第578回 ブラジルを破り準決勝進出(1) 似たような世代交代をした両チーム

■悲観論が高まった韓国戦の引き分け

 無敵艦隊スペインを破り、準々決勝に進出したフランス。開幕段階では選手の高齢化とコンビネーションの悪さが目立ち、悲観的な声が強かった。スイスとはがっぷり四つの戦いをしながら引き分け、韓国には先制してなお攻め続けながら同点に追いつかれ、主将のジネディーヌ・ジダンが大会2回目の警告処分を受けて第3戦のトーゴ戦を迎える。この段階で多くのフランス人は戦いの終わりを予感した。もちろん、トーゴ戦の引き分け、あるいは負けによってグループリーグ敗退という可能性もあったが、相手のトーゴは前回のセネガルに比べるとはるかにチーム力は低く、すでに連敗してグループリーグ敗退が決まっている。多くのフランス人の懸念はグループリーグではなく、それから迎える決勝トーナメントでの戦いである。フランスにとってグループリーグ1位となる可能性は非常に低い。グループリーグを2位で通過した場合は決勝トーナメント1回戦ではスペイン、そして準々決勝ではブラジルと対戦することが予想される。一方1位で通過した場合は決勝トーナメント1回戦ではウクライナ、そして準々決勝ではイタリアとの対戦が予想される。いずれも強敵であるが、グループリーグで無類の強さを誇ったスペイン、ブラジルよりはやりやすい相手である。グループ2位となった場合、決勝トーナメントで調子のいいチームと次々と対戦しなくてはならないことに悲観的にならざるを得なかった。
 トーゴ戦はシステムをフランス伝統の4-4-2に戻し、ジダンに代わる主将はパトリック・ビエイラが努め、ビエイラの活躍により勝利したものの、スイスが韓国に勝ったため、フランスはグループ2位となる。

■悲観論が払拭されたスペイン戦

 そして迎えたスペイン戦、グループリーグの調子からスペインが有利と思われたが、ジダンを復帰させるとともに、再び1トップに戻し4-2-3-1のシステムで戦い、圧倒的にボールを支配され、しかも先制を許しながら前半終了間際に追いつき、後半終盤に勝ち越し点とダメ押し点を入れた。さらに若手のフランク・リベリー、ベテランのジダン、ビエイラが活躍し、新たな形が生まれた。
 決勝トーナメント初戦のスペイン戦での勢いが前回王者のブラジルにも通用するかが大きな焦点となった。ほんの1週間前、2週間前のことを振り返って見れば、フランスは得点や勝利から見放されていた。第1戦のスイス戦が無得点に終わった時は1998年大会の決勝のブラジル戦を最後に4試合連続無得点と言われ、第2戦の韓国戦が引き分けに終わった時はやはりブラジル戦を最後に5試合連続で勝ちから見放されていると嘆いた。それほど美しかった1998年7月12日のブラジルとの戦いから無得点の壁を破ったのが韓国戦、未勝利の壁を破ったのがトーゴ戦だったのである。そしてスペインに勝って復調してきたフランスが優勝候補ブラジルと対戦する。

■8年前の決勝戦に出場した7人の選手

 そのスタッド・ド・フランスの決勝戦に登録されたメンバーが両チームに6人ずつ、先発メンバーも3人ずついる。この試合で歓喜の瞬間をピッチで味わった選手はジダン、テュラム、ファビアン・バルテスと途中出場のパトリック・ビエイラの4人、一方、失意に暮れた選手はカフー、ロベルト・カルロス、ロナウドの3人である。7人とも今回の試合の先発メンバーに名を連ねており、当時も今も主力であることが分かる。

■2年前のFIFA創立100周年記念試合には10人ずつ出場

 両チームはその後、2001年6月7日に韓国の水原で行われたコンフェデレーションズカップ準決勝、2004年5月20日にスタッド・ド・フランスで行われたFIFA創立100周年記念試合で対戦し、フランスの1勝1分である。コンフェデレーションズカップは日程の関係で両チームともベストメンバーが揃わなかったが、2004年5月の試合はベストメンバーであり、2年前のこの試合に出場した選手は奇しくも両チーム10人ずつである。
 8年前は決勝戦で明暗が分かれ、4年前は戦わずして明暗が分かれた。4年前の2002年大会の登録メンバーはブラジルが10人、フランスが11人とこれも拮抗している。つまり、両チームは8年間似たような世代交代をしてきたことがわかる。負ければ終わりの決勝トーナメントで大幅な世代交代を余儀なくされるのはいずれのチームであろうか。(続く)

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