第3110回 準々決勝のイングランド戦 (2) 準々決勝までの道のりが似ている両チーム

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■10勝6分とPK戦負け以外は無敗だった2021年のフランス

 前回の本連載ではフランスとイングランドの過去のワールドカップでの対戦の他に、イングランドの本大会までの道のりも紹介したが、フランスとイングランドの準々決勝までの道のりは似ている。
 2021年のフランスはイングランドと同様、欧州選手権でのPK負け(記録上は引き分け)を除くと無敗であった。2021年はワールドカップ予選で5勝3分、欧州選手権で1勝3分(スイス戦のPK負けを含む)、UEFAネーションズリーグのファイナル4で2勝、親善試合で2勝、合計して10勝6分という見事な成績でワールドカップ連覇への期待も高まった。ところがワールドカップイヤーとなる2022年になると変調をきたす。

■2022年のフランスの戦績はワールドカップ出場国とは1分3敗

 3月の親善試合はワールドカップに出場できなかったアフリカ勢のコートジボワールと南アフリカに連勝したが、6月と9月に行われたUEFAネーションズリーグでは1勝2分3敗で危うく最下位になるところであった。ワールドカップまでの戦績は3勝2分3敗と五分の成績に見えるが、ワールドカップに出場する国(デンマーク、クロアチア)との対戦に限ると1分3敗、これではイングランド同様悲観論が出てくるのもやむを得ない。

■グループリーグ、決勝トーナメント1回戦と安定した戦いの両国

 ところが、直前の準備も不十分なままに始まったカタールでのワールドカップでイングランドは初戦のイランに6-2と大勝、第2戦は第2シードの米国とスコアレスドローで決勝トーナメントに大きく前進、最終戦はウェールズに3-0と完勝して首位突破した。フランスも第1戦で豪州に4-1と逆転勝ち、第2戦は今年に入って2敗しているデンマークに2-1と勝利して決勝トーナメント進出を決め、メンバーを大幅に入れ替えて臨んだ第3戦のチュニジア戦は0-1と敗れたものの、首位で決勝トーナメントに進んだ。両チームとも第1戦のアジア勢相手に大勝し、最大のライバルとの第2戦を乗り切って、第3戦は余裕を持って臨むというパターンである。
 そして決勝トーナメント1回戦ではイングランドはセネガルに3-0、フランスはポーランドに3-1と圧勝した。そこから中5日の対戦ということでコンディション的には今大会に入って最高と言えるであろう。

■負傷離脱者の相次ぐフランス、交代出場選手も活躍するイングランド

 フランスは大会前にポール・ポグバ、エンゴロ・カンテなどが離脱し、さらにメンバーを発表してからはプレスネル・キンペンベ、カリム・ベンゼマが負傷でチームを離れ、さらにグループリーグ初戦ではルカ・エルナンデスが負傷した。ベンゼマとルカ・エルナンデスに代わるメンバーは招集せず、24人で戦っている。もともとディディエ・デシャン監督は少ない人数でチーム運営する方が良いということで今大会のエントリーの上限である26人は多すぎる、と主張していたこともあり、選手のアクシデントがデシャン監督の主張通りのチーム人員数につながった。
 一方のイングランド、負傷によりメンバーに入らなかった選手はレギュラークラスではおらず、負傷中のカイル・ウォーカーはメンバー入りした。ウォーカーは第3戦のウェールズ戦で戦線に復帰した。ところが、ラヒーム・スターリングが自宅に強盗が入ったことで急遽帰国し、セネガル戦はメンバー外となった。しかし、そのスターリングもフランス戦には復帰する。
 このように大会直前から大会期間中に選手の負傷が相次いだフランスと、選手の自宅への強盗というアクシデントはあったものの、ガレス・サウスゲイト監督の構想通りのメンバーでここまで勝ち進んできたイングランドは対照的である。フランスがメンバーを変えて臨んだチュニジア戦は明らかに戦力が劣り、控え選手のレベルには不安が残る。一方のイングランドはここまでの試合で、途中出場した選手も活躍している。
 延長戦、PK戦まで想定しなければならない決勝トーナメントで、選手起用は監督の手腕の見せ所でなのである。(続く)

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