は9回優勝を果たしている。決勝戦にフランス勢が出場しなかったのはわずか7回である。そのようにフランス勢が圧倒的な戦績を残してきたが、欧州の頂点に立ったのはトゥールーズ(5回)、トゥーロン(3回)、ブリーブ(1回)チームだけである。準優勝が最高成績というフランスのチームはクレルモン(3回)、ラシン92(3回)、ビアリッツ(2回)、スタッド・フランセ(2回)、ペルピニャン(1回)、コロミエ(1回)、ラロッシェル(1回)とバラエティに富む。優勝経験チームのうち、トゥールーズは2回、ブリーブは1回、決勝で敗れている。

■昨年の決勝でトゥールーズに敗れたラロッシェル

 これらのシルバーメダルコレクターのうち、最も新しい悔しさを持っているのがラロッシェルである。ラロッシェルはイングランドのトゥイッケナムで行われた昨年の決勝ではトゥールーズに17-22と惜敗している。
 ラロッシェルはフランス南西部の太平洋に面した港町である。フィリップ・マリ・ピカールの絵画で有名であるが、フランスでラグビーの盛んな地域というわけではない。しかし、クラブの創設は19世紀とフランスのクラブの中でも古い歴史を誇る。このラロッシェルがトップレベルで戦うようになったのは1990年代から、すなわちラグビーのプロ化が容認されたのとほぼ同じタイミングである。クラブのOBで、その後はコピー機の会社で働いていたバンサン・メルランがクラブの会長となったのが1991年、それ以降のプロ化に対応し、プロ化当初は1部でスタートした。21世紀になってリーグカップを2回制したものの、2部に陥落してしまう。2季のみ1部に復帰したが、2部暮らしが続き、ようやく1部に復帰、定着したのは2014年のことであった。
 1部復帰3年目にはレギュラーシーズンで1位となる。クラブ史上初めて、プレーオフに進出する。ベロドロームで行われた準決勝、6万3000人の大観衆の前でトゥーロンと対戦、ラストプレーでドロップゴールを決められ、15-18と惜敗したが、その後は安定した成績を残してきたのである。国内リーグではそれ以降、プレーオフを逃したのは1回だけ、そして欧州チャンピオンズカップの常連となった。
 昨季は欧州チャンピオンズカップで決勝に進出するが、上述の通りトゥールーズに敗れている。そして国内リーグではレギュラーシーズンで2位となり、プレーオフも勝ち進んで6月に行われた決勝に進出したが、ここでもまたトゥールーズに敗れてしまった。国内外でタイトルのなかったラロッシェルに初タイトル獲得の時がやってきたのである。(続く)

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