第75回 ウルグアイと引き分け、瀬戸際に(2) 激しい攻防の末、スコアレスドローに

■ウルグアイ戦の先発メンバーはセネガル戦とほぼ同じ

 前回の連載で紹介したウルグアイ戦の先発メンバーをセネガル戦と比較するとユーリ・ジョルカエフに代えてジョアン・ミクーを起用しただけであり、4-2-3-1システムを維持し、ゲームメーカーを代えただけにとどまった。セネガル戦では不調であったが、捲土重来を期すユーリ・ジョルカエフではなく、パス中心のミクーをチームの中核に据えた。またセネガルの早い攻めについていけなかったDF陣についてもストッパーにフィリップ・クリスタンバル、ミカエル・シルベストルを起用するわけでもなかった。

■激しい攻防と2つのアクシデント

 3時間前に終了したデンマーク-セネガル戦が引き分けに終わったため、フランスとウルグアイの試合は「負ければ欧米勢として初めてグループリーグで敗退する」ということになった。両チームとも緊張感があふれる中で、フランスのキックオフで試合は始まった。試合開始早々から両チームとも敗れた初戦とは全く激しい動きを見せた。試合開始からフランスは意欲的に攻めあがり、ウルグアイ陣内で試合を進める。
 しかし、この激しさが裏目に出たのがフランスであった。そしてその激しさがフランスへのアクシデントにつながる。16分にベテランストッパーのフランク・ルブッフが負傷したため、ピッチを去る。そしてルブッフに代わってピッチに入ったのはクリスタンバルでもなくシルベストルでもなかった。サイドバックのバンサン・カンデラがピッチに入り、リリアン・テュラムが右サイドからストッパーへポジションを代える。2人の控えストッパーの練習試合での状態もまずまずであり、サイドからのテュラムの攻撃力を活かすためにもカンデラを起用するよりも控えのストッパーを投入すべきであると思われたが、フランスベンチはその9分後に起こる2つ目のアクシデントを予期していたのであろうか。
 2つ目のアクシデントは25分、ウルグアイのダリオ・ロドリゲスへの危険なタックルでティエリー・アンリがレッドカードを受ける。確かに厳しい判定であり、これよりも悪質なタックルが他にあったことも事実である。しかしながら、メキシコ人の主審のラモス・リゾ氏は確信をもってレッドカードを提示したのである。

■アクシデントに対応できたメンバー起用

 残り65分間、10人で戦うことになるフランスであるが、実は結果的にはゲームメーカーのミクー起用、ルブッフ負傷時のカンデラ起用という2つの選手起用がアンリの負傷を予期していたような好采配となったのである。まず、当然ながら1人少ないチームは攻撃陣を1人減らす。攻撃陣はトレゼゲをミクーとビルトールが支える形になる。ミクーではなくジョルカエフを起用していたならば、運動量の問題が生じる。またパス主体のミクーは1人少ない局面でのパス多用という戦術でウルグアイのDFラインを押し下げたままにしておくことができたのである。
 さらに、1人少ないフランスのDFラインは当然攻撃の機会は少なくなる。攻撃はロングパスが中心になるためサイドDFのオーバーラップの機会は少なくなる。したがって、テュラムを右サイドに残しておいてもテュラムのオーバーラップは抜かれることのない伝家の宝刀となりかねなかったのである。

■厳しいタックルの応酬の前半、ファビアン・バルテスのスーパーセーブの後半

 激しい攻防の応酬となり、両チームの闘志が魂を感じさせる厳しいタックルの連続となる。前半だけで4枚のイエローカード、1枚のレッドカードが飛び交った。前半ロスタイムの小競り合いでエマニュエル・プチが警告を受けたのは残念であったが、不思議と「荒れた試合」という印象のないままハーフタイムを迎える。
 前半が厳しいタックルと5枚のカードに象徴されるならば、後半はファビアン・バルテスのスーパーセーブの連発が象徴している。ウルグアイは伝統国らしく、相手が一人減ってもスタイルを変えない。ひたすらカウンターを仕掛けるチャンスを待つ。そしてその数少ないカウンターのチャンスで矢のような鋭い攻撃を仕掛ける。その矢のようなシュートをことごとくブロックしたのが守護神バルテスである。バルテス自身、優秀なGKであるが、矢のようなシュートを次々と阻止し、味方を鼓舞する、という機会は幸運なことに今まで無かった。まさに現在代表チームのGKコーチを務めているブルーノ・マルティニの再来を思わせるような活躍であり、この試合を引き分けに持ち込んだ最大の功労者であろう。(続く)

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