第503回 2006年ワールドカップ展望(1) 最近の大会方式と大会規定の変更

■毎回変更が加わる大会形式と大会規定

 今年も残るところあとわずか、来年はいよいよワールドカップイヤーである。本連載では4年前の暮れにも第21回と第22回の連載で翌年のワールドカップの展望を行ったが、読者の皆様からのリクエストにお応えして来年のワールドカップでのフランス代表の活躍を展望してみよう。
 第21回、第22回の連載でも大会規則について言及しているが、今回もまた大会規定の変更について言及しなくてはならない。ドイツ大会も前回の韓国・日本大会と大会方式・大会規定にいくつかの違いがあるからである。振り返ってみれば32か国が本大会に出場するようになった1998年のフランス大会から大会の形式と規定に毎回変更が加えられてきた。

■1998年大会で採用したローラン・ギャロス方式

 まず、フランス大会ではグループリーグを特定の都市で行うのではなく、さまざまな都市でグループリーグを行うようになった。米国大会まではグループリーグの6試合は2都市で行われ、第1シードの国は3試合とも同じ都市で行うのが通例であった。ところが、フランス大会では開催都市に住んでいる住民がより多くのチームを見ることができるように、そして第1シードの国への優遇を減らす意味でもグループリーグとその開催都市をくくりつけず、ランダムに試合が行われるようにしたのである。この大会形式はフランスで行われるテニスのローラン・ギャロスにヒントを得たと言われている。四大大会の一角であるローラン・ギャロスでは、第1シードの選手であろうとも必ずセンターコートだけで試合をするのではなく、それ以外のサブコートで試合をすることもあることから、第1シードの選手が順当に優勝することが少ない。それだけに伏兵が優勝するのではないかと予想された1998年大会であったが、結局第1シードに相当する地元フランスの優勝になるとは主催者も想像していなかったであろう。

■共同開催の産物である決勝トーナメントの組み合わせ

 そして2002年の韓国・日本大会は地理的に離れた2か国での共同開催ということで新たな大会形式となった。グループリーグの上位2チームが決勝トーナメントに進出する。ワールドカップに限らず、通常の大会ではグループリーグで1位となったチームと2位になったチームは決勝まで顔をあわせないのが通例であった。昨年の欧州選手権の決勝のギリシャ-ポルトガル戦を思い出した読者の皆様も少なくないであろう。ところが、この大会では8つのグループリーグは2つに分けられ、グループB、D、E、Gを勝ち抜いた8チームは決勝トーナメントを韓国で行い、グループA、C、F、Hを勝ち抜いた8チームは決勝トーナメントを日本で戦った。そして決勝戦は日本の横浜で行うと言う大会形式になった。すなわち同じグループリーグで1位になった国と2位になった国は準決勝で対戦する可能性があり、実際にグループCで首位のブラジルと2位のトルコが準決勝で再戦したのである。
 1998年大会以降このような大会方式の変更があったが、今回のドイツ大会に受け継がれたのはグループリーグがランダムな開催地で行われることだけで、グループリーグで1位になったチームと2位になったチームは決勝トーナメントでは決勝まで顔をあわせないという従来の方式に戻った。

■当該チームの直接対決を優先するグループリーグの順位決定方法

 一方、今大会の規定の変更点は1点ある。それはグループリーグでの順位決定方法である。同勝ち点で並んだ場合、これまでの大会では得失点差でまず順位を決め、それが同じならば総得点数、そして該当チーム同士の直接対決の成績と言う順序で順位が決定された。ところが、本大会から同勝ち点で並んだ場合は直接対決の成績でまず順位が決定されるようになった。勝ち点で並んだ場合はまず直接対決の成績と言うルールはワールドカップ予選でも導入されていたが、チャンピオンズリーグではすでに前回のワールドカップの前の2001-02シーズンから導入されている。本連載第501回で紹介した通り、チャンピオンズリーグのグループDでリールは勝ち点6、得失点差-1でマンチェスター・ユナイテッドと並んだが、リールは得点1、失点2であり、マンチェスター・ユナイテッドは得点3、失点4と言う成績で従前の大会規則では総得点数で上回るマンチェスター・ユナイテッドが上位の3位に入るはずであった。ところが、新たな大会規則により、マンチェスター・ユナイテッドに1勝1分と勝ち越しているリールが上位となり、UEFAカップの決勝トーナメントへのチケットを得たのである。この新たな大会形式がどのような影響を与えるのであろうか。(続く)

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