第2348回 格下豪州に辛勝、不安を残して発進(2) 新技術の恩恵で認められた2ゴール

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■米国戦の反省を踏まえてメンバーを変更

 前回大会の合宿地の選定の失敗を受けて、カザニをベースキャンプとしてフランスと対戦する豪州、今大会に出場するために予選ではフランスの2倍以上の22試合戦っている。これは今大会では最多であり、さらにワールドカップの歴史をさかのぼっても2002年大会のホンジュラスとトリニダードトバゴ(いずれも本大会には出場できず)に並ぶ数字である。
 フランスは豪州に対して確実に勝ち点3を獲得するとともに、残りのペルー、デンマークとの戦いも考えれば、得点差をつけて勝利しておきたいところである。米国戦のメンバーをそのまま先発させるつもりだったディディエ・デシャン監督は選手を入れ替えた。 GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバンジャマン・パバール、ラファエル・バラン、サミュエル・ウムティティ、ルカ・エルナンデス、MFは中央の低い位置にエンゴロ・カンテ、右にポール・ポグバ、左にコランタン・トリッソ、FWは中央の低い位置にアントワン・グリエズマン、右にキリアン・ムバッペ、左にウスマン・ダンベレという布陣となった。
 つまり、6月2日のイタリア戦のメンバーのストッパーのアディル・ラミに代わってチャンピオンズリーグ決勝に出場して代表チームへの合流が遅れていたバランを入れ替えたメンバーとなった。両サイドDFが米国戦での失点を呼んでしまったことを考えれば、妥当な判断であろう。

■世代交代を進めた両チーム

 フランスの先発メンバーで前回のワールドカップにも出場していたのは、前々回大会にも唯一出場した主将のロリス以外にはバラン、ポグバ、グリエズマンだけである。一方、この傾向は豪州も同様であり、前々回大会から出場しているのは主将のマイル・ジュディナックだけ、マシュー・レッキー、マーク・ミリガン、マシュー・ライアンが前回大会に出場しているだけである。順調に行っている国もそうではない国も選手の世代交代が進んでいる。

■粘り強い守備の豪州の前に前半はノーゴール

 試合はキックオフ直後からフランスが支配し、多彩な攻撃を見せる。フランスの生成店は時間の問題かと思われたが、豪州が粘り強い守備を見せる。10分過ぎから豪州は反転攻勢をかける。フランスも明らかに初戦の固さを感じさせる中で、いつ豪州が先制点を奪ってもおかしくない展開となる。豪州もフランスのゴールを襲うが、フランスのGKのロリスが得点を許さない。フランスも2トップのムバッペとダンベレの左右を入れ替えるなど工夫を試みるが得点にはいたらず、両チーム無得点で後半を迎える。

■VARで獲得したPK、不用意なハンド、ゴールラインテクノロジーで勝ち越し点

 後半に入り、54分、フランスはポグバが前線のグリエズマンにパス、このパスを受けたグリエズマンはペナルティエリアに侵入したところで豪州のジョシュア・リズドンに倒される。試合はそのまま続行されたが、この大会から導入されたVARで試合は中断される。ウルグアイ人の主審の判断により、PKが与えられた。VARの適用第一号となった。倒されたグリエズマンがペナルティスポットにボールを置き、左足で放ったシュートはネットを揺らし、2年前の欧州選手権得点王が先制点をマークする。
 1点のリードで硬さが抜けるかと思われたが、その直後、フランスには信じられないプレーが起きた。豪州のFK、ボールはペナルティエリア内に落下する。あろうことかこのボールはストッパーのウムティティの伸ばしていた手に当たる。このPKを蹴るのは主将のジュディナック、2010年大会にも出場している主将同士の戦いとなったが、豪州の主将に軍配、不用心なハンドによりフランスは1点のリードがわずか4分で終わってしまった。その後は豪州の守備の前にフランスは攻め手を欠く。
 フランスは最初の交代でグリエズマンをおろし、包帯を巻いた負傷上がりのオリビエ・ジルーを投入する。そのジルーが81分にポグバとパス交換、ポグバはペナルティエリア内に入ったところでシュート、豪州の選手に当たって、ボールはバーをたたき、まっすぐに落下する。ゴールラインテクノロジーが機能し、主審が得点を認める。
 フランスは豪州相手に苦戦したが、新技術の恩恵を受けて何とか勝ち点3を獲得したのである。(この項、終わり)

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