第2351回 ペルーを下し、決勝トーナメント進出確定(3) 19歳の背番号10、キリアン・ムバッペが決勝点

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■4-2-3-1システムを採用したディディエ・デシャン監督

 初戦を黒星で落としたペルー相手にエカテリンブルクでの試合に臨むフランスの先発メンバーであるが、ディディエ・デシャン監督はシステムを4-2-3-1システムに変更し、メンバーを入れ替えた。
 GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバンジャマン・パバール、ラファエル・バラン、サミュエル・ウムティティ、ルカ・エルナンデスと守備陣は変わらない。MFは低い位置の右にエンゴロ・カンテ、左にポール・ポグバ、3人の攻撃的なMFは右にキリアン・ムバッペ、中央のトップ下にアントワン・グリエズマン、左にブレーズ・マツイディ、FWの1トップにオリビエ・ジルーというメンバーである。
 米国戦で負傷したジルーは豪州戦では終盤に交代出場、決勝点にからむ活躍をし、ペルー戦では満を持しての先発出場である。そしてベテランのマツイディも先発し、若さを露呈した豪州戦の反省から30歳以上の選手が3人先発し、残り1人はこの日が代表100試合目の出場となる主将のロリスである。

■ベテランも加わり序盤から厳しい攻防

 負ければグループリーグで敗退となるペルーと勝てば決勝トーナメント進出となるフランスとの戦いは激しい展開の試合となった。1対1の競り合いが多く、負傷した選手が芝生の上に倒れこむ光景が繰り返された。しかしながら、先に主導権を握ったのはフランスであり、ペルーのペナルティエリアにしばしば入り込む。ペルーは試合中にポジションチェンジを行い、フランスのマークが外れたところを攻め込むが、フランスも相手の陣形に合わせて修正し、中盤でのつぶしあいが続く。

■キリアン・ムバッペ、フランス代表史上最年少のワールドカップでの得点

 ベテランを投入した試合であったが、この試合を決めたのは最年少のムバッペであった。ムバッペは相手のタックルを受けて倒れこむこともあったが、33分にはゴール前でのヒールキックでゴールを狙う。その直後の34分、ポグバからのスルーパスがジルーにつながる。ジルーがシュートをペルーの守備陣はスライディングで防ぐが、リバウンドした球をムバッペが右足で押し込んでこの試合初めてのゴールとなった。
 19歳のムバッペにとってはワールドカップ本大会での初ゴールとなるが、代表戦出場17試合目にして5点目のゴールは、1998年大会当時20歳だったダビッド・トレゼゲの記録を更新し、ワールドカップにおけるフランス代表の最年少記録となったのである。これまでのワールドカップの歴史において20歳未満で得点を挙げたのは12人しかおらず、その中にはペレ、マイケル・オーウェン、リオネル・メッシという名前もあるのである。

■ミッシェル・プラティニ、ジネディーヌ・ジダンの背番号10を継承

 そしてムバッペの背番号は10、フランスのサッカーにとって背番号10は特別な意味がある。この春亡くなったアンリ・ミッシェル、欧州選手権を制し、3度ワールドカップに出場したミッシェル・プラティニ、さらに1998年ワールドカップ優勝、2000年欧州選手権の立役者のジネディーヌ・ジダンという背番号10がフランスの栄光とともにあったのである。昨年代表入りしたムバッペは最初のメジャー大会となる今回のワールドカップで背番号10を付与された。ジダンが退いた後、フランスの背番号10の顔ぶれは変わる。2008年の欧州選手権と2010年のワールドカップではシドニー・ゴブーがつけたが、本大会ではノーゴールであった。2012年の欧州選手権と2014年のワールドカップではカリム・ベンゼマのものとなったが、2014年大会のホンジュラス戦とスイス戦でゴールを上げただけであり、そのベンゼマも代表チームを離れて久しい。2年前の地元開催の欧州選手権ではピエール・アンドレ・ジニャックが代表に復帰し、10番を与えられたが、チームは準優勝したが、背番号10がゴールネットを揺らすことはなかった。
 このようにようやく現れた背番号10にふさわしい若者、ムバッペのゴールによってフランスは最終戦を残して決勝トーナメント進出を決めたのである。(この項、終わり)

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