第2220回 ルクセンブルク相手に歴史的な取りこぼし(2) 103年ぶりに勝利を逃したフランス

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■若手を起用する環境がそろっていた3月のアウエーのルクセンブルク戦

 グループ首位のフランスと最下位のルクセンブルクの1戦は9月3日、トゥールーズの市営競技場で行われた。ルクセンブルクは直前のベラルーシ戦で今予選初めての勝利をあげているが、フランスとの力の差は明白である。3月のアウエーでの戦いの際は若手多数起用しながらも3-1と勝利している。今後のことを考えて若手を起用するという考えもあるが、3月の連戦と今回は事情が違う。3月はルクセンブルクとの予選とスペインとの親善試合の2試合であった。スペインは手ごたえのある相手であり、勝利が確実視されているルクセンブルク戦と合わせて若手起用の環境が整っていた。今回は何よりもまずオランダ戦の勝利が必須であり、若手を試験する余裕はなかった。

■キリアン・ムバッペ以外の10人はオランダ戦と同じメンバー

 そしてディディエ・デシャン監督が先発メンバーとして登録した選手のほとんどは3日前のオランダ戦と同じであった。GKは主将のウーゴ・ロリス、DFは右からジブリル・シディベ、ローラン・コシエルニー、サミュエル・ウムティティ、レイバン・クルザワ、MFは4人、中央の低い位置にポール・ポグバ、エンゴロ・カンテの2人、左右は高い位置となり、右にキリアン・ムバッペ、左にトマ・ルマール、2トップは左右が入れ替わり右にアントワン・グリエズマン、左はオリビエ・ジルーである。結局ムバッペ以外の10人は同じメンバーが先発出場した。デシャン監督が絶対に取りこぼしをしない、そして得失点差でも大差をつけて10月の最後の2試合に臨む、という意思の表れである。

■サッカー一家に生まれたティル兄弟がデビュー

 一方のルクセンブルクであるが、ベラルーシ戦で値千金の決勝点をあげたダニエル・ダモタは右サイドの攻撃的MFとして出場、そして20歳のオリビエ・ティルと17歳のバンサン・ティルの兄弟がそろって代表にデビューする。ティル家は23歳の長兄のセバスチャンも代表しており、この3兄弟の父親はかつてルクセンブルク代表のFWとして活躍したセルジュ・ティルであり、母親のナタリーも女子の代表でGKを務めていたサッカー一家である。
 なお、末弟のバンサンは川島永嗣の所属しているメッスの選手であり、日本の皆様ならばよくご存じであろう。またストッパーのクリス・フィリップもメッスの選手である。今世紀に入ってルクセンブルクの選手でフランスの1部リーグでプレーした選手はこの2人とすでに代表を退いたジェフ・シュトラッサーをあわせたわずか3人である。

■ベストメンバーで34本のシュートを放つもノーゴールに終わったフランス

 地方都市で代表戦を見る機会が少ないこともあり、この試合のチケットは前売りで完売となった。ルクセンブルクのキックオフで始まった試合であるが、立ち上がりからフランスが攻め続け、ルクセンブルクのゴールにシュートの嵐を浴びせる。試合から離れていたムバッペも動きがよく、再三ゴールを狙うが得点には至らない。ルマール、ジルーもシュートもルクセンブルクの守備陣に阻まれてしまう。そして42分、フランスは28メートルの位置でFKのチャンスを得る。グリエズマンが直接ゴールを狙う。これをルクセンブルクのGKのジョナタン・ジュベールが指先でセーブ、ボールはバーに当たり、ノーゴールとなる。フランスにとってゴールは遠く、両チーム無得点で前半を終えた。
 後半に入っても攻めるフランス、守るルクセンブルクという構図は変わらない。そして試合のスコアも変わらない。59分に両チームは2人ずつ選手を交代し、フランスはムバッペを下げて、オランダ戦で先発したキングスレー・コマン、ジルーを下げてアレクサンドル・ラカゼットを投入する。ラカゼットは71分にシュートを放ったが、フィリップがゴールライン上でクリアする。その後もフランスは攻め続け、ストッパーのコシエルニーもたまらず前線に上がりヘディングシュートを試みるがクリアされる。76分のポグバのヘディングシュートもバーに嫌われる。81分にはグリエズマンを下げ、最後のカードとしてナビル・フェキルをピッチに送り込むが、解決策にはならず、スコアレスドローに終わる。
 34本のシュートを放ったフランスは1914年の敗戦以来103年ぶりにルクセンブルク相手に勝利を逃したのである。(この項、終わり)

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