第1726回 ドイツに惜敗、準々決勝で敗退(2) ワールドカップ史上最低の試合

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■1982年大会に初出場を果たしたアルジェリア

 フランスと準々決勝で争うのはドイツかアルジェリアか、順当に考えれば世界ランキング2位の欧州の雄ドイツと誰しもが考えるであろう。しかし、フランスにとって1982年の西ドイツが忘れられない存在であるのと同様、アルジェリアにとっても1982年の西ドイツは忘れられない存在である。
 この1982年大会は出場国が16から24に増えた最初の大会である。これに伴い、アフリカからの出場枠が2に増え、最終ラウンドでナイジェリアを破ったアルジェリアがカメルーンと共に初めてワールドカップの本大会に出場する。1934年のイタリア大会にアフリカ勢としてエジプトが出場しているが、以後は1970年のモロッコまで出場することはなく、1974年のザイール、1978年のチュニジアと出場しており、1970年以降4大会に5チームが出場したが、すべてフランス語圏のチームである。

■アルジェリア、アフリカ勢として初めて欧州勢に勝利

 この大会、序盤から大荒れとなる。当時は開幕戦は前回優勝チームが登場し、スコアレスドローで始まることが多かった。1978年大会で地元開催で初優勝を飾ったアルゼンチンはベルギーと開幕戦を戦う。前回大会の得点王マリオ・ケンペスに加え、新星ディエゴ・マラドーナも加わったアルゼンチンは連覇もあるのではないかと期待されたが、ベルギーのエルウィン・バンデンベルグの一撃の前に0-1と敗れる。
 そしてグループ2の最初の試合は西ドイツ-アルジェリア戦である。ここまでアフリカ勢が本大会で勝利したのは1978年大会のチュニジアがメキシコに勝利しただけ、欧州勢にはとても勝ち目はないと思われていた。しかも相手の西ドイツは1980年の欧州選手権の覇者である。しかし、アルジェリアは西ドイツ相手にラバ・マジェールが先制点、西ドイツもカール・ハインツ・ルンメニゲのゴールで追いつくが、その直後にアルジェリアはラフダル・ベルミが勝ち越し点を奪い、アルジェリアが2-1と西ドイツを下す。これはアフリカのチームがワールドカップ本大会で初めて欧州勢を破った記念すべき試合となった。
 アルジェリアにはフランスリーグのクラブに所属している選手が6人おり、彼らは欧州コンプレックスを持っていなかったと言える。

■チリにも勝利したアルジェリア、西ドイツ-オーストリア戦の結果待ち

 このグループ2にはオーストリアとチリがおり、アルジェリアは第2戦でオーストリアに0-2と敗れる。第2戦を終えた時点で首位はオーストリア(勝ち点4、当時は勝利の勝ち点は2)、2位はアルジェリアと西ドイツが勝ち点2で並び、チリが勝ち点0で最下位であった。ここで疑惑の最終戦が行われる。当時のグループリーグは2試合の最終戦が別々の時間にキックオフされ、6月24日に行われたアルジェリア-チリ戦はアルジェリアが前半に3点を先制、後半のチリの反撃を2点に押さえて3-2と勝利する。アフリカ勢としてはワールドカップ本大会で初めて南米勢に対して勝利を収めるという記念すべき日となった。この段階でアルジェリアは勝ち点を4に伸ばし、首位オーストリアと並び、その翌日の6月25日にヒホンで行われる西ドイツ-オーストリア戦の結果を待つことになった。

■開始早々に西ドイツ先制後は両チーム攻めず、1次リーグ突破

 この試合、オーストリアが引き分け以上であれば、オーストリアが首位、アルジェリアが2位、西ドイツが3位となる。もしオーストリアが敗れた場合はオーストリア、アルジェリア、西ドイツが勝ち点4で並ぶ。そうなると得失点差の争いとなる。すでに日程を終えているアルジェリアの得失点差は±0、これから試合を行うオーストリアは+3、西ドイツは+2であった。すなわち、西ドイツは勝利すれば、勝ち点を4に伸ばし、首位で突破する。さらに1点差あるいは2点差の勝利の場合2位はオーストリアとなり、3点差以上の場合は2位がアルジェリアになる。この試合、10分に西ドイツはホルスト・ルーベッシュのゴールで先制するとその後は両チーム攻めることなく試合が終わり、両チームが1次リーグを突破する。
 ワールドカップ史上最低の試合の犠牲者となったアルジェリア、32年の時を経てドイツと戦うのである。(続く)

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