第2880回 ワールドカップ予選、9月の3連戦(3) 離脱者続くフランス、低迷期のボスニア・ヘルツェゴビナ

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■次々と選手が離脱したフランス

 8月26日に9月のワールドカップ予選で戦う23人のメンバーを発表したフランス代表、8月30日からクレールフォンテーヌでの合宿に入る。しかし、負傷による離脱者が相次いだ。ダヨ・ウパメカノが直前のリーグ戦で負傷し、ディディエ・デシャン監督はスペインのバルセロナからクレマン・ラングレを合宿に呼ぶ。
 また、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の前日にはコランタン・トリッソが離脱し、マルセイユのマテオ・ゲンドウジが合流した。
 さらに所属するイングランドのチェルシーでチャンピオンズリーグ優勝に貢献し、UEFAによって2020-21シーズンの最優秀MFに選出されたばかりのエンゴロ・カンテもボスニア・ヘルツェゴビナ戦の朝に離脱、イタリアのユベントスに所属するアドリアン・ラビオがストラスブールに駆け付けた。

■オリンピック出場に貢献したマテオ・ゲンドウジ

 追加招集された3人の中でゲンドウジだけはこれまでに代表出場歴がない。ゲンドウジは1999年生まれ、2年前に行われた23歳以下の欧州選手権ではウパメカノ、ジョナタン・イコネ、マルクス・テュラムなどとともにベスト4進出を果たし、東京オリンピックの出場権を獲得したメンバーの一員である。日本の皆様は来日を楽しみにしていたかもしれないが、当時のほとんどのチームメイトと同様に所属クラブでの活動に重きを置き、オリンピックには出場していない。ゲンドウジはオリンピックの出場権を獲得した後の2019年9月にはポール・ポグバの離脱、11月にはブレーズ・マツイディの離脱によって代表に追加招集されたが、出場機会はない。フル代表での出場経験はなく、モロッコ代表になる資格を有する中での3度目の追加招集となった。

■25年ぶりとなるストラスブールでの試合

 このように負傷者が続出する中で、フランスはボスニア・ヘルツェゴビナをストラスブールに迎えることとなる。ストラスブールはフランスとドイツが領土争いを繰り返してきた都市であり、現在は欧州議会が設置されている。このストラスブールのラメイノー競技場は1906年に開設され、何度かの回収を重ねて今日を迎えた。1938年のワールドカップ、1984年の欧州選手権でも使用されているが、これらの大会ではフランスはストラスブールでは試合をしていない。ストラスブールでフランス代表が最後に試合を行ったのは1996年5月29日、欧州選手権の直前のフィンランドとの親善試合である。この試合には現役時代のデシャン監督も出場し、2-0と勝利している。フランスにとっては実に25年ぶりのストラスブールでの試合となる。また、公式戦に限ると1968年11月6日に行われたノルウェーとのワールドカップ予選が唯一の試合で、それ以来53年ぶり2回目の公式戦となる。
 久しぶりのフランス代表の試合がストラスブールで行われるとあって、2万1000人の観衆が集まった。

■13試合連続で勝ちのないボスニア・ヘルツェゴビナ

 さて、対戦相手のボスニア・ヘルツェゴビナであるが、2014年のワールドカップを最後に主要国際大会から遠ざかっており、世界ランキングは58位と低迷している。今回の予選もここまで2試合行い、フィンランドとはアウエーで2-2の引き分け、フランスとはサラエボで0-1と敗れ、勝ち点はわずかに1、消化試合数が少ないとはいえ、最下位で秋の戦いを迎えた。3月31日に行われた試合を本連載の第2816回で紹介した際には10戦連続で勝ちがないと紹介したが、6月に行ったモンテネグロ、デンマークとの親善試合でも勝利できず、13試合連続で勝ちから見放されている。
 2014年にワールドカップ出場を果たした際の監督はサフェット・スジッチ、かつてのユーゴスラビア代表であり、1980年代のパリサンジェルマンの背番号10、レジェンドと言われる存在である。その跡を継いだのが、メフメド・ハジダレビッチ、現役時代はソショーで活躍し、国際経験豊かな監督である。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表監督時代は2016年のキリンカップサッカーで日本を決勝で破って優勝していることから日本の皆様もよくご存じであろう。しかし、その前年の欧州選手権予選はプレーオフでアイルランドに敗れ、現在まで予選落ちが続いている。フランス相手にアウエーで金星を挙げることはできるだろうか。(続く)

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