第1727回 ドイツに惜敗、準々決勝で敗退(3) アルジェリアを下したドイツと対戦

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■パリ市内も盛り上がったアルジェリア-ドイツ戦

 今から32年前のスペイン大会、西ドイツに対して特別な感情を持っているのは準決勝で敗れたフランスだけではない。1次リーグ最終戦のキックオフの日時が異なっていたために、無気力な試合を演じた西ドイツとオーストリアに2次リーグ進出の可能性を奪われたアルジェリアもドイツに対しては特別な感情を抱いている。
 そのドイツとアルジェリアがフランスと準々決勝で戦うチケットを獲得するためにポルトアレグレで対戦した。現在のアルジェリア代表にはフランス出身のフランス育ちという選手が少なくない。フランス-ナイジェリア戦はフランス時間で月曜の18時キックオフであったが、アルジェリア-ドイツ戦は同じ日の22時キックオフ。パリ市内、特にアルジェリア系住民の多い地域のカフェは多くのアルジェリア人が集まる。恐らくこの試合、ドイツ国外では最も多くの人が自宅の外に集まって観戦しているのはこのパリであろう。

■アルジェリアの大健闘で試合は延長戦に突入

 試合の方であるが、もちろん予想はドイツ有利。その予想通りドイツがボールを支配し、アルジェリアの守備陣はブロックをつくり、守りに徹する。このように両チームの力の差はあったものの、この試合は32年前のワールドカップ史上最低の試合とは全く逆のスリリングな試合となった。緑のユニフォームのアルジェリアの中で出色の出来だったのはGKのライス・エンボリである。パリ出身でラシン92、マルセイユの下部組織に所属し、フランスの年代別代表としてプレーしたこともある。また琉球でプレーしたことから日本の皆様はよくご存じの選手であろう。エンボリは2010年にアルジェリアのフル代表入りし、南アフリカでのワールドカップにも出場している。組織的なプレーで試合を支配して次々とシュートを放つドイツの攻撃を、このエンボリが左右にセーブして無失点に抑える。そしてアルジェリアも数少ないながらもしっかりとカウンターを仕掛ける。このピンチを救ったのがドイツのGKマヌエル・ノイアーである。ドイツが圧倒的に試合を支配しながらも、90分では得点は入らない。この試合は決勝トーナメントでは6試合目であるが、最初に行われたブラジル-チリ戦に続き、2試合目の延長戦となる。

■延長に入り激しい攻防、ドイツが勝利

 延長戦に入ってすぐに先制点が生まれた。左サイドをトーマス・ミュラーがドリブルで持ち込み、ペナルティエリアに入ったところでグラウンダーのクロス、これをこの日も途中から出場したアンドレ・シュールレがヒールキックでゴールイン、92分間の沈黙を破るゴールが鮮やかに決まった。その後は延長戦とは思えない激しい攻防が続き、延長後半の120分、メスト・エジルがGKと1対1となったところで中央のシュールレにパス。シュールレがシュートするがバックアップに入ったアルジェリアのDFがクリア、そしてそのクリアボールがエジルの前に落ちて、エジルが豪快に2点目を決める。
 これで勝負あったかと思ったが、ロスタイムの122分、アルジェリアはソフィアン・フェグーリが右サイドからクロス。複数のドイツDFの外側のファーサイドに位置していたアブデルムメン・ジャブがスライディングしながらシュート、名手ノイアーも脱帽する見事なシュートで1点差に詰め寄ったが時すでに遅し、ドイツが準々決勝に進出、フランスと対戦することになったのである。

■1986年の敗戦以降の戦績はフランスがドイツを圧倒

 ドイツが準々決勝の相手ということでフランス国内は一気に盛り上がった。もちろん32年前の再現ということもあるであろう。フランスはスペイン大会の次のメキシコ大会でも準決勝で西ドイツと対戦するが、この時は準々決勝のブラジル戦で燃え尽きた感があり、全く元気なく0-2と敗れてしまう。実はそれ以降両国は親善試合でしか対戦したことがなく、ワールドカップ、欧州選手権の本予選での対戦は実に28年ぶりとなる。そしてこの間の両国の対戦成績はフランスが5勝1分2敗と一方的にリードしているのである。(続く)

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