第568回 最初の関門、スイス戦(2) チーム編成に苦労したフランス、順調なスイス

■欧州選手権、ワールドカップ予選に続く対戦

 2002年、2004年の悔しい思いを胸にフランス代表がいよいよワールドカップ第1戦を迎えた。グループGの最大のライバルと目されるスイスと対戦するが、フランスとスイスは予選でも同じグループであったばかりではなく、2年前の欧州選手権のグループリーグでも同じ組になり対戦している。このようにお互いの手の内を十分に知った相手であるが、シュツットガルトのゴットリーブ・ダイムラー競技場のピッチに立った22人がどの程度相手のことを知っているかという点に着目してみたい。

■2人のフランスリーグ所属選手が先発したスイス

 まず、相手のリーグに所属したことがあるかという点であるが、フランスの23人のメンバーを見渡しても、はスイスのクラブに所属している選手もいなければ、スイスのクラブに所属した経験のある選手もいない。フランスリーグの選手にとってはフランスのクラブで力が足りなかった選手がスイスのクラブに移籍するというイメージが強いようである。一方、スイス代表は、先発メンバーでアレクサンドル・フレイ(レンヌ)とパトリック・ミューラー(リヨン)の2人がフランスリーグに所属し、さらにベンチのステファン・グリッチングがオセールに、ダニエル・ギガックスがリールに所属している。

■過去3戦に出場した選手の比較

 そして直接相手を知っているかという観点から、両チームの先発メンバーが最近のこのカードの出場経験があるかどうかを調べてみると興味深いことがわかる。まず、2年前のポルトガルのコインブラでの欧州選手権での試合、この試合はフランスが3-1と勝利してグループリーグを首位で突破することを決めた試合である。敗れたスイスはここで敗退が決定し、ポルトガルの地を去っている。6月13日の先発メンバーのうちこの試合に出場した選手の数は、フランスが8人であるのに対し、スイスは5人である。すなわち、この数字だけを見れば、第561回で紹介したとおり、フランスが代表のメンバーを切り替えていないことを意味しているように読者の皆様は思われるであろう。
 ところが、今回のワールドカップの予選、まず、昨年3月26日にスタッド・ド・フランスで対戦し、スコアレスドローとなっているが、この試合に出場した選手はフランスは4人、スイスは逆に8人と増える。スイスの数が増加したのはポルトガルでの敗退を受けて新チームを発足させ、そのメンバーが現在まで活躍していることを物語っている。さらに、ワールドカップ予選も大詰めとなった昨年10月8日のベルンで行われた試合はまさに天王山となった。低迷が続いたフランスはこの年の夏に、代表から引退をしていたジネディーヌ・ジダン、リリアン・テュラム、クロード・マケレレを復帰させ、ダブリンのアイルランド戦で勝利し、このスイス戦に勝てば本大会出場が決定というところまでこぎつける。試合は結局1-1のドローに終ったが、この試合に出場していた選手は6人に過ぎない。一方のスイスはマルコ・シュトレーラー以外の10人がこの試合にも出場している。

■新チームが順調に育ったスイスと混迷したフランス

 スイスは2年前の欧州選手権で敗退した後、新チームを発足させ、そのメンバーを成長させながら、このワールドカップ初戦を迎えている。フランスも欧州選手権で敗退し、新監督を迎え、新チームを発足させる。それを示すのが昨年3月の試合の出場者数が欧州選手権時の8人から4人へと減少したことである。ところが、なかなか思うような結果を残せず、昨年夏、ジダンなどが代表から復帰する。しかし、その時のメンバーでワールドカップの初戦にも継続して出場しているのは半数をようやく超える6人に過ぎない。メンバーを試行錯誤した上で結局は2年前のメンバーに頼らざるを得なかったのである。
 編成に苦労したレイモン・ドメネク監督のチームでは、ピッチの上で直接相手のことを知っている選手は実は少ないのである。(続く)

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