第3120回 歴史に残る決勝、PK戦で敗れる (1) 初戦で敗れながら、立ち直ったアルゼンチン
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■トーナメント終盤で驚異的な強さを見せるフランス、初戦で敗れたアルゼンチン
7回目の準決勝進出となったモロッコ戦で勝利したフランス、2大会連続4回目の決勝に進出する。実に1998年大会以降は準決勝の戦績は4連勝、そして過去3回の決勝を振り返ると、1998年はブラジルに勝利、2006年はイタリアにPK負け、2018年はクロアチアに勝利、近年のトーナメント終盤での成績は特筆すべきものがある。
そのフランスと対戦するのがアルゼンチンである。リオネル・メッシを擁し、優勝候補の一角である。本大会を迎えるまで35戦無敗という卓越した成績を残してカタール入りした。同じ優勝候補であってもフランスやイングランドは今年になってからの成績は芳しくない。
ところが、フランス、イングランドはワールドカップに入って初戦でアジア勢相手に大勝してスタートしている。グループCのアルゼンチンはアジア勢のサウジアラビアに対し、先制しながら逆転負けを喫した。
■リオネル・メッシに触発された若手の活躍でグループリーグを首位突破
アルゼンチンのグループリーグ第2戦は中南米の強豪、メキシコである。この試合で負ければアルゼンチンは早々と敗退する可能性もあったが、両チームが守りを固めた試合を展開する中で、後半に入って64分にメッシがミドルシュートを放ち、先制する。さらに終了間際にもエンソ・フェルナンデスが追加点を奪い、初勝利をあげた。
第3戦の相手のポーランドはこの時点で勝ち点4でグループ内でトップである。アルゼンチンはポーランドの名GKのボイチェフ・シュチェスニの好守の前に前半は得点を奪うことができない。決勝トーナメントのことを考えるとカタール入りしてから好調なフランスがグループDで首位となる可能性が強いことから、グループCで2位通過に甘んじ、1回戦でフランスと対戦することは避けたい。その思いはアルゼンチンもポーランドも同じであるが、地力に勝るアルゼンチンが終始試合を支配した。アルゼンチンは後半に入って若い選手が活躍した。後半の立ち上がりに23歳のアレクシス・マックアリステルが先制点をあげ、67分には22歳のフリアン・アルバレスが追加点をあげ、グループリーグを2勝1敗、結局首位でグループリーグを通過したのである。
■1994年米国大会の予選のプレーオフで対戦したアルゼンチンと豪州
アルゼンチンの決勝トーナメント1回戦の相手はグループDの2位チーム、豪州である。日本の皆様であれば、1994年ワールドカップ予選で、日本は後半アディショナルタイムにイラクに追いつかれて、本大会を逃すという「ドーハの悲劇」を味わったが、その直後に本大会出場をつかんだのがアルゼンチンであった。アルゼンチンは南米予選で大ブレーキ、辛うじてプレーオフ出場となる。アルゼンチンとプレーオフで戦ったのが当時オセアニア地区に所属していた豪州であった。北中米カリブ海2位のカナダを退けた豪州はアルゼンチンとのホームアンドアウエーの戦いでシドニーでの第1戦は引き分けたが、ブエノスアイレスでの第2戦は0-1と惜敗する。アルゼンチンは米国行きを決めるが、最もアルゼンチンが予選突破に苦労した時の相手が豪州である。
■守りを固めた豪州の壁を突き破ったメッシの先制点
豪州はアルゼンチンと戦うチームがどこでもそうであるように、ブロックを築き、守りを固める。アルゼンチンはサイドから崩すしかなく、クロスを中に入れるが豪州の長身選手に跳ね返される。ようやくアルゼンチンが先制点を奪ったのは35分、右サイドのコーナーの近くからメッシがFK、直接狙ったが豪州にクリアされる。ここからがメッシの真骨頂であった。クリアボールをメッシが拾い、ゴールに向かって突進、そしていったん内側に預けてペナルティエリア内でパスを受けたメッシは左足でシュート、メッシは代表、クラブでの通算1000試合出場となる試合で先制点をあげる。
後半もアルゼンチンは積極的に動き、57分にはアルゼンチンの選手が豪州のGKマシュー・ライアンにプレスをかけ、ボールを奪ってアルバレスが追加点を入れる。
豪州も終盤は猛攻を仕掛ける。78分にクレイグ・グッドウィンが放ったシュートがアルゼンチンのエンソ・フェルナンデスに当たってコースが変わって、ゴールイン、1点差に迫る。しかし、メッシをはじめとするアルゼンチンの選手は精力的な運動量でこの豪州の攻撃をしのぎ、準々決勝に進んだのである。(続く)