第900回 前半の天王山、ルーマニア戦(3) 序盤に2失点、試合を支配するがドローに終わる

 おかげさまで第900回の連載を迎えることになりました。連載開始以来7年1か月で900回もの連載を続けてくることができたのは読者の皆様のおかげです。読者の皆様に改めて感謝するとともに、100回連載と言う目標に向けて引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。

■実現しなかったビエイラのリベリーの共演

 主将パトリック・ビエイラが試合前のウォーミングアップ中に負傷すると言う非常事態の中で、フランスは負けることのできない相手ルーマニアとの試合がキックオフされることになった。今回のフランス代表には代表ではまだ出場経験のないジミー・ブリアンの招集と、負傷から立ち直ったビエイラの復活が注目の的であった。ブリアンについては15日のチュニジアとの親善試合も代表デビューも想定されるが、ビエイラはこのルーマニアとの天王山での活躍を期待したいところである。2006年のワールドカップ終了後は出場した試合全てでキャプテンマークをつけているが、負傷に泣き、今年2月6日のスペイン戦以来、代表の試合では出場機会に恵まれず、ようやく復調と言うところでのアクシデントは痛恨である。
  また、欧州選手権後に負傷したフランク・リベリーも、新チームになって初めての出場となる。中盤における守備と攻撃の要であるビエイラとリベリーがともに先発で出場すれば昨年9月のパルク・デ・プランスでのスコットランド戦以来のこととなるはずだった。

■ビエイラの代役はアルー・ディアラ、主将はアンリ

 ビエイラの離脱により、ドメネク監督は守備的MFにアルー・ディアラを投入、フランスの先発メンバーはGKにスティーブ・マンダンダ、DFは左にパトリス・エブラ、右にバカリ・サーニャ、中央にジャン・アラン・ブームソンとエリック・アビダル、守備的MFはアルー・ディアラとジェレミー・トゥーララン、攻撃的MFは中央にヨアン・グルコフ、左にフローラン・マルーダ、右にリベリー、FWは1トップでティエリー・アンリという陣容であり、アンリが主将を務める。
 このうち6月の欧州選手権のルーマニア戦に出場した選手はアビダル、トゥーララン、マルーダ、リベリーの4人である。一方のルーマニアは7人が欧州選手権のフランス戦に出場している。前々回の本連載で登録メンバーについてはフランスよりもルーマニアのほうが選手の世代交代が進んでいると紹介したが、レギュラークラスになると逆のようである。
 なお、この試合はワールドカップ予選であるため、ベンチ入りは18人、このうちビエイラはすでに試合出場が不可能なため、カリム・ベンゼマ、ブリアン、ウーゴ・ロリス、ロッド・ファンニ、ハテム・ベンアルファの6人がベンチスタートとなった。またベンチ入り選手の背番号は1番から18番までと規定され、通常22番をつけていたリベリーは背番号7での登場となった。

■試合開始直後からルーマニアが猛攻

 その注目の一戦は、序盤はルーマニアが一方的に攻め続けた。ルーマニアのビクトル・ピツルカ監督が「ウィリアム・ギャラスのいない守備陣は怖くない」と評したとおり、積極的に攻め続け、6分にはフランスの守備陣を破ってフロランティン・ペトレが先制点を挙げる。この段階でフランスはシュートを記録しておらず、ようやくフランスに初めてのシュートが生まれたのは13分のことであり、進境著しいグルクフのシュートであったが、ゴールの枠から外れる。さらに17分にフランスはルーマニアはCKからニコラエ・ゴイアンが追加点を挙げる。新チームになって失点の目立つフランスであるが、そのほぼ半数はセットプレーからのものであり、この日もセットプレーで失点、2点のビハインドを負うことになった。

■グルクフとリベリーが大活躍、同点に追いつく

 ところがフランスはここから調子を取り戻し、ボールの支配率でルーマニアを圧倒する。36分にはグルクフからのパスを復帰したリベリーが決めて1点差に詰め寄る。このフランスの勢いは衰えず、後半に入って69分、リベリーの左サイドからのパスを受けたグルクフがゴールから30メートル以上の距離から見事なシュート、これが決まってフランスは同点に追いつく。フランスはその後も一方的に攻め続け、シュート数で25-6、ボール支配率で67%と試合を圧倒したが、序盤の2失点が重くのしかかり、ドローとなった。また、試合終盤にはブリアンが代表にデビュー、今後の活躍に期待がかかる。
 ルーマニア相手でアウエーでドローという結果については最低限の目標はクリアしているが、序盤の試合内容の悪さはドメネク監督更迭という世論を和らげるには至らない。ドメネク監督の去就については4日後のチュニジア戦の結果を待たなくてはならなくなったのである。(この項、終わり)

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