第35回 1998年フランス・サッカー総集編

 欧州サッカーのシーズンは夏に始まり、春に終わるが、会計年度などはカレンダーイヤーを採用している。従って年末年始に各種の最優秀選手などが選出された。読者投票として最も評価の高い月刊「オンズ・モンディアル」誌のオンズ・ドール(黄金のイレブン)も、サッカー関連記者によって行われる「フランスフットボール」誌制定の欧州最優秀選手でも予想通り、ジネディーヌ・ジダンがベストプレーヤーとして表彰されている。
 さて、ワールドカップ優勝というこのうえない栄冠を獲得したフランスサッカーであるが、この1年の成績を振り返ってみよう。

■浮き沈みする代表チームへの評価

 まず、代表チームについてはスタッド・ド・フランスの開幕試合でスペインを下したものの、その後本大会までは迷走が続き、結局ワールドカップ前の成績は3勝3分1敗、勝敗はともかく覇気のない試合が続き、国内には悲観論が高まった。しかしながら、ワールドカップでは日替わりヒーローの活躍で優勝(6勝1分:イタリア戦は記録上は引き分け)、エメ・ジャッケ監督は花道を飾った。ところが2000年の欧州選手権予選とそれに向けた親善試合では2勝2分、モスクワでの初勝利(本連載の第29回参照)という金星以外は再び評価を下げることとなった。
 クラブチームに関しては前年度の欧州三大カップではモナコがチャンピオンズリーグの準々決勝でマンチェスターユナイテッドを下し、準決勝でユベントスと対戦し、1勝1敗ながら得失点差で決勝進出を逃した。また、UEFAカップでもオセールが準々決勝に進出し、ラッツィオに惜敗した。
 本年度の欧州三大カップもベスト8が出そろったが、チャンピオンズリーグのランスは決勝トーナメント進出にあと一歩及ばず、カップウィナーズカップのパリサンジェルマンは初戦で敗退し、久しぶりにこの両カップ戦でフランスのチームが越年できなかった。
 しかし、UEFAカップではボルドー、マルセイユ、リヨンが生き残り、UEFAカップのベスト8に初めてフランスのチームが3チーム進出した。

■年間最高成績は、攻撃力を誇ったボルドー

 クラブチームのリーグ戦における年間成績(97-98シーズンが13試合、98-99シーズンが20試合)を見ると、最高は現在2位のボルドー(勝ち点68)、2位は現在首位のマルセイユ(勝ち点64)と今季の成績が反映されているが、3位は前回の本連載で取り上げた昨季優勝のランス(勝ち点59)、4位はリヨン(勝ち点56)、5位はレンヌ(勝ち点51)となっている。ボルドーの得点は66点と、2位のマルセイユ、ランスの55点を大きく引き離し、攻撃陣の強さが好成績を支えている。また現在4位のレンヌは1901年創立、昨季は1906年創立のランスが創立93年目で優勝しており、地元ではこれを上回る創立99年目でのリーグ初制覇を期待している。
 昨季、今季とも1部に所属しているのは15チームであるが、最下位はトゥールーズ、14位は昨季二つのカップ戦を制したパリサンジェルマンである。パリサンジェルマンは今季アラン・ジレース監督を迎えたが、不振でアルツール・ジョルジュ監督が復帰、また、経営陣も不振の成績を取り更迭、シャルル・ビエトリがチーム再建を担っているが、道のりは厳しい。

■「レキップ」紙の選んだ年間ベストイレブン

 ところでフランス・リーグの年間ベストイレブンが、レキップ紙のサッカー担当記者によって選定されたので紹介しよう。GKはファビアン・バルテス(モナコ)、DFはエリック・シコラ(ランス)、ローラン・ブラン(マルセイユ)、フレデリック・デウ(ランス)、マニュエル・ドスサントス(モンペリエ)、MFはエリック・ロワ(マルセイユ)、ミッシェル・パボン(ボルドー)、ロベール・ピレス(メッス→マルセイユ)、ビカッシュ・ドラッソー(ルアーブル→リヨン)、FWはシルバン・ビルトール(ボルドー)、トニー・ベレル(ランス)となっている。
 国籍は無関係に選出されるが、結果的に全員がフランス国籍の選手となり、ワールドカップ等で活躍した外国籍選手は選出されなかった。また、ワールドカップに出場したのはわずか3人、「国内リーグでの活躍が代表チーム入りにつながらない」という代表セレクションへの批判を象徴する結果となっている。

■期待の新星、シルバン・ビルトール

 特に代表チームで最大の課題となっているFW陣では、ワールドカップ組ではなく、ランスのベレルとボルドーの新星ビルトールが選出された。ベレルは昨季のリーグ初優勝に貢献し、ビルトールは先述の通り年間で最高の成績を残したボルドーの攻撃の軸である。
 特に24才のビルトールは年間30得点を記録し、最多得点である。今季は19試合に出場し12点、またUEFAカップでも6試合で4得点、準々決勝に進出の原動力となった。昨季ジャン・ピエール・パパンからレギュラーの座を奪い取り、最も注目されているFWである。代表入りを熱望する世論は高まっているが、昨年のベレルがそうであったように、代表デビューは世論の高まりよりも遅めである。ランスの同僚デウとともにベレルの代表デビューはワールドカップ本大会終了後であった。
 さて、2000年欧州選手権予選の正念場となる1999年、代表スタッフがビルトールに声をかけることはあるのだろうか。

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