第385回 早くも背水のキプロス戦 (2) アウエーで勝利、暫定2位に浮上

■1990年ワールドカップ予選での苦い引き分け

 早くも背水の戦いとなったキプロス戦。今回の欧州選手権予選でもフランスと同じグループに入っており、それ以外にもワールドカップ予選で2回同じグループに入っている。キプロスについては本連載第105回から第109回などですでにご紹介しているが、現在のフランス代表のワールドカップ予選でのもたつき具合を見れば、1990年ワールドカップ・イタリア大会予選の悪夢を思い出さずにはいられない。
 1982年ワールドカップ4位、1984年欧州選手権優勝、1986年ワールドカップ3位と言う素晴らしい成績が3回続いた後待っていたのは1988年欧州選手権の予選敗退であった。1988年秋から始まったイタリアワールドカップ予選はまずホームのノルウェー戦で1-0と辛勝、しかしキプロスとのアウエーゲームではまさかの引き分け、ここでアンリ・ミッシェル監督が更迭される。フランス代表監督がワールドカップや欧州選手権の予選の途中段階で更迭されることはきわめて異例のことである。結局、この引き分けで完全に調子を崩したフランスは、ミッシェル・プラティニを新監督に迎えたものの、ユーゴスラビアとのアウエーゲームでは2-3と敗れ、翌年は本連載の第46回や第382回で紹介したスコットランドとの試合でも敗れてしまう。キプロス戦で順当に勝ちを収めていれば、イタリア行きの切符を獲得していたであろう。

■ギリシャ戦のほうが関心が高いキプロス

 キプロスは前回のワールドカップ予選ではポルトガル、アイルランド、オランダという強豪のいるグループ2に入り、これらの強豪には全敗したが、エストニアとは2分、アンドラには2勝という成績である。また今回の欧州選手権予選ではマルタに2勝、イスラエルとスロベニアにはホームで引き分けており、ホームで負けたのはフランスだけである。現在のフランスの調子を考慮すれば、キプロスがホームでフランス相手に引き分け以上の結果を残すことは決して夢ではない。しかしながら、9日のホームでのフェロー諸島戦では相手に逆転されて追いつくと言う展開。ロスタイムに得点チャンスが2回あったものの、勝ち越し点を奪うことはできず、2-2のドローに終わっている。このフェロー諸島戦は2500人しか観客が集まらなかったが、これは相手が有力チームでないことに加えて、同時刻にグループ2のギリシャ-ウクライナ戦のテレビ中継があり、ギリシャ系の住民は住んでいる国の代表チームの試合ではなく、母国の代表の試合をテレビ観戦していたという事情があったからである。キプロスにおける民族構成については以前の本連載でも紹介している通りであるが、それがサッカー観戦の場において、表れた事例である。そして13日は7チームから構成されるグループ2ではギリシャだけが試合がなかったため、キプロスの住民の関心はキプロス-フランス戦に集中した。その結果、5000人の観衆が競技場に集まった。

■アイルランド戦で調子の悪い選手を外したキプロス戦メンバー

 フランスの陣容はアイルランド戦を無失点に抑えた守備陣はそのままでGKファビアン・バルテス、最終ラインは左にミカエル・シルベストル、中央にセバスチャン・スキラッチ、ガエル・ジベ、右にウィリアム・ガラスと4人のストッパーが並ぶ。アイルランド戦で動きの悪かった守備的MFは2人とも入れ替わり、出場停止の主将パトリック・ビエイラがカムバックし、オリビエ・ダクールとコンビを組む。攻撃的MFは左がロベール・ピレス、右がシルバン・ビルトール、ダビッド・トレゼゲを欠く2トップもジブリル・シセを外し、ペギー・リュインデュラを起用し、ティエリー・アンリとキプロスゴールを狙う。このようにアイルランド戦で調子の悪い選手を外し、背水の戦いに臨んだ。

■試合のなかったスイスをかわして2位浮上

 フランスはキックオフ直後から相手を圧倒する。前半38分にパスがきれいにつながってビルトールが先制点、後半に入って72分にアンリが追加点を奪う。結局フェロー諸島戦と同様の2-0というスコアでフランスは2勝目を上げる。フランスにとってこれが年内の予選最終戦である。ホームで2引き分けに終わり勝ち点4を落としたが、4試合終了時点で勝ち点8は同日にフェロー諸島を破ったアイルランドと勝ち点で並ぶ。この日試合がなかったスイスをかわして得失点差で2位に浮上する。ひとまず、最悪の結果は免れ、年を越すことになる。次の試合は来年3月26日のホームのスイス戦である。(この項、終わり)

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