第1114回 南アフリカ入り前の3試合(4) 天安門事件の6月4日、中国に敗れる

■チュニジア戦で失速したフランス

 ワールドカップ本大会前の3つの親善試合に向かうフランス代表、第1戦はランスでコスタリカに逆転勝ち、そして第2戦はチュニジアのラデスとチュニジアと引き分けに終わった。
 これまでフランスは4-2-3-1システムで戦ってきたが、ラッサナ・ディアラの病気による離脱により、4-3-3システムに変更してコスタリカ、チュニジアと対戦した。フランス国内では4-2-3-1システムが主流であるが、選手の所属している国外のクラブでは4-3-3システムを採用しているチームも少なくないため、コスタリカ戦ではうまく機能したかに見えたが、チュニジア戦ではいまひとつの動きであり、チーム力は上がっていないように感じられた。
 システムの問題はさておき、個人レベルでの収穫としては3月末からまったく試合に出場していなかったウィリアム・ギャラスが復調し、ワールドカップ本大会に間に合うこと、そして2試合とも途中から出場したジニャックが闘志あふれるプレーでチームを鼓舞したこと、さらにコスタリカ戦で代表にデビューしたマチュー・バルブエナがデビュー戦でゴールをあげたことなど明るい材料も少なくない。

■インド洋の海外県レユニオンで大歓迎を受ける

 そして本大会前最後の親善試合がインド洋に浮かぶフランスの海外県レユニオンのサンピエールで行われた。レユニオンはマダガスカルの東方にある。マダガスカルと言えばベルナール・ラマナンスーの故郷であり、レユニオンはローラン・ギャロスの出身地であり、日本の皆様にとってはラマナンスーの一橋大学での演説がいかに衝撃的なものであったか、記憶に新しいところである。
 かつてはフランスからインドへ向かう交通の要地であったレユニオンであるが、フランス人のフェルディナン・ド・レセップスがスエズ運河を建設してからはその地位を失っている。したがって、フランス代表がこの海外県に立ち寄ることもない。ところが今回、南アフリカでワールドカップが開催されることから、憧れのブルーがこの島を訪れることになったのである。
 レユニオンの県庁所在地はその名もサンドニであるが、試合はサンピエールで行われる。
 試合会場のミッシェル・ボルネイ競技場は1万人以上の観衆と三色旗で埋まった。人口8万人の海外県の都市の住民にとってはフランス代表を目の前で見ることは人生で最初で最後であろう。スタッド・ド・フランスでは激しいブーイングにさらされるフランス代表であるが、このレユニオンでは歓迎一色、久しぶりにホームゲームとなった。

■2006年大会決勝以来、前の試合と同じメンバーが先発

 チュニジア戦で下り調子となったフランスの相手は中国、奇しくも6月4日、天安門事件から21年と言う日に対戦することになった。中国の世界ランキングは84位であり、気持ちよく勝利して南アフリカ入りしたいところである。そしてレイモン・ドメネク監督はなんとチュニジア戦とまったく同じメンバーを先発させる。フィールドプレーヤーに限定すれば3試合連続で同じメンバーを先発させると言う考えられないメンバー起用をしたのである。
 確かに「勝っている間はメンバーを代えない」というのはスポーツの鉄則であるが、調子は下降気味であり、試合の目的は勝利ではなく調整である。フランスが前の試合と同じメンバーで戦ったのは2006年ワールドカップの決勝が最後である。この時は大会前の下馬評は高くなかったものの、次第に調子を上げ、ブラジル、スペイン、ポルトガルを破って決勝に進出しており、今回とは大きく状況が異なる。

■5試合連続で先制を許し、アジア勢に初めて敗れたフランス

 その驚きの先発メンバーであったが、動きに精彩を欠いた。前半23分にFKから中国に先制点を許し、5試合連続の先制点を許す。攻撃陣はまったく試合を組み立てることができず、左サイドのフローラン・マルーダとフランク・リベリーはまずまずであったが、右サイドのヨアン・グルクフとシドニー・ゴブーはブレーキになった。後半に入ってからは次々と選手を投入するが功を奏することはなく、無得点に終わってしまう。中国にフランスは0-1と敗れ、フランスはアジア勢との14回目の対戦にして初めてに敗れた。
 あまりにも重い敗戦を引きずってフランスは決戦の地、南アフリカ入りするのである。(この項、終わり)

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