第2980回 12年ぶりにグランドスラム達成(3) 優勝するためには勝利が必要となったフランス

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■4トライ以上での勝利を目指すアイルランド

 フランスとの直接対決では惜敗したが、逆転優勝を狙うアイルランド、最終戦はスコットランドをダブリンに迎える。スコットランドは2017年以降はアイルランドは勝利しておらず、ダブリンでの勝利は2010年が最後である。アイルランドの優位は明白であるが、アイルランドはボーナスポイントとなる4トライをあげて勝利したい。スタンドオフにジョナサン・セクストンを先発させ、スクラムハーフにはジャミソン・ギブソン・パークを起用する。アイルランドはスクラムハーフのコナー・マレー、スコットランドはスタンドオフのフィン・ラッセルがリザーブとなり、終盤の展開が楽しみである。
 アイルランドは17分にゴール前の5メートルラインからのラインアウトからモールを押し込んでフッカーのダン・シーハンが先制トライをあげた。そして28分にはプロップのキアン・ヒーリーが2本目のトライ、80分で4トライという目標からすれば、順調な足取りである。スコットランドも1本トライを返し、アイルランドは前半終了間際にはスコットランドのゴールラインに迫ったが、ここはトライには至らず、14-5で前半を終える。

■終了間際に執念の4トライ目を決めたアイルランド

 後半に入り、ボーナスポイントの欲しいアイルランドはペナルティキックを得てもゴールを狙わずにひたすらタッチに蹴りだし、ラインアウトからモールで押し込むか、バックスに展開する。その愚直な攻撃が実ったのは60分、ジョシュ・ファンデルフリヤーがトライをあげる。2本目のトライから実に32分経ってからのトライであった。スコットランドはラッセル、アイルランドはマレーを終盤に投入し、ゲームをリフレッシュさせる。なんとか4本目のトライが欲しいアイルランドは控えのスタンドオフのジョイ・カーベリーも投入する。このまま終わるかと思われたが、スコットランドは78分にインテンショナルノックオンによりシンビンで1人少なくなってしまう。アイルランドはジェームズ・ロウが密集のサイドを走り抜け、マレーにボールを返す。マレーが4本目のトライを決め、26-5と勝利したアイルランドは英国四協会相手に全勝するトリプルクラウンを獲得した。そしてアイルランドは勝ち点を21まで伸ばし、暫定首位となり、フランスの結果を待つことになったのである。

■最終戦の前に優勝が決まった12年前のグランドスラム

 勝ち点18のフランスがアイルランドを逆転するためには勝利して勝ち点4を獲得しなくてはならない(引き分けた場合は勝ち点2であり、4トライ以上のトライをあげてボーナスポイントを獲得すれば、勝ち点21で並ぶが、得失点差の比較となり、アイルランドが勝る)。
 実は12年前にフランスが全勝した時も最終戦の顔合わせ、試合順は今年と全く同じであった。この時もアイルランドが3勝1敗で4勝のフランスを追う展開であったが、最終節の第2試合でアイルランドは試合終盤にスコットランドに決勝点となるペナルティゴールを決められ、20-23と敗れ、フランスは試合前に優勝を決めている。そしてフランスはノートライながらイングランドを12-10と破り、優勝をグランドスラムで飾っている。

■精神的な圧力の中で最終戦を迎えるフランス

 スタッド・ド・フランスには栄光を目指すフィフティーンがラ・マルセイエーズを合唱する。その先発メンバーは、FW第一列はシリーユ・バイユ、ジュリアン・マルシャン、ウイニ・アトニオ、第二列はカメロン・ボキとポール・ウィレムス、フランカーはフランソワ・クロとアントニー・ジェロンチ、ナンバーエイトはグレゴリー・アルドリット、スクラムハーフはアントワン・デュポン、スタンドオフはロマン・エンタマック、スリークォータバックは左からガバン・ビリエール、ジョナタン・ダンティ、ガエル・フィクー、ダミアン・プノー、フルバックはメリバン・ジャミネである。プノーが負傷から戻ってきた以外はウェールズ戦と同じメンバー、大会全体を通して固定してきたメンバーである。このメンバーは12年前とは全く違う精神的な圧力の中で最終戦を迎えるのである。(続く)

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