第3038回 ラグビーフランス代表、4回目の訪日(8) 新戦力が見いだせなかった日本遠征

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■多数の代表未経験者が日本に遠征

 38年ぶりの日本とのテストマッチのための遠征は、苦戦しながら連勝することができ、昨年からの連勝を10に伸ばした。
 経験の少ないメンバーでありながら、テストマッチでの勝利を確実に重ねたことがこのチームの地力であると言えよう。一方、昨年の豪州遠征で誕生したメルバン・ジャミネのような新戦力が見いだせなかったことも事実である。
 今回のメンバーはTOP14の決勝に残ったカストルとモンペリエの選手、シーズンで2000分以上出場した選手を招集せず、経験の少ない選手を多数選出し、42人の選手団のうち、19人が代表出場経験なしという陣容であった。また、従来は選出されることの少ない2部のチームからも4人が選出された。

■第2テストマッチで精彩を欠いたトマ・ジョルメス

 しかし、これらの選手の中で代表デビューを日本の地で果たしたのはトマ・ジョルメス、ヨアン・タンガ、トマ・ラボー、マックス・スプリングのわずか4人であった。
 ロックのジョルメスは第1テストマッチに先発して代表デビューした。ジョルメスは今年の3月に6か国対抗の終盤に代表に初招集されたが、所属するボルドー・ベグルの試合で負傷してしまったため、代表デビューが遅くなった。第1テストマッチではジョルメスは後半にラボーにポジションを譲り、ラボーも初めての代表の試合を経験した。第2テストマッチもジョルメスが先発し、後半の序盤にラボーが交代出場している。ジョルメスは日本の長身ロックに対応し、第1テストマッチはフォワード戦ではなかなかの動きを見せた。ところが第2テストマッチでは精彩を欠き、タックルをしばしば外され、インターナショナルレベルではないという評価が下された。

■反則の多いヨアン・タンガ、ピンチを招いたマックス・スプリング

 ナンバーエイトのタンガも2試合とも先発し、第1テストマッチは試合の終盤でゲームから退いたが、第2テストマッチはフル出場した。タンガは積極的にプレーし、巨漢のそろう日本の第二列、第三列の攻撃をタックルでよく仕留めた。一方、フォワード戦における反則が多く、ペナルティゴールによる失点につながったことが複数回あり、苦戦の原因となった。日本以上に好キッカーのそろう欧州相手の試合での起用については意見の分かれるところであろう。
 第2テストマッチに先発し、フル出場したのがスプリングである。第2テストマッチは第1テストマッチと打って変わってキッキングゲームとなった。第1テストマッチまでフルバックを務めていたジャミネが出場しないということで日本はキッキングゲームにゲームプランを変えたのであろう。キック処理はまずまずであったが、キックの飛距離に難があり、陣地を挽回するに至らなかった。そして、終盤の72分、自陣22メートルライン内でノックオンを犯し、日本ボールのスクラム、そこからテビタ・タタフの幻のトライとなる。スプリングのミスさえなければ、フランスは楽に試合をクロージングすることができたであろう。

■1週間だけ史上初の世界ランキング1位となったフランス

 また16か月ぶりに復帰した主将のシャルル・オリボンも精彩を欠いた。フランスのラグビーファンは同時期にフランス国内で行われたラグビーワールドカップのアフリカ予選の方に注目した。皮肉なことに、日本遠征に参加しなかった選手と、今回の選手には大きな力の差があることが認識できたことが最大の収穫かもしれない。
 さて、フランスが日本に苦戦しながら勝利した7月9日は欧州勢が南半球勢を次々と倒した。アイルランドがニュージーランドに、イングランドが豪州に、ウェールズが南アフリカに、スコットランドがアルゼンチンにそれぞれ勝利した。この結果、フランスは史上初めて世界ランキングで1位になった。2位はアイルランドであり、上位2か国が欧州勢というのも史上初のことである。7月16日にアイルランドがニュージーランドに勝利して、世界ランキング1位となり、フランスの世界ランキング1位は1週間だけであった。
 上位国の力関係が拮抗しており、ラグビーワールドカップが待ち遠しい。(この項、終わり)

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