第2981回 12年ぶりのグランドスラム達成 (4) イングランドに完勝、10回目の偉業達成

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■主力を複数欠くイングランド

 イングランドはすでに2敗しているとはいえ、直近のワールドカップでは北半球勢で最高の準優勝、2020年秋に行われたオータムネーションズカップで優勝している。6年前の3月19日、イングランドはこのスタッド・ド・フランスに勝利してグランドスラムを達成している。現在はマーカス・スミス、トム・カーリーなどリーダーシップをとることのできる若手選手がそろっている。優勝争いから脱落したアイルランド戦では1人少ないながら、終盤まで互角の戦い、フランスにとっては脅威である。ただ、これまでの試合で主将を務めてきたカーリー、今年の大会では戦列を離れているオーウェン・ファレル、アイルランド戦で退場となったチャーリー・ユールズを欠く。エディ・ジョーンズ監督はコートリー・ローズをゲームキャプテンとし、ジョージ・フォードをリザーブメンバーとする。

■ガバン・ビリエールの好走からガエル・フィクーがトライ

 試合は勝負に徹する両チームの意思を表すがごとく、固い立ち上がりとなり、両チームのキックが目立つ展開となった。先手を取ったのはフランス、ダミアン・プノー、ガエル・フィクーというバックス陣がランとパスで前進する。この試合2つ目のスクラムでフランスはイングランドのコラプシングを誘い、8分にメルビン・ジャミネが先制のペナルティゴールを決める。また先制トライもフランスであった。この日ウイングに入ったガバン・ビリエールが右サイドを突進、何度もタッチに押し出されそうなところをうまくいなす。最後はロマン・エンタマックからのパスを受けたフィクーが右隅にトライ、8-0とする。アイルランド戦ではペナルティゴールを重ねたイングランドは20分にフランスのノットロールアウエーの反則からスミスがペナルティゴール、3点を返す。その後両チームとも3点ずつを追加して前半の残り時間も少なくなる。優位に試合を進めるフランスは36分に自陣のスクラムでパネルティを得る。今大会好調のジャミネが50メートルを超えるショットを試みるが失敗する。フランスは残り時間も攻め続け。前半終了間際にはエンタマックがボールを持って相手ディフェンスを交わし、ゴールライン寸前に迫る。ラックになり、ボールを拾ったフランソワ・クロがトライ、ジャミネは時間をかけてコンバートキックを成功、18-6として前半を折り返した。

■追撃するイングランド、試合を決めた主将アントワン・デュポンのトライ

 12点差をつけたフランスであるが、後半に入ってイングランドがこの試合初めてのトライをあげる。ペナルティキックからのラインアウト、センターのジョー・マーチャントが突進し、スミスがつないで最後はフレディ・スチュワートがトライ、スミスの右隅からのゴールも決まって5点差に迫る。フランスは60分になる前に選手交代を積極的に行う。 60分に試合を決めるトライが決まった。フランスはスピードにあふれるパス回しでイングランドの守備陣を翻弄、最後は主将のアントワン・デュポンが愛でのディフェンスを振り切ってインゴールに飛び込んだ。ジャミネのコンバートも決まり、25-13と再び12点差となる。

■12年ぶり10回目のグランドスラム

 イングランドは選手交代のタイミングが遅かったか、60分過ぎから次々と選手を入れ替え、インパクトプレーヤを投入したが、得点をあげることができない。フランスはタックルの本数、タックルの成功率でイングランドを上回り、イングランドの得点を許さない。試合終盤にフランスはペナルティを得てもスクラムを選択し、時計の針をうまく回していく。
 フランスは25-13というスコアで5戦全勝、4トライ以上をあげたイタリア戦、スコットランド戦でボーナスポイントを獲得するとともに、全勝優勝のボーナスポイントを加えて勝ち点25として、勝ち点21のアイルランドを押さえて12年ぶりの優勝、史上10回目のグランドスラムを達成したのである。(この項、終わり)

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