第367回 ワールドカップ予選開幕(1) ドイツ行きをかけた3度目の挑戦

■4度目の予選での対決となるイスラエル

 2006年ワールドカップ・ドイツ大会の予選が9月4日に開幕する。フランスの所属するグループ4は6チームから構成される。第1シードはフランス、第2シードはアイルランド、第3シードはスイス、第4シードはイスラエル、第5シードはキプロス、第6シードはフェロー諸島である。
 イスラエル、キプロスは昨年まで繰り広げられた今年の欧州選手権予選でも同じグループに入っていた。アイルランドとはいままで4回もワールドカップ予選で同じグループに入り、これが5度目となる。スイスとはこれまでも数多くの親善試合を行い、6月には欧州選手権の本大会で対戦したばかりである。また、フェロー諸島とは初めての対戦となる。
 フランスのドイツ行きへの挑戦は9月4日にサンドニでイスラエルとの対戦で始まり、来年の10月12日のサンドニでのキプロス戦まで続くのである。その初戦の相手であるイスラエルであるが、過去10年ばかりの間にフランスとワールドカップや欧州選手権の予選で3回も同じグループに入っている。まず1994年ワールドカップ米国大会予選、続いて1996年欧州選手権イングランド大会予選、そして2004年欧州選手権ポルトガル大会予選である。

■豪雨のパリでの敗戦で苦手意識を持ったフランス

 今までの連載の中でこれらの試合については紹介してきたが、第4シードのイスラエルは侮ってはならない相手である。なんと言っても1993年10月13日に豪雨のパリで行われた試合はフランスのサッカーにとって痛恨の敗戦であろう。テルアビブでのアウエーの戦いを4-0と完勝しながら、ホームで2-3と敗れた記憶はフランスのサッカー界にとってはトラウマとなったと言える。1995年3月には欧州選手権予選でイスラエルとテルアビブで対戦したが、スコアレスドローに終わり、11月にホームのカーンで行われた試合もなかなか得点を奪うことができず、後半半ばにようやく先制、そしてロスタイムに追加点をあげてファンを安堵させたというギリギリの勝利であった。また、記憶に新しいのは昨年の2回の対戦である。治安上の理由からイスラエル国内でホームゲームを開催できず、中立地のイタリアのパレルモで対戦するという幸運に恵まれたフランスであったが、開始早々に先制点を奪われ、窮地に追い込まれながら逆転勝ちを収めることができるという始末であった。

■グランドスラムを達成した昨年秋の対戦

 4試合連続でイスラエル相手に苦戦したフランスであるが、ようやく安心して見ることができたのは昨年10月11日のサンドニでの対戦である。この試合の前の試合までフランスは連戦連勝で7戦全勝。すでに欧州選手権の本大会出場権を獲得したフランスの目標は予選全勝のグランドスラムと本大会出場を見据えた若手選手の起用である。フランスはDFのブルーノ・ペドレッティを代表にデビューさせ、ストッパーにはこの試合が代表3試合目となるジャン・アラン・ブームソンを起用している。フランスは開始早々から試合を支配し、前半だけで3得点、3点目は若手のブームソンというおまけつきで完勝し、グランドスラムを達成する。

■初のドイツ行きなるか、3度目の挑戦

 しかし、精神的に余裕のない状況で戦う今回は必ずしも楽観視できるわけではない。大幅な選手の入れ替えを余儀なくされ、特に守備陣は代表経験がほとんどない選手が過半数を占める。もしも昨年10月のイスラエル戦に出場したレベイエールやブームソンをその後コンスタントに起用していれば、今回のように守備陣の経験不足が直前に問題になることもなかったであろう。そしてフランスにとってドイツは過去何度も戦火を交えてきたが、サッカーの世界ではフランスがドイツで開催された本大会に出場したことがない。1974年ワールドカップ、1988年欧州選手権といずれも予選で敗れており、ドイツの地を踏んだことがない。今年はノルマンディー上陸60周年である。3度目の挑戦でフランスはライン川を越えることができるであろうか。(続く)

このページのTOPへ