第1112回 南アフリカ入り前の3試合(2) 代表デビュー戦でゴールを決めたマチュー・バルブエナ

■ランスで忘れられないパラグアイ戦のゴールデンゴール

 ランスのフェリックス・ボラール競技場でのコスタリカとの親善試合、フランス代表がフランス本土で行う最後の試合である。ランスではこれまでフランス代表は7試合行っており、6勝1分と好成績を残している。この中には、1998年ワールドカップの決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦が含まれている。グループリーグは開催国ということもあり、対戦相手に恵まれて決勝トーナメントに進出してきたフランスにとって最初の苦戦がこのパラグアイ戦であった。パラグアイの名GKチラベルトを中心とする堅守に阻まれてなかなか得点を奪うことができず、試合は延長戦に入る。そして延長後半の114分にローラン・ブランがようやくゴールをあげ、ワールドカップ本大会史上唯一のゴールデンゴールによる勝敗がついた試合であった。そのブランは現在はボルドーの監督として実績をあげ、今回のワールドカップ後の代表監督に就任している。ランスのファンはそのブランのゴールを懐かしむとともに、ブランが指揮を執る時期が大会前になることを望んでいるであろう。

■唯一勝利を逃した1992年のオランダとの親善試合

 一方、フランス代表にとってこのランスでの唯一の引き分けが1992年の欧州選手権直前のオランダとの親善試合である。ジャン・ピエール・パパンのゴールで先制したフランスは追いつかれてしまい、引き分けてしまう。前年秋まで行われた予選では全焼したフランスであったが、年が明けてからの親善試合は1回も勝つことができず、最後の親善試合がこのランスでのオランダ戦であったが、結局勝利することができず、スウェーデン入りしてからも復調することなく、グループリーグで惨敗している。

■先制を許すがオウンゴールで同点に追いつく

 このように良い思い出と悪い思い出のあるランスでの試合であるが、37,539人の観客でうまった。コスタリカとは2005年に海外県のグアドループのフォールドフランスで2005年の秋に試合をして以来、2度目の対戦となる。
 フランス代表のメンバーは前回の本連載で紹介したとおりであるが、選手はワールドカップ本大会用の背番号ではなく、これまでのフランス代表の活動の中で使用してきた背番号を使用する。最前線に位置するFWのニコラ・アネルカは21番ではなく39番を着用してゴールを狙う。
 試合は地力に勝るフランスが優位に進める。ところが、フランスはコスタリカに先制点を許してしまう。10分にコスタリカのカルロス・エルナンデスが20メートル以上のロングシュートを放つ。フランスの弱点である中央のデイフェンスを破られた形になった。そしてフランスは22分にオウンゴールで同点に追いつく。ジェレミー・トゥーラランが相手ゴールを奪い、フランク・リベリーにつなぐ。リベリーがゴール前にあげたクロスをコスタリカのDFが味方ゴールに蹴り込んでしまう。記録上はオウンゴールであるが、フランスが攻撃の形を作った結果としてのオウンゴールであり、相手DFの代わりにフランスの選手がゴールを入れてもおかしくない展開であった。

■交代出場のマチュー・バルブエナ、デビュー戦でゴールを決める

 そして1-1のままで後半を迎えるが、後半開始の段階でフランスは次々と選手を入れ替える。3月31日以来の試合で復調の途上にあるギャラスに代え、セバスチャン・スキラッチ、守備的MFを1人で務め、これまでよりも運動量の多いジェレミー・トゥーラランをベンチに下げ、アルー・ディアラを投入する。ギャラスの負傷、ラッサナ・ディアラの病気による不在が大きく影響している。そして攻撃陣ではニコラ・アネルカに代えティエリー・アンリを投入している。アンリは本来ならば先発し、主将を務めるべき存在であるが、昨年来精彩を欠き、さらに昨年秋のアイルランド戦のハンドにより精神的にも消耗している。
 このように不安を抱える先発陣に代え、控えの選手を投入したが、なかなか勝ち越し点を奪うことができない。そして66分にシドニー・ゴブーをベンチに下げ、マチュー・バルブエナを投入する。今回の23人のメンバーのうち、フランス代表の試合に出場したことがないのはバルブエナ、セドリック・カラッソ、マルク・プラニュスの3人であったが、その中で最も早く代表にデビューしたのがバルブエナであった。ワールドカップでは20番を着用する予定のバルブエナはこの日は10番のユニフォームを着てピッチに入る。このバルブエナは、途中出場したアブー・ディアビからのパスをシュートし、84分に勝ち越す。代表初出場初ゴール、ファンは1994年夏にデビューしたジネディーヌ・ジダンの再来と期待したのである。(続く)

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