第3126回 歴史に残る決勝、PK戦で敗れる (7) 延長後半で追いついたフランス、PK戦で力尽きる

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■直近の決勝の延長では涙をのんだ両チーム

 ワールドカップの決勝戦が延長戦になるのは2014年のブラジル大会のドイツ-アルゼンチン戦以来である。この時はドイツが延長後半に決勝点をあげ、アルゼンチンは敗れている。またこの時は3大会連続での延長戦となり、2006年大会はフランスがイタリアと対戦、PK戦の末、敗れている。両チームとも直近の決勝の延長戦では準優勝に終わっている。
 さて、延長に入る時点の両チームの状況を確認しておこう。前半から選手交代に踏み切ったフランスは後半が終了するまでに4人の選手が交代している。オリビエ・ジルー、ウスマン・デンベレ、アントワン・グリエズマンという攻撃陣に加え、今大会の初戦で負傷した兄のルカ・エルナンデスに代わって大活躍したテオ・エルナンデスがベンチに退いている。一方のアルゼンチンはベテランで得点をあげたアンヘル・ディマリアのみ交代させている。

■延長戦でもペースをつかんだアルゼンチン、108分にリオネル・メッシが勝ち越し点

 延長が始まる時点でアルゼンチンは2人目の交代として右サイドDFをナウエル・モリーナに代えてゴンサロ・モンティエルを投入する。ようやく目覚めたキリアン・ムバッペのマーカーとして残り30分で貴重な役割を果たす。後半の終盤はフランスの時間帯となったが、延長に入って試合を支配したのはやはりアルゼンチンであり、フランスのゴールを襲う。対するフランスは後半に空中戦で頭を打ったアドリアン・ラビオが脳震盪のためユスフ・フォファナと交代する。交代出場に余裕のあるアルゼンチンも延長前半の終盤にユリアン・アルバレス、ロドリゴ・デパウルとこの試合で活躍した選手をベンチに下げる。延長前半の終了間際にはアルゼンチンは交代して入ってきたラウタロ・マルティネスらが波状攻撃を仕掛けるが、試合は延長後半に入る。
 延長後半もアルゼンチンが攻め、メッシは積極的にシュートする。108分、ラウタロ・マルティネスがシュート、これをウーゴ・ロリスがよくセーブしたが、こぼれ球をメッシがシュート、ゴールの中でジュール・クンデがクリアしたが、ゴールイン、メッシの勝ち越し点はムバッペに並ぶ大会7点目となった。

■自らのシュートでPKを獲得したキリアン・ムバッペ、PKを決めてハットトリック達成

 追うフランスは守備の中心のラファエル・バランまでベンチに下げる。115分、バランに代わって入ったイブラヒマ・コナテが攻め上がり、右サイドのCKのチャンスを得る。キッカーはキングスレー・コマン、ファーサイド、ペナルティエリアの外で待ち受けていたムバッペに向けてボールを蹴りこむ。CKを受けたムバッペはシュート、しかし、アルゼンチンの2人の選手がシュートブロックに入り、ボールは跳ね返されるが、ムバッペのシュートがモンティエルの肘に当たり、主審はPKをフランスに与える。キッカーのムバッペはPKを決め、ハットトリックを達成する。決勝でのハットトリックは1966年大会のイングランドのジェフ・ハースト以来の偉業である。その後もムバッペは積極的にゴールを狙うが、勝ち越し点を奪うには至らない。延長戦で決着がつかず、2006年大会以来のPKによる優勝決定となった。

■刀折れ、矢尽きたフランス、PK戦で敗れる

 先蹴はフランス、まずはムバッペ、数分前に決めたコースと同じコースに蹴りこみ、エミリアーノ・マルティネスは今度は正しく反応したが及ばず、この日3本目のPKを生恋させた。対するアルゼンチンのトップはメッシ、軽く蹴って成功させる。
 しかし、フランスにPKを蹴ることのできる選手はもう残っていなかった。グリエズマン、ジルー、デンベレ、バランはベンチから見守るだけである。2人目のコマンはエミリアーノ・マルティネスに止められ、3人目のオーレリアン・チュアメニはGKに読まれ、枠から外れてしまう。対するアルゼンチンの2人目はPK要員として延長後半のアディショナルタイムに出場してきたパウロ・ディバラが成功、3人目はオランダとのPK戦ではメッシの次の2人目に登場しても成功させたレアンドロ・パレデスが決める。フランスは4人目のコロムアニが決め、首の皮一枚残る。アルゼンチンの4人目はオランダ戦では3番目だったモンティエル、この試合では延長後半にPKを与えてしまった。名誉をかけて蹴ったグラウンダーのシュート、ロリスは反対に反応、ネットに吸い込まれ、アルゼンチンが1986年大会以来36年ぶりの優勝を遂げたのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ