第368回 ワールドカップ予選開幕(2) 20年ぶりの予選突破に黄信号

■ワールドカップ予選を2大会連続免除されたフランス

 新チームになり、準備期間も不十分なまま迎えたワールドカップ・ドイツ大会予選の初戦。実はフランスにとっては久しぶりの予選参加である。なぜならば2002年大会は1998年大会で優勝したため、前回開催国として予選は免除、そして1998年大会は開催国であったために予選を免除されているからである。すなわち、2大会連続して予選免除となっており、実に1994年米国大会以来の予選出場となる。ドイツ大会以降については前回優勝国は予選免除とならないため、開催国だけが予選免除となる。おそらくフランスは2大会連続して予選免除となる最後の国であろう。

■11年ぶりのワールドカップ予選、連敗ストップなるか

 久々の予選であるが、最後の予選の試合は1993年11月17日にパリのパルク・デ・プランスで行われた米国大会予選のブルガリア戦。本連載の読者の皆様には改めてご紹介する必要もないだろうが、ロスタイムに不用意なキックからエミール・コスタディノフにボールを奪われ、決勝点を許し、本大会出場を逃したあの一戦である。そしてその前の試合は10月13日のイスラエル戦、これも同じくパルク・デ・プランスでの試合であり、すでにアメリカ行きに王手をかけていたフランスが逆転負けを喫している。すなわち、フランスは11年ぶりにワールドカップ予選を戦うが、このところ2連敗、そしていずれもがホームの試合である。この11年間の間に、ワールドカップ米国大会を除いて、ワールドカップ、欧州選手権の本大会には欠かさず出場、王座に2回ついている。この11年の間にフランス代表の新たなホームスタジアムというべきスタッド・ド・フランスが完成し、サンドニでは初めてのワールドカップ予選となる。ホームでのワールドカップ予選2連敗は暗黒時代の終焉とも言えるであろう。しかしながら、連敗をしていることは事実であり、ホームでそろそろ勝ち星を挙げなくてはならない。

■あと一歩でプレーオフを逃し、2位狙いのイスラエル

 奇しくも相手は11年前にまさかの敗戦を喫したイスラエルである。イスラエルは今回の欧州選手権予選でフランスと同じグループ1に入っており、本連載でも取り上げているが、グループ1での成績は2勝3分3敗の3位、2位スロベニアとの勝ち点差は5であり、スロベニアとの直接対決は1分1敗であり、あと一歩でプレーオフ進出を逃している。2002年ワールドカップ予選も同様にプレーオフにわずか届かない、という成績を残している。今回のグループ4の顔ぶれを見て、「2位に入ることが目標」というアブラハム・グラント監督の発言は十分に実現可能なレベルである。もちろん、2002年夏から指揮を執るイスラエルの監督の発言は「1位は第1シードのフランスで、当面のライバルはアイルランドやスイス」というのが本心であろう。しかし、フランス代表にとって11年ぶりのワールドカップ予選、初めてのスタッド・ド・フランスでのワールドカップ予選は思いもよらぬ展開となった。

■スコアレスドローで早くも黄信号

 まず、メンバーの多く、特に守備陣は代表経験のほとんどない選手で占められることになったが、レイモン・ドメネク監督の引いた布陣も驚きであった。まずGKは負傷のファビアン・バルテスに代わってグレゴリー・クーペ、DFラインは1992年欧州選手権を最後に採用していない3バックを採用、右からウィリアム・ガラス、セバスチャン・スキラッチ、ガエル・ジベ、MFは守備的な位置にクロード・マケレレと主将のパトリック・ビエイラ、左ウイングバックにパトリス・エブラ、右サウイングバックにベルナール・メンディ、攻撃的MFにはロベール・ピレスではなくジェローム・ロテンが起用された。2トップはティエリー・アンリと負傷のダビッド・トレゼゲに代わって招集されたルイ・サア。立ち上がりから両サイドを簡単に突破される苦しい展開。アンリが格の違いを見せる個人技を見せるものの、得点にはいたらず。そして後半に入り、ルドビック・ジュリーとピレスを投入してから、攻撃的になるが、守備に重きを置くイスラエルの守備陣を崩すことはできず、スコアレスドローに終わってしまう。ワールドカップ予選の初戦を白星で飾ることができなかった。
 米国大会予選も最後のブルガリア戦が話題になるが、実は初戦も黒星(アウエーのブルガリア戦)だったのである。今回もまた勝ち星以外でスタートとなった。フランスは米国大会もその前のイタリア大会も予選で姿を消している。ワールドカップ予選を勝ち抜いたのは1986年メキシコ大会が最後である。初戦で早くも20年ぶりの予選突破に黄信号となったフランス、8日には未知の地、フェロー諸島での戦いが待っている。(続く)

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