第3109回 準々決勝のイングランド戦 (1) ワールドカップで40年ぶりに対戦

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■今大会で最も試合間隔の長い中5日で準々決勝に臨む

 決勝トーナメント1回戦はポーランドに勝利、内容的にも危なげない試合で決勝トーナメントに照準を合わせたディディエ・デシャン監督の目論見通りの展開となった。
 フランスの所属したグループDから首位通過の場合、グループリーグ最終戦から中3日で決勝トーナメント1回戦、その後は中5日で準々決勝、中3日で準決勝、中3日で決勝となる。他方、グループ2位になった場合はグループリーグ最終戦から中2日で決勝トーナメント1回戦、その後は中5日で準々決勝、中3日で準決勝、中4日で決勝となる。カタールという面積の小さな国で行われる大会のため、移動を考える必要はなく、試合間隔が重要であるが、試合間隔については準決勝と決勝の間以外は対戦相手も同条件である。決勝トーナメント1回戦と準々決勝の間の中5日というのは今大会で最も長く、フランスは良いコンディションで戦うことができる。そのフランスの相手は一足先に1回戦を戦ったイングランド、準々決勝は大一番となる。

■数々のタイトルを獲得したフランス、1966年ワールドカップだけのイングランド

 フランスとイングランド、あらゆる分野でライバルと言っていい関係であるが、ビッグタイトルとなるとフランスは1984年の欧州選手権で優勝したのを皮切りに、1998年ワールドカップ、2000年欧州選手権、2018年ワールドカップを獲得している。他方、イングランドは1966年に自国で開催されたワールドカップで優勝した以外はタイトルを獲得していない。
 イングランドが優勝した1966年大会がフランスとイングランドのワールドカップ、欧州選手権の本予選での初めての対戦となった。グループリーグの最終戦での両国の対戦については本連載第1123回でも紹介しているが、フランスはウェンブリーで勝利すれば、得失点差によっては決勝トーナメントに進出することができた。この試合の主審は日系ペルー人のアツロー・ヤマサキ氏、ホームのイングランドよりの笛もあり、フランスは0-2と敗れ、サッカーの母国イングランドで1分2敗と惨敗したのである。フランスはその2年前に行われた東京オリンピックでも金メダルがわずか1と振るわず、この暗黒の1960年代半ばの経験からスポーツエリート育成を手掛けることになったのである。

■4位になった1982年スペイン大会でも一次リーグ初戦で敗れる

 その成果もあり、サッカーに代表される団体球技では上記の通りの成果を残しているが、ワールドカップでのその後の対戦は1回のみ、1982年スペイン大会の一次リーグの第1戦である。フランスはジェラール・ソレールがこの大会でイングランド相手に唯一の得点をあげたものの、1-3と敗れている。グループリーグの首位イングランドと2位フランスが二次リーグに進出したが、二次リーグでイングランドは2試合ともスコアレスドローで敗退、フランスは首位となって準決勝進出、セルビアで西ドイツと死闘を繰り広げ、3位決定戦でポーランドに敗れることとなる。スペイン大会の印象はイングランドよりもフランスの方が残っているが、直接対決ではイングランドが勝利している。そしてイングランドは大会を通じてわずか1失点で無敗のままスペインの地を去ったのである。

■好調だった2021年から暗転した2022年のイングランド

 それから40年、両国は浮き沈みはあるものの、フランスはディフェンシングチャンピオンとしてこの大会に臨む。一方のイングランドは昨年の欧州選手権では決勝に進出し、PK戦でイタリアに敗れながら準優勝した。FIFAのランキングも過去最高の4位を近年はキープしている。
 ワールドカップ予選では8勝2分、ポーランド、アルバニア、ハンガリーを押さえて首位で通過した。
 ワールドカップ予選、欧州選手権のあった2021年は15勝4分と無敗(欧州選手権決勝のPK負けは引き分け扱い)で乗り越えたが、ワールドカップイヤーの2022年は暗転した。3月のスイス、コートジボワールとの親善試合では連勝したものの、6月から始まったUEFAネーションズリーグではイタリア、ドイツ、ハンガリー相手に3分3敗と1勝もすることができず、最下位となってリーグBへの降格が決まった。
 イングランドのファンの期待は不安に変わり、ワールドカップ開幕を迎えたのである。(続く)

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