第90回 アジアで活躍したフランスのクラブの選手(2) フランス以外でも活躍する不屈のライオン

■アフリカの強豪として定着したカメルーン

 前回の連載では23人の登録選手中21人がフランスのクラブに所属しているセネガルについてご紹介したが、今回は9人の選手がフランスのクラブに所属しているカメルーンについて紹介しよう。
 カメルーンはセネガル同様フランスから独立した国であり、政治・経済面同様、サッカーの面でもフランスとのつながりは強力である。フランスリーグ所属選手が9人もいるということがそのつながりを物語っている。
 今大会がワールドカップ初出場のセネガルに対し、カメルーンのワールドカップ初出場は1982年のスペイン大会。それ以来、カメルーンはアフリカの強豪として1986年のメキシコ大会以外出場しており、ニックネームの「不屈のライオン」は世界中に知られている。その歴史の違いがフランスのクラブに所属しているカメルーンとセネガルの代表選手のキャリアの違いとなっている。

■欧州デビューはフランスから

 カメルーンの選手とセネガルの選手のキャリアを比較すると、共通点としてはカメルーンの選手もほとんどは欧州のクラブライフのデビューをフランスのクラブで飾っている。今回の9人の選手で、カメルーンからフランス以外の欧州のクラブに渡ってきたのはスイスのヌシャーテルに所属したピエール・ヌジャンカだけであり、残りの8人はフランスのクラブで欧州デビューを飾っている。この傾向はセネガル代表の21人の選手も同様である。

■フランス以外のクラブにも所属した選手たち

 一方、相違点はカメルーンの選手の方がフランス以外のクラブでも活躍しているという点である。現在メッスに所属しているジャック・ソンゴは1989年にカノン・ヤウンデからトゥーロンに渡り、以後ルマンを経て1993年にメッスに移籍してきた。そしてメッスで3季プレーした後、スペインのラコルーニャに移籍している。5シーズンのラコルーニャでの経験を経て、2001年にメッスに戻ってきた。ソンゴのメッスでのチームメートであるジョセフ・デジレ・ジョブはリヨンが県庁所在地であるローヌ県のベニシューの出身であり、1997年にリヨンでプロ生活を始める。その後、ランスに移籍し、2000年にはイングランドのミドルスブラに移る。ミドルスブラで1シーズン半プレーし、昨年の暮れにメッスに移籍した。マルク・ビビアン・フォエも1994年にカノン・ヤウンデからランスに移籍し、欧州での生活を始める。そして再び海を渡り、1998年から2年間、イングランドのウエストハムでプレーし、2000年からリヨンの中盤の要として活躍している。

■国際的に活躍する不屈のライオンたち

 このようにカメルーンの選手はフランスのクラブだけではなく、他国のクラブにも移籍するという特徴である。この理由はカメルーンのサッカーが過去20年間における国際舞台での活躍により、フランス以外でも認知されていること、そして多くの選手がフランスあるいはフランス語圏以外で活躍していることがあげられる。セネガルの場合、フランスのクラブに所属していない2人の選手は1人がセネガル国内、もう1人はモロッコのクラブに所属しており、フランス語圏以外のクラブに所属している選手はいなかった。一方、カメルーンの場合は23人の選手の最多所属リーグはフランスの9人であるが、これに続くのがスペインとイングランドでそれぞれ4人、以下トルコ2人、ドイツ、イタリア、ギリシャ、サウジアラビアがそれぞれ1人となっている。自国リーグ所属選手がいないというのも驚きであるが、旧宗主国であるフランス以外の国に広がって活躍し、選手の所属が8か国にわたるというのも驚きであり、言語のハンディキャップを乗り越えて活躍している。まさに「不屈のライオン」である。このような国際的な選手の活躍が日本での異例ともいえるような手厚いもてなしを受けた最大の理由であろう。
 選手の所属しているリーグの多様性という点で、フランス語圏のチームの中ではカメルーンに比肩するチームはなく、今大会は日本で3試合しただけで帰国の途についてしまったが、もう少し見てみたいチームであった。(続く)

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