第586回 ワールドカップ回顧(1) フランス代表を支えたフランスリーグの選手

■国内外のリーグ戦で活躍した選手を登用したレイモン・ドメネク監督

 フランス代表が前評判やグループリーグでの試合内容とは裏腹に決勝トーナメントで勝ち進み、ファイナリストとなった今回のワールドカップ。最後はジネディーヌ・ジダンの退場、そして延長戦の末のPK負けと残念な決勝戦に終わったが、グループリーグで無得点のまま敗退した前回大会に比べれば、国内の盛り上がりは段違いであった。
 フランス代表に対し、国民が声援を送ったのはもちろん最後のプレーとなるジダンに対する思いだけではない。レイモン・ドメネク監督に対する批判は最後までとどまらなかったが、ドメネク監督が多くのフランスリーグに所属する選手を起用したことは特筆すべきである。前回のワールドカップではフランス代表23人のうち、フランスリーグに所属する選手はわずか5人であったが、今回はその倍以上の11人がフランス人選手であった。近年、トップレベルのフランス人選手の国外流出はとどまるところを知らぬ勢いであったが、イングランドやイタリアのビッグクラブに移籍した選手が、必ずしも活躍しているわけではなかった。ドメネク監督は国内外問わず、リーグ戦で活躍している選手を登用した。

■5連覇中のリヨンから大量5人のフランス代表

 国内のクラブに所属していても日頃のリーグ戦で活躍していれば、代表に招集し、チャンスを与えてきた。そして活躍している選手の所属する選手は成績もよくなる。今回の11人をリストアップすると、首位のリヨンから5人(グレゴリー・クーペ、エリック・アビダル、フローラン・マルーダ、シドニー・ゴブー、シルバン・ビルトール)が選出されている。特筆すべきはこの5人は大会前はいずれもレギュラークラスの選手ではなかったが、終わってみれば、アビダルとマルーダは先発メンバーとして欠かせない存在となり、ゴブーとビルトールは試合終盤に登場して切り札的な存在となった。ファビアン・バルテスとの第1GK争いに敗れたクーペは試合出場機会がなかったが、ポジション的に仕方のないところであろう。

■対照的な2人が活躍したマルセイユ

 リヨン以外で唯一複数の選手をフランス代表に送り込んだのがリーグ戦では5位に終わったマルセイユである。名門マルセイユからは対照的なメンバーがブルーのユニフォームを着ている。まずは第1GKのバルテス、そしてもう1人は新星フランク・リベリーである。大会前からファンが最も起用したくない選手としてあげたのが往年の姿かららほど遠く、安定性に欠けるバルテスである。逆にファンが最も起用したかった選手がリベリーである。バルテスは大会前の親善試合から1人でフランスのゴールを守り続け、結果的にはバルテスはドメネク監督の期待に応え、ファンの予想をいい意味で裏切り、大会を通じて安定した守備を見せた。
 そしてリベリーは大会前の親善試合では交代要員であったが、大会が進むにつれ、チームに不可欠な存在となり、本大会では7試合すべてに出場し、6試合に先発している。さらにグループリーグ最終戦のトーゴ戦からは本来の左サイドから右サイドに活躍の場所を移すという器用な側面も見せ、フランスの準優勝に大きく貢献した。

■準優勝の原動力となったリヨン勢とマルセイユ勢

 それ以外にフランスリーグから選出されたのはパリサンジェルマンのビカッシュ・ドラッソー、ナントのGKミカエル・ランドロー、モナコのガエル・ジベ、ランスのアルー・ディアラの4人であるが、ディアラがトーゴ戦とイタリア戦に交代出場、ドラッソーはスイス戦、韓国戦の試合終了間際に出場しただけであり、ジベとランドローは出場のチャンスがなかった。
 このように見てみるとフランスリーグの選手は前回のワールドカップよりも多くなり、GKのバルテス、DFのアビダル、MFのリベリー、マルーダの4人がレギュラーとして活躍し、決勝進出の原動力となった。そしてこの4人は実力ナンバーワンのリヨン、人気ナンバーワンのマルセイユに所属している。リヨンは順当としてもマルセイユの選手が国際舞台で予想外の活躍するあたり、名門の意地を感じさせる。(続く)

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